まいにちポップス

1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、勝手な推理、などで紹介していきます

「ヒア・カムズ・ザ・サン(Here Comes The Sun)」ビートルズ(1969)

 おはようございます。

 今日もビートルズでいきます。「ヒア・カムス・ザ・サン」。

 


Here Comes The Sun (Remastered 2009)

 

 ”お日様が出てきたよ お日様が出てきたんだ

  だから もう大丈夫さ

 

     リトル・ダーリン、ほんとに長く寒くて寂しい冬だったね

  リトル・ダーリン、お日様を見るのはずいぶん久しぶりだ

 

  お日様が出てきたよ    お日様が出てきたんだ

  だから もう大丈夫さ

 

  リトル・ダーリン、みんなの顔に微笑がもどってくるよ

  リトル・ダーリン、笑顔を見るのはずいぶん久しぶりだ

 

  お日様が出てきたよ    お日様が出てきたんだ

  だから もう大丈夫さ


   燦、燦、燦 と お日様が

   燦、燦、燦 と 輝く

 

 リトル・ダーリン 、氷がゆっくり溶けてゆく

 リトル・ダーリン、地面が見えるのはずいぶん久しぶりだ

 

  お日様が出てきたよ    お日様が出てきたんだ

  だから もう大丈夫さ

 

     お日様が出てきたよ    お日様が出てきたんだ

  だから もう大丈夫さ                                         ” 

           (拙訳。すみません、一部悪ノリしています、、)

 


「イエスタデイ」(2019年)という映画は、ビートルズが存在しなくなっていた世界で、ビートルズを覚えていた主人公(売れないミュージシャン)がビートルズの曲を自分の作品として演奏することでスーパースターに祭り上げられる、、という話でした。

 そこで、僕が興味を持ったのは、ビートルズを全く知らない状態でビートルズの曲を聴く、というのはどんなものなんだろう、ということで、それがちょっと羨ましくもありました。

 

 僕は1964年生まれなんですが、ビートルズをリアルタイムで楽しむにはひとまわり(12年)ほど遅れてしまっている年代です。

 

 僕が洋楽を聴き始めた中学生くらいのときは、”ビートルズ神話”という神殿がせっせと巨大化されてゆく真っ最中でした。同い年の中でもビートルズ好きは少なくなかったのですが、多かれ少なかれみんな”ビートルズ神話”を大前提として聴いていたように思います。

 

 僕も彼らの曲を聴くときには、さあビートルズだぞ!というような 無意識のうちにバイアスがかかっているようで、プレーンな耳で聴けてないんじゃないかという気持ちがずっとつきまとっていました。

 

 しかし、これだけ時間が経つと、そろそろ“神話性”とは離れてビートルズを聴ける時代になっているのかなとも思うようになりました。

 

 そんなことを考えたのは、僕が利用している”定額音楽聴き放題サービス”の最大手Spotifyで、世界で一番多く聴かれているビートルズの曲が、この「ヒア・カムズ・ザ・サン」だということを知ったからです。

 しかも、ぶっちぎりです。昨日このブログで取り上げた「イエスタデイ」のほぼ2倍です。「ヘイ・ジュード」「レット・イット・ビー」の倍近くでもあります。

 

   この歌詞の内容と曲調から、コロナ禍に見舞われた世界で慰めとなったことは間違いないようで、患者さんが退院するときにこの曲をかけた病院もあったそうです。

 

 しかし「ヒア・カムズ・ザ・サン」人気はコロナ以前からのもので、昨年9月の集計でイギリス国内で一番ストリーミングとダウンロードされたビートルズの曲がこの「ヒア・カムズ・ザ・サン」だったそうです(5000万再生。「レット・イット・ビー」は2600万回)。

 

 もっとさかのぼると、2010年にiTunesではじめてビートルズの曲が、ダウンロード販売されたときの最初の週トップになったのもこの曲だったそうです。

 

 それを考えると、

 21世紀、世界で最も人気のあるビートルズ・ソングは「ヒア・カムズ・ザ・サン」だ

と言っていいのかもしれません。

 

 しかし、”ビートルズ神話”にどっぷり浸かってきた僕のような世代の人間にとってみたら、これはかなりびっくりしてしまうことです。

 

 ビートルズとは、基本レノン=マッカートニーに二大天才のせめぎ合いであり、ファンはジョン・レノン派とポール・マッカートニー派に別れ、散々語り尽くした後になって、実はジョージもいい曲書くんだよね、みたいな流れになり、でもそこでまずでてくるのは、「サムシング」。そのあと、「ヒア・カムズ・ザ・サンもしくは「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」なんかが出てくる。そういう位置付けだったのじゃないでしょうか。オールド・ファンにしてみたら。だいたい、この曲、当時シングルになっていませんし(ダウンロード販売が始まった2010年に初めてチャート入りしました)。

 

 これは”ビートルズ神話”とは離れたところで、この曲が聴かれているということなんじゃないでしょうか。

 

 Spotifyをはじめとすいる”定額聴き放題”サービスの中心は「プレイリスト」です。

 あるテーマを決めて、誰かが選曲したものです。そのテーマの多くは”気分”やシチュエーション”です。元気を出したいときに聴く曲、とか、ドライヴで聴きたい曲、とか。

 

   ビートルズでこの曲が一番ストリーミング&ダウンロードされたという記事を昨年書いた執筆者は、この曲を”全ての夏のプレイリストの中心”と評しています。

 

 明るく、気分良くなりたい、というときに聴く定番曲になっているということです。そして、それは、ポップス”本来の”あり方なんだと僕は思います。

 

 最後にこの曲のプロフィールを。

 

「『ヒア・カムズ・ザ・サン』はアップルが学校のようになってしまっていた時期に書いた。僕らは毎日オフィスに通い、ビジネスマンのようにあっちの書類、こっちの書類にサインしなければならなかった。それはまるで冷たい冬が永遠に続くようなもので、春が来るのをひたすら待ちこがれていた。そんなある日、意を決してアップルを「フケる」、つまり無断欠勤することにした。ぼくはエリック(クラプトン)の家に行き、庭を散歩した。」会社に行って間抜けな会計士たちと顔を合わせなくていいというだけで、すばらしくやすらかな気持ちになった。そして、エリックのアコースティック・ギターを一本借りて庭を歩き、『ヒア・カムズ・ザ・サン』を書いたのだ」

            (「ジョージ・ハリスン自伝 I・ME・MINE」)

 

 ちなみに、エリック・クラプトン自身は、ギターを持って自宅の庭を歩いたりする習慣は自分にはない、と言っていたようです。

 

 この頃はビートルズという産業が巨大化するとともにメンバーも会社運営に参加しなくてはいけなかった時期で、同時にメンバー間の不協和音がかなり目立つようになっていました。

 ジョージにとっては、自分の会社よりエリックの家のほうがはるかに安らげる場所だったんですね。そして、実際にやすらかな気持ちのまま、この曲を書いたわけなんですね。

 

 そのときに歌詞を書いた直筆のメモ用紙が残っていて、悩みこまずに、さらさらっと書けたんじゃないかという雰囲気が伝わってきます。最後にお日様マークがありますし。(あと、リトル・ダーリンをL.D、ヒア・カムズ・ザ・サンも最後はH.C.T.Sなんて略しているところから、さらさら書いている感じが伝わってきます)

 

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 最後に昨年(2019)、この曲の人気を受けて制作されたMVを。


The Beatles - Here Comes The Sun (2019 Mix)