まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ジャスト・ワンス(JUST ONCE)」クインシー・ジョーンズfeat.ジェイムス・イングラム(1981)

 おはようございます。

 今日は名バラード「ジャスト・ワンス」を。


Just Once

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I did my best
But I guess my best wasn't good enough
Cause here we are
Back where we were before
Seems nothin' ever changes
We're back to being strangers
Wondering if we ought to stay
Or head on out the door

Just once
Can't we figure out what we keep doin' wrong
Why we never last for very long
What are we doin' wrong

Just once
Can't we find a way to finally make it right
To make the magic last for more than just one night
If we could just get to it
I know we could break through it

I gave my all
But I think my all may have been too much
Cause Lord knows we're not gettin' anywhere
Seems we're always blowin'
Whatever we've got goin'
And it seems at times with all we've got
We haven't got a prayer

Just once
Can't we figure out what we keep doin' wrong
Why the good times never last for long
Where are we goin' wrong

Just once
Can't we find a way to finally make it right
To make the magic last for more than just one night
I know we could break through it
If we could just get to it
Just once


I want to understand
Why it always comes back to goodbye
Why Can't we get ourselves in hand
And admit to one another
We're no good without each other
Take the best and make it better
Find a way to stay together

Just once
Can't we find a way to finally make it right
Make the magic last for more than just one night
I know we could break through it
If we could just get to it

Just once
we can get to it
Just once

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”  僕はベストを尽くした 

   だけど僕のベストは十分じゃなかったんだ

   だってこうして僕らはまたもといた場所に戻ってしまったから

   何も変わってないみたいだ

   また他人同士に戻って

   ここにとどまるのか ドアの向こうに出ていくのか

   迷いながら

 

   たった一度だけ

   僕らが何を間違っていたのか考えてみないか?

   どうして二人は長続きしないのか

   どんな間違いを犯してきたのか

 

   たった一度だけ

   この魔法をたった一晩じゃなく、もっと長く続かせる方法

   を見つけられないのか?

   ただ、それがわかれば 僕らは乗り越えられるのに

 

 僕はすべてを捧げたけど

 僕のすべては多すぎたのかもしれないね

    だって、神様は僕らがもうどこにもたどり着けないと知っているから

 僕らは何かをやろうとしても いつも台無しにしてきたみたいだ

 たまにすべてを手にしたように見えても

 祈ることを忘れていた

 

 たった一度だけ

 僕らは何を間違ってきたのか考えてみないか

 どうして幸せな時は長く続かないのか

 どこを間違っているのか

 

 たった一度だけ

    この魔法をたった一晩じゃなく、もっと長く続かせる方法

    を見つけられないのか?

    ただ、それがわかれば 僕らは乗り越えられるのに

    たった一度だけ

 

    僕は理解したいんだ

 どうしていつも最後は”さよなら”になってしまうのか

  僕たち手を取り合って 認めあえないだろうか

 おたがいがいなくちゃダメだって 

 

 たった一度だけ

    この魔法をたった一晩じゃなく、もっと長く続かせる方法

    を見つけられないのか?

    ただ、それがわかれば 僕らは乗り越えられるのに

    たった一度だけ

 ベストを尽くして より良くしていこう

 一緒に生きる方法を見つけて

 

 たった一度だけ、、僕たちならできるよ

 たった一度だけ、、                 ”(拙訳)

***********************************************************************************

 "I did my best  But I guess my best wasn't good enough"

 という導入部の歌詞にいきなり”つかまれる”感じがします。

 

 僕のBESTは十分にGOODじゃなかった。

 

 中学英語で ”GOODーBETTERーBEST”とだんだん程度が強くなるという風におぼえてきた人間にとっては、えっ、BESTがGOODに負けるのか、、とはっとしてしまいます。

 曲後半では

 "Take the best and make it better"

   BESTによってBETTERにしよう、と追い討ちをかけてきます。

 

 こういう風に抜き出してしまうと、すごく技巧的に思えるかもしれませんが、歌の中ではさりげなく切実な心情として響かせているところが見事です。

 

 ちなみに、2番では

 ”I gave my all But I think my all may have been too much”

 今度はALLがTOO MUCHだ、ときます。

 

 こと恋愛においては、僕のBESTを尽くした、僕のすべてを捧げた、というのは当人の完全な独りよがりで、僕のBESTは相手にとってGOODにもならずに、僕のALLは相手にとってTOO MUCHになりうるという、普遍的なことをスパッと言っているわけですね。

 

 この曲を書いたのは、バリー・マン&シンシア・ワイル。アメリカ屈指のソングライター・コンビにして、長年付き添ってきたおしどり夫婦として知られています。

 歌詞を書いたのは奥さんのシンシア・ワイルです。

 この歌詞のような男性の独りよがりが空ぶってしまう状況は、やはり女性の目線でなければ客観的に描けないかもしれませんね。

 

 またこのコンビの代名詞でもある、オンエア数と演奏回数の総計が全楽曲の中で史上2位という名曲「ふられた気持ち」の導入部の歌詞もまた、修復の難しい男女の関係を見事に表したものとして大変有名です。

 

You never close your eyes any more When I kiss your lips

(僕が君の唇にキスしても、君はもう決して目を閉じない)

 

 こちらは、バリー・マンのほうが思いついたフレーズだそうで、確かにこちらは男性目線でしか気がつかないことですね。

 

 

 さて、この曲はクインシー・ジョーンズのアルバム「愛のコリーダ(The Dude)」からのシングルとして全米17位まで上がるヒットになりました。

 

 バリーとシンシアは、クインシーがジョージ・ベンソンをプロデュースすると聞いて、そのために作ったものでした(そのアルバムは「ギヴ・ミー・ザ・ナイト」ですね)。

 

 バリーはもともとシンガーですので、自分のデモはほとんど自分で歌うのですが、ここの曲は本物のR&Bシンガーに歌ってほしくて、人づてに紹介してもらったのがジェイムス・イングラムスでした。

 ジェイムスはアーティストになるためにオハイオからLAに出てきて、レイ・チャールズなど様々なアーティストのバックをつとめたり、デモ・シンガーとして1曲あたり50ドルのギャラをもらいながら、チャンスを伺っていました。

 

 この曲のデモをジェイムスが歌ったときのことをバリーはこう回想しています。

「彼が歌い出した時、シンシアと私は、私たちの耳に入ってきたものが信じられなかったよ!彼は素晴らしかった。シンシアと顔を見合わせたんだけど、私はもう少しで心臓発作を起こしてしまいそうだったよ。とにかく彼はパーフェクトだった!ソウルフルでサテンのように滑らかだと感じたよ」

(「BARRY MANN &CINTHIA WEIL Original Demo,Private Recordings and Rarities」ライナーノーツより)

 

 そして、このデモを聴いたクインシー・ジョーンズはジェームスをいたく気に入って、自分のアルバムのシンガーに採用し、この曲を歌わせることにしました。

 

 そして、ジェームスは一躍スターの座に駆け上がることになったわけです。

 

 

   この曲のカバーとしては、桑田佳祐が”嘉門雄三”名義でリリースした『嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE!』でのカバーが、個人的にとても好きでした。

 

 韓国で行われたクインシーの80歳を祝うコンサートでの「JUST ONCE」


James Ingram - Just Once (Live in Korea)

 

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「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ( Got To Get You Into My Life)」ビートルズ(1966)

 おはようございます。

今日は、ビートルズゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」です。


Got To Get You Into My Life (Remastered 2009)

 

  ”  ひとりっきりで 乗り物に乗った

      そこに何があるのかもわからずに 

      いつもと違う自分で出会えるかもしれない

      いつもと違う道を選んで

      そして突然君に出会った

   君に言ったっけ?君が必要なんだって

      僕の人生で1日も欠かさずにね

 

         君は逃げもせず 隠れもしないで

    僕が君を抱きしめたいことを君はわかってたね

         君は行ってしまっても やがて知るだろう

    僕が行った通り ふたりはまた出会うって

          君は僕のそばにいる運命なんだ

    僕の言うことを聞いてほしい

          毎日一緒にいようよ

     僕の人生には君がいなくっちゃ!

 

     僕は何をすればいい? どうなればいい? 

     君と一緒にいるとき 僕はただそこにいたいだけ

     もし僕が自分に正直なら 君から離れないよ

           もしそうなら そこに行く道もわかるはず

   そして突然君に出会った

   君に言ったっけ?君が必要なんだって

      僕の人生で1日も欠かさずにね

    僕の人生には君がいなくっちゃ!

 

   ひとりっきりで 乗り物に乗った

      そこに何があるのかもわからずに 

      いつもと違う自分で出会えるかもしれない

      いつもと違う道を選んで

    そして突然君に出会った

    君に言ったっけ?君が必要なんだって

       僕の人生で1日も欠かさずにね               "  (拙訳)

 

****************************************************************

I  was alone, I took a ride
I didn't know what I would find there
Another road where maybe I
Could see another kind of mind there
Ooh, then I suddenly see you
Ooh, did I tell you I need you
Every single day of my life

You didn't run, you didn't hide

You knew I wanted just to hold you

And had you gone, you knew in time

We'd meet again for I had told you
Ooh, you were meant to be near me
Ooh, and I want you to hear me
Say we'll be together every day
Got to get you into my life

What can I do, what can I be
When I'm with you I want to stay there
If I'm true I'll never leave
And if I do I know the way there
Ooh, then I suddenly see you
Ooh, did I tell you I need you
Every single day of my life
Got to get you into my life

I was alone, I took a ride
I didn't know what I would find there
Another road where maybe I
Could see another kind of mind there
Ooh, then I suddenly see you
Ooh, did I tell you I need you
Every single day


*******************************************************************

  アルバム「リボルバー」(1966)に収録された、ビートルズのナンバーの中でも屈指のポップ・ナンバーの一つですが、シングルカットされたのは彼らが解散してから6年たった1976年のことです(全米7位)。

 その代わり、「リボルバー」と同年にこの曲を歌ってヒットさせたのがクリフ・ベネット&ザ・レベル・ラウザーズというグループでした。


Cliff Bennett & The Rebel Rousers - Got To Get You Into My Life

 このバンドはビートルズのマネージャーであるブライアン・エプスタインがマネージメントをしていたこともあって、1966年にはビートルズのヨーロッパ・ツアーのオープニング・アクトをつとめ、この曲を聴かせてもらう機会があったようです。

   この曲がシングルにならないことを知って、彼らはこの曲の作者であるポール・マッカートニーのプロデュースのもとレコーディングを行ったようです。

 

 この曲は管楽器がフィーチャーされR&B色が強いところが、ビートルズナンバーの中でも異色なところでしょう。

 ジョージィ・フェイム&ザ・ブルー・フレイムスのメンバーで、このセッションに呼ばれたテナー・サックス奏者のピーター・コーはこう語っています。

ビートルズははっきりしたジャズ感を求めていたんだ。ポールとジョージ・マーティンがスタジオを仕切っていた。譜面のようなものは用意されていなかったが、ポールがピアノの前に座って、こうしてほしいというのを示してくれた。僕たちはヘッドフォンからリズム・トラックを聴きながら演奏した」

                  (The Complete Beatles Recording Sessions)

 ジャズ感というのが、この曲のキーワードなんですね。

 

 「アンソロジー2」にはこの曲のレコーディングの初日の”とりあえずのベスト・テイク”の音源がアップされています。


Got To Get You Into My Life (Take 5 / Anthology 2 Version)

 初日の段階では”ジャズ感”というアイディアはなかったんですね。翌日以降、あらたに一から録音したようです。

 

 それから、ジョン・レノンはこの曲はポールの作品の中でベストの一つだと言い、特に歌詞を褒めていて、ポールも本気を出せばいい歌詞が書けるという見本だと言っています。そしてLSDをやった経験からできた歌だろうと推測しています。

 

 当のポールは、これは初めてマリファナをやった時の高揚感から生まれたもので、マリファナを褒め称える歌(ode)だと語っています。

 まあ、そういう歌だということなんですね(苦笑)。

 

  ホーン・セクションが効果的な曲ですので、ブラッド、スウェット&ティアーズなどもカバーしていますが、何と言っても極め付けはアース・ウィンド&ファイアーのカバーでしょう。


Earth, Wind & Fire - Got to Get You Into My Life (Audio)

 これは、ビー・ジーズピーター・フランプトンが主演した映画「サージェント・ペパーズ・ロンリー・クラブ・バンド」のために作られたもので、映画自体は映画史上に残る”大失敗作”という烙印をおされてしまっていますが、このE,W&Fのカバーの評価だけはとても高く、セールスも全米チャート9位、ソウルチャート1位に輝いています。

 昨日このブログに登場した「宇宙のファンタジー」の翌年、まさに彼らがノリに乗っているタイミングだったことがよくわかります。

 しかし、映画「ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド」も失敗作でしたから、彼らはどうも”映画運”だけはなかったようですね。

 

 

 

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「宇宙のファンタジー(Fantasy)」アース・ウィンド・アンド・ファイアー(1977)

 おはようございます。

 今日はアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「宇宙のファンタジー」です。


Earth, Wind & Fire - Fantasy (Audio)

Every man has a place
In his heart there's a space
And the world can't erase his fantasies
Take a ride in the sky
On our ship fantasies
All your dreams will come true right away

And we will live together
Until the twelfth of never
Our voices will ring forever as one

Every thought is a dream
Rushing by in a stream
Bringing life to your kingdom of doing
Take a ride in the sky
On our ship fantasies
All your dreams will come true miles away

Our voices will ring together
Until the twelfth of never
We all will love forever as one

Come to see victory
In a land called fantasy
Loving life a new degree
Bring your mind to everlasting liberty

As one
Come to see victory
In a land called fantasy
Loving life for you and me
To behold to your soul is ecstasy
You will find other kind
That has been in search of you
Many lives have brought you to
Recognize it's your life now in review

As you stay for the play
Fantasy has in store for you
A glowing light will see you through
It's your day shining day
All your dreams come true

As you glide in your stride
With the wind as you fly away
Give a smile from your lips and say
Are you free yes I'm free
And I'm on my way

********************************************************************************

 

 ”誰にでも一つの場所がある

   心の中にその宇宙はある

   世界は人間のファンタジーを消すことなんかできない

      さあ、僕たちのファンタジーという船で空に飛び立とう

   君の夢はすべて、今すぐにでも実現するんだ

 

      そして僕たちは共に生きてゆく

    いつまでも

       僕たちの声は一つになって永遠に鳴り響く

 

  あらゆる思考は 急いで流れてゆく一つの夢になる

  君の”行動の王国”に生命を吹き込みながら  

  さあ、僕たちのファンタジーという船で空に飛び立とう

     君の夢はすべて叶う、遥かな場所で

 

  そして僕たちの声は一つになって鳴り響く

     いつまでも

        僕たちはみな永遠に愛し合う ひとつになって

 

  勝利を見にくるんだ ファンタジーという名の国で

  新たな気持ちで人生を愛するんだ

  君の心を永遠に続く自由へと解き放つんだ

 

  ひとつになって

  勝利を見にくるんだ ファンタジーという名の国で

  君と僕との人生を愛しながら

       しっかり見つめて、魂で感じることはエクスタシー

  君のことをずっと探していた別の自分と出会うだろう

  今振り返って たくさんの命のおかげで 

  自分の人生があることに気づくだろう

  

  ファンタジーが君のために用意した

  この劇の中にいる限り

        輝く光が君を最後まで見守ってくれる

  君のための日 輝ける日

  君の夢が全て叶う

 

        飛び上がり 風に乗り 苦もなく滑空しながら

  唇に微笑みを浮かべて 言うんだ

  自由かい?僕は自由さ 僕は夢に向かってゆく  ”  (拙訳)

  

********************************************************************************

  E,W&Fが日本で大ブレイクを果たしたのがこの曲でした。

  壮大なスケールで、仕掛けに満ちたすごいショーをやるグループだ、と当時日本のTVでも紹介していて、そこでこの曲が流れていたのをおぼえています。

 歌詞には「a Space」と出てきますが、読んでみると銀河の宇宙ではなく内的な精神世界というニュアンスで使っているようなんですが、「宇宙のファンタジー」というタイトルはすごくしっくりします。

 その後時とともに「セプテンバー」が彼らの代表曲になりましたが、僕はしばらくこの「宇宙のファンタジー」が彼らの代名詞的な曲だという印象を長く持っていました。

 

 しかし、調べてみるとアメリカでは最高32位と、絶頂期の彼らの勢いからしたらちょっと”コケて”いたシングルだったんですね。しかも、アルバム「太陽神(ALL'N ALL)」からの最初のシングルじゃなく、2番目のカットでした。

 

 最初のシングルは「太陽の戦士(SEPENTINE FIRE)」でした。


Earth, Wind & Fire - Serpentine Fire (Official Video)

  

 やはり、あらためて聴き比べても、「太陽の戦士」より「宇宙のファンタジー」が日本でウケたのはよくわかるような気がします。

 メロディアスであり、そのラテン風のメロディ・ラインに日本人が好きな”哀感”がありますよね。

 オリコンの洋楽チャートでは1位になり、当時の日本のレコード会社の担当者によると、当時ディスコでも大人気で”ファンタジー・ダンス”なるものが生みだされていたようです。

 

 2012年の彼らの来日に合わせて曲の人気投票をやったそうですが、その結果、1位はやはり「セプテンバー」でしたが、「レッツ・グルーヴ」や「ブギー・ワンダーランド」を抑えてこの曲が2位と、相変わらず根強い人気を得ていました。

 

 また、興味深いのはイギリスやスウェーデンなど、それまでまだE,W&Fがブレイクしていなかった国では、この曲がヒットしていることです。ことR&Bに関しては、日本人の嗜好性は、アメリカよりイギリス人と割合似ていることが多い、というのが僕の認識でもあります。

 

 そして、あらためてこの曲の歌詞を読んでみて、明確で普遍的なメッセージ性の強さに気づきました。

 かつて、作者でバンドのリーダー、モーリス・ホワイトが「メロディ・メイカー」誌のインタビューでこう語っています。

「”宇宙のファンタジー”という曲は、偽りに満ちた世界、不公平な世界、とても利己的で人を妬むような世界で生きているということからの現実逃避がその動機となっていて、誰もが自身のファンタジーの世界に逃げることができるということなんだ。そういう場を人々と分かちあうための曲を書く必要があった。現実から脱出するメカニズムなんだ」

 

また、BS-TBSの音楽番組「SONG TO SOUL」でこの「宇宙のファンタジー」を特集した際のインタビューでは、モーリスは曲が先にできたが、歌詞がなかなか書けなかったのが、知人と一緒に映画「未知との遭遇」を見て感銘を受け、ホテルに戻って歌詞を一気に書いたと語っています。

 う〜ん、やっぱり「宇宙のファンタジー」で正解だったんですね。日本の担当者の方エライ。

 また、この曲のエンジニアのジョージ・マッセンバーグは、「セプテンバー」などはストレートに作ったが、「宇宙のファンタジー」はダビングを何度も重ね、ディテールにこだわったものだと語っています。

 ”サウンドでピラミッドを作りたかった”とモーリスがいう通り、ストリングス、管楽器様々な要素をたくさん録音し、思いついたパートをどんどん追加していったそうで、それをまとめあげることに彼はかなりの労力を注いだようです。

 そして日本でこの曲が大ヒットしたことを知らされたジョージが、「宇宙のファンタジー」はロックとは違ってディテールに満ちた音楽で、それを日本人流に理解したのではないか、と語っていたところは興味深いことでした。

 確かに、哀愁味のあるメロディだけでなく、繊細で作り込まれたサウンドというのも

日本人にウケた大きな要因だったのかもしれません。

 

 最後に意外なカバーを。ジャニーズ初期の大人気グループ、フォー・リーブスがやっています。

アース・ウィンド・アンド・ファイアーのリリースからそれほど遅れずにシングル発売されています。同じレコード会社(CBSソニー)なので、連携をとったのでしょう。(昔はそういう手法がよく使われていました)


宇宙のファンタジー - フォーリーブス

 この曲をフォーリーブスがわざわざ歌わなくても、と思わなくもないですが、。

メンバーの北公次日本語詞を書いたそうですが

 歌のBセクションで,,,Together,,, Never,,,Forever というパートに

たどりつけば、 見つければ 、星の夜飛べば としっかり韻で合わせているところになんか少しグッときました。

 

 

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「Love Song」具島直子(1996)

 

 おはようございます。

 今日は具島直子の「Love Song」を。


Naoko Gushima (具島直子) - Love song

 

 一昨年の竹内まりやの「プラスティック・ラヴ」、そして昨年後半からの松原みきの「真夜中のドア」が海外で盛り上がっていいて、話題になってきているCITY POP。

 1990年代終わり頃から2000年代前半にも、そのリバイバルの”小ぶりな波”がありました。そしてその流れにさきがけるようにデビューしたのが具島直子でした。

 

 彼女がデビューした1996年は、古内東子の人気が出てきた頃だったのでレコード会社はそのラインを狙ったのかもしれません。

 僕が彼女を知ったのは、今はなきHMV渋谷の店頭の試聴機だったように思います。

 古内東子は僕には歌詞が少し”強く”感じられたのですが、彼女の場合は洋楽を聴くようなスタンスで聴くことができるのでずっと好みでした。

 AOR、CITY POP、洗練された女性シンガー・ソングライターが好きな音楽関係者はこぞって高く評価していました。

 1996年のデビュー・アルバム『miss.G』、1997年の2nd『Quiet Emotion』、1999年の3rd『mellow medicine』とサウンドは、よりメロウでグルーヴィーなものになっていき、その筋(?)からも人気があったのですが、ブレイクには至らず、シーンから遠ざかることになります。

  2007年に久しぶりにリリースした『Mystic Spice』は、一転アコースティックでオーガニックなスタイルになっていました。

 

 

 彼女の音楽性と切り離せないのが、桐ヶ谷"Bobby"俊博です。彼女はボイストレーナーである彼と出会って以降、彼のプロデュース、アレンジで作品を作っています。

 彼はCITY POPファンから人気の高いシンガー・ソングライター桐ヶ谷仁の弟で彼自身も1979年にメジャー・デビューを経験しています。

 

 彼の4枚目にして最後のシングル「瞳をとじて」。


桐ヶ谷俊博 瞳をとじて

 

 彼女と桐ヶ谷の音楽的相性が”とんでもなく”いいことが、彼女の作品を特別なものにしているように思います。

 2007年以降新しいアルバムは出ていませんが、過去の彼女の作品を再評価する動きは常にあって、今回のCITY POPブームの中でもやはり注目されています。

 そして、「真夜中のドア」のように、いつも再評価の対象になる彼女の作品はデビュー曲の「CANDY」です。


Naoko Gushima (具島直子) - Candy

 YouTubeを見ても海外からのコメントが多いですね。

 

 カバー・プロジェクト「Tokimeki Records」が、マルチクリエイターのHannah Warmをボーカルにむかえた「Candy」が先月リリースされています。


"Candy" Cover (Original Song by 具島直子 / Naoko Gushima)Tokimeki Records feat. Hannah Warm(Lyric video)

 

 

 とはいえ、僕が好きなのはやっぱり、この「Love Song」です。

 東芝日曜劇場の間のCMで流れていたのでおぼえていらっしゃる方もいるんじゃないでしょうか。

  

「涙をひとつこぼしていたら あなたが話しだす」

 

 という導入部は、今も琴線に触れまくってしまいます(苦笑。僕と同じような”ツボ”をお持ちの方はこの世の中にいらっしゃると信じているのですが、、。

 

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「Hello、My Friend」(松任谷由実)アメリカ(2003)

 おはようございます。

 今日も昨日に続いてユーミンのカバー曲です。「Hello、My Friend」、歌っているのはアメリカです。


Hello, My Friend

 

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Hello my friend
There was once a summer when we met
With the butterflies
Fluttering inside
We both fell in love
Lighting up the sky

Destiny
Knew we wouldn't pass the test of time
And what remains
Memories to save
Wishes of a way
You'd be here today
Now I...

Think about the rain
And the sunny days
Waiting on the wind
To carry me home
In a simple way
If we should meet again
Could I still be calling you my friend?

Hello my friend
Written on a postcard sent to you
About the news
The parting of the sea
The passing of the tide
Sailing through a dream.

Of yesterday
I recall but I could not erase
The times with you
Beautiful the morn
Held above the storm
Smiling face to face.
Now I...

Think about the rain
And the sunny days
Waiting on the wind
To carry me home
In a simple way
If we should meet again
Could I still be calling you my friend?

Traveling at the speed of light
Into the sun
Secretly
Will you guide me as if we are one

Think about the rain
And the sunny days
Waiting on the wind
To carry me home
In a simple way
If we should meet again
Could I still be calling you my friend?

Think about the rain
And the sunny days
Waiting on the wind
To carry me home
In a simple way
If we should meet again
Could I still be calling you my friend?

*******************************************************************************

ハロー、マイ・フレンド

二人が出会ったあの夏

蝶が羽ばたきするみたいな気持ちで

二人とも恋に落ちた 空は光に満ちて

 

運命は 

僕たちが時の試練を乗り越えられないことを知っていた

残ったのは 消せない思い出

今日君がここにいたかもしれない、という願い

いま僕は、、

 

あの雨を想い 晴れた日のことを想う

僕を家に連れ戻してくれる風を待ちながら

率直に言って また僕たちが会えたなら

今も君を友だちと呼んでもいいのかな?

 

ハロー、マイ・フレンド

君に送った絵葉書に書いたよ あのニュースのこと

海は分かれ 潮は止み 夢を渡ってゆく

 

あの日のことを

胸によみがえり、消し去ることができない

君と過ごした時間を

嵐を消してゆく 素晴らしい朝

顔を見合わせて微笑んだね

いま僕は、、、

 

あの雨を想い 晴れた日のことを想う

僕を家に連れ戻してくれる風を待ちながら

率直に言って また僕たちが会えたなら

今も君を友だちと呼んでもいいのかな?

 

光の速さで  太陽の中に消えてゆく

ひそかに 僕たちが一つであるように 

君が僕を導いてくれないか

 

あの雨を想い 晴れた日のことを想う

僕を家に連れ戻してくれる風を待ちながら

率直に言って また僕たちが会えたなら

今も君を友だちと呼んでもいいのかな?

 

あの雨を想い 晴れた日のことを想う

僕を家に連れ戻してくれる風を待ちながら

率直に言って また僕たちが会えたなら

今も君を友だちと呼んでもいいのかな?   ”(拙訳)

 

 

*******************************************************************************

 みなさんもちろんご存知だと想いますが、ユーミンのオリジナルはこちら。

1994年7月発売のシングル、TVドラマ「君がいた夏」の主題歌でした。


松任谷由実 - Hello,my friend

 

 ビートルズとか、ブリティッシュ・ポップの雰囲気がアレンジにもすごく出ているのですが、ユーミンが歌うと不思議なもので”ユーミン・ワールド”になってしまうので、この曲を聴いた時から、例えば日本で言ったらL⇔Rとか男性のポップ・バンドがカバーするといんじゃないかな、と思っていました。

 なので、このアメリカのカバーには思わず、うんうん、とうなずいてしまいました。

 

 ユーミンはもともとアメリカン・ロックよりイギリスのロックに強く影響されていた人なので、こういう曲を作るのも納得できます(荒井由実時代のレコーディングで、アメリカっぽいサウンドのティン・パン・アレイと好みのギャップを感じたようなことを語っていました)。

 

 さて、”アメリカ”はロンドン在住のアメリカ人で結成されたことからバンド名が発案されたグループです。ですから、名前こそ”アメリカ”ですが、ブリティッシュ・ロック、ポップの影響も強く受けている人たちなんです。

 

 特にビートルズビーチボーイズ  の影響が大きかったようで、ビートルズのプロデューサーのジョージ・マーティンがプロデュースしたアルバムもあります。

 

 もともとジェリー・ベックリー、デューイ・バネル、ダン・ピークの三人組でしたが、1977年にダンが脱退し、残った二人で活動を続けていました。

 

 21世紀に入ってもオリジナル・アルバムやライヴ・アルバムも発売し、コンスタントに活動していましたが、昨年はコロナ禍でライヴがキャンセルになったようです。しかし、今年はまた春以降ライヴを計画しているようです。

 

 最後にアメリカの代表曲のひとつ「金色の髪の少女(Sister Golden Hair)」(1975年全米1位)を。ジョージ・マーティンのプロデュースです。

www.youtube.com

 

 

 

 

 

 

 

アメリカの代表曲のひとつ「ヴェンチュラ・ハイウェイ」

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「A HAPPY NEW YEAR」(松任谷由実)ベス・ニールセン・チャップマン(2003)

 おはようございます。

 今日はユーミンのカバーを。ベス・ニールセン・チャップマンの「A HAPPY NEW YEAR」です。


A Happy New Year

 

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A Happy New Year to you my love

Tonight it's just the two of us

Lively streets and ringing bells

Your kisses make the world stand still

 

Icicles and stars

Strung up like diamonds in the tree 

Frozen in my jewel box memories

Always,Always

 

A Happy New Year 、The time has gone

Past regrets forever gone

Take my hand I will follow you

We'll run along the avenue

 

Pull me through the crowd

Till we lost inside the sea

Just make sure your heart stay next to me

Always ,Always

 

Pull me through the crowd

Till we lost inside the sea

Just make sure your heart syay next to me

Always ,Always

 

Icicles and stars

Strung up like diamonds in the tree 

Frozen in my jewel box memories

Always,Always

 

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ハッピー・ニュー・イヤー 愛しいあなたへ

今夜は二人だけ

にぎやかな通りに 鐘の音があふれる

あなたのキスが そんな世界を止めてしまう

 

氷柱と星は  

木に吊るされたダイアモンドのように

私の宝石箱の中で凍りついている

いつも、いつも

 

ハッピー・ニュー・イヤー 時は過ぎて

過去の後悔は永遠に消えてゆく

私の手をとって ついてゆくわ

私たちは大通りを走ってゆく

 

人混みから私を連れ出して

二人が海の中に消えてゆくまで

ただ、あなたの心が私の隣にいればいい

いつも、いつも                    (拙訳)

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 オリジナルは1981年発売のアルバム「昨晩お会いしましょう」の一番最後に収録されていました。


松任谷由実 - A HAPPY NEW YEAR(from「日本の恋と、ユーミンと。」)

 

 このアルバムは大ヒット曲「守ってあげたい」が入っていることで知られていますが(昨年末紅白でも歌っていましたね、、)、アルバム全体がAOR色が強くて都会的な憂愁を感じる、個人的に彼女のアルバムの中でも好きなものです。

 

 初めて聴いた時はまだ中学生でしたが、「A HAPPY NEW YEAR」という”おめでたい”タイトルなのに、すごく憂いのある曲調で、そのギャップが新鮮でした。新年だからってだれもかれもが無理して”浮かれる”必要はないんだよな、なんて思いました。

 

 このカバーは、ユーミンの曲を海外のアーティストがカバーした「Over The Sky」というアルバムに入っています。

 こういう企画は昔からたくさんありますが、かつてのAOR系やブラック・コンテンポラリー系のアーティストの”小遣い稼ぎ”みたいな先入観が僕にはあって(実際そういう仕上がりのものが多い気がしますし)、ふだんはあまり積極的には聴かないのですが、このアルバムは良かったです。

 

 思い出してみると、1990年代にJ-POPの英語カバー企画というのが大当たりしましたが、その先駆けとなったのが、アメリカのコーラスグループ"A.S.A.P"のユーミンのカバーだったと記憶しています。彼女たちのファースト・アルバム「GRADUATION」は50万枚売れたそうです。

 

「Graduation Photograph(卒業写真)」A.S.A.P

www.youtube.com

 

 ユーミンが自演する作品は詞、曲、アレンジの最高級のクオリティと彼女のボーカル、声質が実に絶妙なバランスで均衡がとられているので、総合的に聴いてしまいますが、こういう海外の優れたアーティストが英語で歌うと、彼女の書くメロディーラインの良さ、洗練度が、よりはっきりした形で伝わってくるように思います。

 日本のポップス史上最高レベルの歌詞を英語の歌詞に変えても、曲が十分に楽しめてしまうという驚き。

 彼女の英語カバーを聴くと、彼女がいかに英語でも違和感のない洋楽的なメロディーを書いていたか、そして、そこに実に見事に日本語を当てはめていたかを、かえって思い知らされる気がします。

 

 

 さて、ベス・ニールセン・チャップマンはテキサス州出身のポップ/カントリー系のシンガー・ソングライター。フェイス・ヒルやトリーシャ・イヤウッドなど数多くのアーティストの曲を提供しています。

 1990年にリリースしたセカンド・アルバム「ベス・ニールセン・チャップマン」の楽曲がJ-Waveなど日本のFM局でもオンエアされていたのをおぼえています。

 

 「That's the Easy Part」 日本人の琴線に触れるような哀感のあるメロディーですね。


That's the Easy Part

 

 こちらの曲はベースがリーランド・スカラー、ドラムスがラス・カンケル、ギターにディーン・パークスという素敵な面々がバックをつとめています。 


I Keep Coming Back to You

 

 ユーミンとベスも、どちらも”キャロル・キング”というルーツで重なっているのかもしれませんね。

 

 ベスは現在もコンスタントに活動していて、2年おきくらいのペースでオリジナル・アルバムを発表しています。

 

 さて最後に「OVER THE SKY」からもう1曲。パティ・オースティンが歌う「朝陽の中で微笑んで(IN THE MORNING LIGHT)」を。

 

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昨晩お会いしましょう

昨晩お会いしましょう

  • アーティスト:松任谷由実
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「ブランド・ニュー・デイ(Brand New Day)」アル・クーパー(1970)

 あけましておめでとうございます!

 新しい年の真っさらな1日目ということで、アル・クーパーの「Brand New Day」を。

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Last night I had a dream that the world
Was changin' by leaps & bounds
It started up in the bigger cities
Than it spread to the smaller towns
The people began to smile at people
That they'd never even seen
And when Jeremiah woke me up
I was ready to live that dream
It's a BRAND NEW DAY
Brand new way, BRAND NEW DAY

Ya know the mother called the father on the telephone
She cried My God I'm so upset
She said the boy left home naked this mornin'
All he took was the TV set
Then the sister picked up the extension
And she said "He's just doin' his thing..."
Then the father hung up on the mother
And the children began to sing
It's a BRAND NEW DAY
Brand new way, BRAND NEW DAY

We gotta put our heads together
And see where we go from there
We gotta fight for what we believe in
Cause there's somethin in the air

and it's a BRAND NEW DAY
Brand new way, BRAND NEW DAY

 

20 million shadows stormin at the gates
Now how can ya be surprised
With the image of the Fallen Four reflected in their eyes
And though 20 million tongues are shoutin' now
Its only heard by a precious few
But the years of night will pass forever
When the sun comes shinin' through on a
BRAND NEW DAY
Brand new way, BRAND NEW DAY

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  "昨晩 僕は夢を見た 

 世界がものすごい勢いで変わっていったんだ

 より大きな街から始まり、それは小さな町に広がっていった

 

 人々は会ったこともない人たちに微笑みかけ始めた

 そしてエレミヤ(ジェレマイア)が僕を目覚めさせたら

 僕はその夢を生きるつもりさ

 それはまっさらな日 まっさらな生き方

 まっさらな日なんだ

 

 ある母親が父親に電話をしたんだ

 彼女は、ああなんてことなの、私はすごく気が動転してるの、と泣き叫んだ

 彼女が言うには 息子が今朝無一文で家を出たんだと 

 TVだけを持って 

 妹が電話に割り込んで言った

 「兄さんはやりたいことをやっているだけ」

   すると父親は母親の電話を切ってしまった

 そして子供達は歌い始めた

 新しい日がやってきた 新しい生き方ができる

 まったく新しい日なんだ

 

  俺たちは知恵を集めて 

  今いるところからどこに向かうのか考えなくっちゃな

     俺たちは自分たちが信じているもののために

  戦わなくちゃいけない

  そんな気運を感じるんだ

  

  二千万人の影が門に押し寄せる   

     倒れた四人の映像が目に映ったからってどうして驚くんだい?

  二千万人の舌が叫んでも 聞いてくれるのはごくわずか

  だけど、夜のように暗かった年月が永遠に過ぎ去るだろう

     太陽が昇って 新しい日を照らし出したなら

 まっさらな生き方 まっさらな日を、、   ”  (拙訳)

 

  

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  この曲はハル・アシュビー監督のデビュー作「真夜中の青春(The Landlord)」(1970)の音楽を依頼されたアル・クーパーが、映画の主題曲として書き下ろしたものです。

 ハル・アシュビーは「シャンプー」、「チャンス」、「さらば冬のかもめ」、「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」、ローリング・ストーンズのライヴ映画「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」など、なかなかひねりの効いた面白い映画を作った人です。

 「真夜中の青春」の原題”Landload "は家主、大家さんのことで、主人公の大金持ちの息子が親の金でアパートを買い取って、自分の家を建てようとするのですが、そこのアパートの黒人たちとうちとけていき、結局”家主”になることになり、、、という人種問題に切り込んだ内容の映画なんです。

 

 映画のオープニングではアメリカを代表するゴスペル/ソウル・グループのステイプル・シンガーズが歌う「ブランド・ニュー・デイ」が使われていました。

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 この映画のサントラ盤には、アル本人のヴァージョンも入っています。1971年にはシングル・カットもされましたが、こんなアレンジでした。

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 これを聴くと、人種問題がテーマの映画ということもあり、アル・クーパーは歌詞も含めてゴスペルのイメージを持ってこの「ブランド・ニュー・デイ」を書いたことが明らかです。

 歌詞に「エレミヤ(ジェレマイア)」が出てきますしね。「エレミヤ」は旧約聖書の『エレミヤ書』に登場する古代ユダヤ預言者で、

 スリー・ドッグ・ナイトの大ヒット曲「喜びの世界」の冒頭のフレーズ、

”Jeremiah was a bullfrog”(ジェレマイアはウシガエルだった)

 で有名ですね。

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 ちなみにこの「エレミア」が出てくるこの2曲はどちらも同じ年(1970)にリリースされているんですね。

 

 アル・クーパーは映画用のヴァージョンには納得できなかったのか、自身のオリジナル・アルバム「イージー・ダズ・イット」では、アレンジを一新して収録しなおしました。それが冒頭で紹介したものです。彼のベスト・アルバムにもこちらのヴァージョンが入っています。

 

 

 

 ともかく、新しい年を迎えた世界がこの曲の歌詞みたいになることを祈りたいと思います。

 

the years of night will pass forever
When the sun comes shinin' through on a
BRAND NEW DAY

 (夜のように暗かった年月が永遠に過ぎ去るだろう

     太陽が昇って 新しい日を照らし出したなら)

 

 今年もよろしくお願いします!

 

 

 アル・クーパーの1974年のスタジオ・ライヴの音源もリリースされています


Brand New Day (for the score of the film, The Landlord

 

 

 

 日本で一番人気のあるアル・クーパー の曲はきっとこれですよね

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