まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ(With a Little Help from My Friends)」ビートルズ(1967)

おはようございます。

今日もビートルズでいってみます。「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」です。


With A Little Help From My Friends (Remastered 2009)

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What would you think if I sang out of tune?
Would you stand up and walk out on me?
Lend me your ears and I'll sing you a song
And I'll try not to sing out of key

Oh, I get by with a little help from my friends
Mm, I get high with a little help from my friends
Mm, gonna try with a little help from my friends

What do I do when my love is away?
Does it worry you to be alone?
How do I feel by the end of the day?
Are you sad because you're on your own?

No, I get by with a little help from my friends
Mm, get high with a little help from my friends
Mm, gonna try with a little help from my friends

Do you need anybody?
I need somebody to love
Could it be anybody?
I want somebody to love

Would you believe in a love at first sight?
Yes, I'm certain that it happens all the time
What do you see when you turn out the light?
I can't tell you, but I know it's mine

Oh, I get by with a little help from my friends
Mm, get high with a little help from my friends
Oh, I'm gonna try with a little help from my friends

Do you need anybody?
I just need someone to love
Could it be anybody?
I want somebody to love

Oh, I get by with a little help from my friends
Mm, gonna try with a little help from my friends
Oh, I get high with a little help from my friends
Yes, I get by with a little help from my friends
With a little help from my friends

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 ”もし僕が調子っぱずれで歌ったらどう思う?

   立ち上がって僕を見捨てちゃうのかい?

   ちょっと耳を貸して 歌を歌ってあげるよ

   キーを外さないようにやってみるから

 

   友だちにちょっと手伝ってもらってなんとかするよ

   友だちにちょっと助けてもらっていい気分になって

   友だちにちょっと助けてもらってやってみるよ

 

   恋人と離れているとき 僕は何をしたらいい?

     (ひとりになるのが不安かい?)

   1日が終わるとき、僕はどんな気持ちなんだろう?

  (ひとりっきりで寂しいのかい?)

   ううん、友だちにちょっと手伝ってもらってなんとかするよ

   友だちにちょっと助けてもらっていい気分になって

   友だちにちょっと助けてもらってやってみるよ

 

      ( 誰か必要なのかい?)

  愛する人が必要さ

  (誰でもいいのかな?)

  愛する人がほしい

 

  (一目惚れって信じるかい?)

  うん、間違いなくよくあることさ

  (灯りを消したら君には何が見える?)

   教えないよ それは僕のものだから

 

      友だちにちょっと手伝ってもらってなんとかするよ

   友だちにちょっと助けてもらっていい気分になって

   友だちにちょっと助けてもらってやってみるよ

 

       ( 誰か必要なのかい?)

  愛する人が必要さ

  (誰でもいいのかな?)

  愛する人がほしい

 

      友だちにちょっと手伝ってもらってなんとかするよ

   友だちにちょっと助けてもらっていい気分になって

   友だちにちょっと助けてもらってやってみるよ      "   (拙訳)

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 「<サージェント・ペパー>はたったひとつのアイディアからはじまったーぼくらが”ザ・ビートルズ”でいることにうんざりしていたことだ」

 

 「『どうだろう、別のバンドのふりをするというのは?』。それ用の名前をでっち上げ、分身をでっち上げてしまえば、この別のバンドの視点から、アルバムをまるごとつくることだってできるだろう。」

                   (「ポール・マッカートニー 告白」)

 

 でっち上げられた架空のバンド”サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド”の同名のアルバムは、バンドのテーマ曲ともいうべき「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」ではじまり、歌の終わりの方で

 

”それではご紹介いたしましょう、ワン・アンド・オンリーのビリー・シアーズ(Billy Sears)とサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドです”

 

 と紹介され、メドレー式に始まるのがこの「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」です。

 ビリー・シアーズなるシンガーが歌っているという設定なんですね。そして、そのビリーにはリンゴ・スターが扮しているわけです。

 

  そんな重要な演出を担っている曲なのに、実際に作られたのはアルバムのレコーディングの終盤だったそうです。

 

 アルバムにリンゴが歌う曲が欲しいということになり急遽作ったものでした。

 ポールがベーシックなもの(曲のタイトルとおおまかな曲の構造)を作り、それをジョン・レノンと一緒に仕上げていきました。当初のタイトルは「バッド・フィンガー・ブギ」。これは、ジョンが人差し指をケガしていたことからつけられました。

(このネーミングは後に、バンドの”バッド・フィンガー”という名前に生かされました)

 この曲の作曲中に、ジョンはケガした指をかばいながら、ピアノでブギのリズムを弾いたのかもしれません。

 

  ビートルズ唯一の公認評伝を書いているジャーナリスト、ハンター・デイヴィスはこの曲の歌詞をジョンとポールが作っている現場に立ち会ったそうです。

 ポールの家にジョンが来て、最初はジョンがギター、ポールがピアノを弾きながら、後半入れ替わったりしながら、作業していったようです。

 (作業の合間に、ポールがまだ完成していなかった「フール・オン・ザ・ヒル」を、ジョンにその日はじめて聴かせたそうです)

 

 僕が驚いたのは、ジョンとポールががっちり協力しあって作ったということです。

 レノン=マッカートニー名義の曲は、特に中期以降の作品の多くは、どちらか一方がほとんど書いていたことが知られています。

 

 しかし、この曲はポールが主導とはいえ、ジョンが全面協力しています。

 

 それは、締め切りがギリギリだったこと(2日間で曲を書き、その日の夜にスタジオに入るという強行軍でした)も大きいでしょう。

 

 ただ僕は、それ以上に”リンゴ(もしくはビリー・シアーズ)のために書いた曲”だったからじゃないかと思います。

 

 ポールは、この曲はほとんどジョンとの共作であり、ちょっとした”職人仕事”だったと語っています。

 リンゴの狭い声域に合わせ、彼のコミカルなキャラクターに似合ったものにしたわけで、いつもとはかなり違ったスタンスでした。

 

 だいたい、「僕の歌が調子っぱずれだったらどう思う?」って、リンゴが歌うという大前提なしには考えられないものです。

(それに続く歌詞は当初、立ち上がってトマトを投げつけるかい?だったそうですが、リンゴが強硬に反対したそうです)

 

 「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」はレノン=マッカートニーが職業作家的にリンゴ・スター(ビリー・シアーズ)という歌手のために書いた曲だった  

 と言えるのかもしれません。

 

 そして、この曲以降、レノン=マッカートニーがここまで”がっちり組んで”曲作りをしたものはなかったようです。

 しかも、その曲が「友達のちょっとした助けを借りて」という歌なんですから、

 

 リンゴ・スターはいまでこそ、彼はロック史上屈指のドラマーとされていますが、昔は世間の評価は”才能よりキャラクター”に向いていたと記憶しています。

 でも、巨大な才能がせめぎあうようなバンドの中で、言い方は悪いですが”緩衝地帯”のような、彼の存在は絶対必要だったように思います。

 しかも、こんな素敵な曲を生み出すきっかけになっているわけですから。

 

 

 さて、この曲はシングルにはなりませんでしたが、その後3つのカバー・ヴァージョンがイギリスでNO.1になっています。

 一番有名なのはジョー・コッカーのゴスペル・チックな、リンゴとは真逆と言ってもいいアプローチでのカバー。ジミー・ペイジのギター、プロコル・ハルムのB.Jウィルソンのドラムがフィーチャーされています。

 


Joe Cocker - With a little help from my friends

 

 他に全英1位になったのは1988年のWet Wet Wet、2004年のサム&マークです。

www.youtube.com

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 とはいえ、リンゴの声域とキャラクターに合わせたのですから、彼が歌うのが一番でしょう。

 彼が歌っている動画はいくつかありますが、ジョージ・ハリスンエリック・クラプトンエルトン・ジョン、ジェフ・リンなど凄いメンツが集まった1987年の”プリンス・トラスト・コンサート”は削除されていまいましたので、2015年のロックンンロール・ホール・オブ・フェイムでのリンゴとポールの共演を最後に。

 

 

「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」という曲は、リンゴ・スターという”人間”そのものだ

 とまで言いたい気持ちになります。 

 

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