まいにちポップス(My Niche Pops)

毎日好きな曲を聴いて気持ちを整えながら、なんとか人生をやってこれた筆者が、古今東西のポップ・ソングを、意外なエピソード、マニアックなネタ、拙い対訳、勝手な推理、などを交えて紹介しています。みなさんの音楽生活に少しでもお役に立てればうれしいです。text by 堀克巳(VOZ Records)

「I.G.Y.」ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)(1982)

 おはようございます。今日はドナルド・フェイゲンの「I.G.Y.」です。

www.youtube.com

Standing tough under stars and stripes
We can tell
This dream's in sight
You've got to admit it
At this point in time that it's clear
The future looks bright

On that train all graphite and glitter
Undersea by rail
Ninety minutes from New York to Paris
Well by '76 we'll be A-OK

What a beautiful world this will be
What a glorious time to be free
What a beautiful world this will be
What a glorious time to be free

Get your ticket to that wheel in space
While there's time
The fix is in
You'll be a witness to that game of chance in the sky
You know we've got to win

Here at home we'll play in the city
Powered by the sun
Perfect weather for a streamlined world
There'll be spandex jackets one for everyone

What a beautiful world this will be
What a glorious time to be free
What a beautiful world this will be
What a glorious time to be free

On that train all graphite and glitter
Undersea by rail
Ninety minutes from New York to Paris
(more leisure for artists everywhere)
A just machine to make big decisions
Programmed by fellows with compassion and vision
We'll be clean when their work is done
We'll be eternally free yes and eternally young

What a beautiful world this will be
What a glorious time to be free
What a beautiful world this will be
What a glorious time to be free
What a beautiful world this will be
What a glorious time to be free
What a beautiful world this will be
What a glorious time to be free

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星条旗の下、誇り高く立っている
僕たちはわかるはずさ
この夢がもう見えてきたことを
今この時点で、君も認めざるを得ないだろう
未来は明るいと

グラファイトで輝く列車に乗って、
海底を鉄道をゆけば、
ニューヨークからパリまでわずか90分
1976年までには、きっと万事OKさ

なんて美しい世界になるんだろう
自由になれる、なんて輝かしい時代なんだろう
なんて美しい世界になるんだろう
なんて自由で輝かしい時代なんだろう

宇宙ステーションへのチケットを手に入れよう
まだ時間があるうちに
結果はもう仕組まれている
宇宙で繰り広げられるゲームの
君は目撃者になるんだ
そして僕らは勝つに決まっているんだ

この地上では、僕らは街で遊び、
太陽エネルギーで暮らしている
最新型の世界では天気も完璧さ
誰もがスパンデックスのジャケットを着るようになる

なんて美しい世界になるんだろう
なんて自由で輝かしい時代なんだろう
なんて美しい世界になるんだろう
なんて自由で輝かしい時代なんだろう

グラファイトで輝く列車に乗って、
海底を鉄道をゆけば、
ニューヨークからパリまでわずか90分
(世界中の芸術家たちには、もっと余暇が生まれる)

大きな決断を下す、公平な機械
思いやりと先見の明を持つ人たちによってプログラムされた
彼らの仕事が終わる頃には、僕らはすっかり浄化され
永遠に自由で、そして永遠に若くいられるんだ

なんて美しい世界になるんだろう
なんて自由で輝かしい時代なんだろう
なんて美しい世界になるんだろう
なんて自由で輝かしい時代なんだろう
なんて美しい世界になるんだろう
なんて自由で輝かしい時代なんだろう
なんて美しい世界になるんだろう
なんて自由で輝かしい時代なんだろう  (拙訳)

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「I.G.Y」(ドナルド・フェイゲン)ヤマハぷりんと楽譜はこちら

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「I.G.Y.」とは International Geophysical Year(国際地球観測年) の略で、1957年7月1日に始まり、18か月後の1958年12月31日に終了した、世界各国が協力して行った科学観測プロジェクトのことです。冷戦終結後の世界的な科学協力の新時代を切り開くことを目的としていました。

 これに合わせてソ連とアメリカは人工衛星スプートニクとエクスプローラーをそれぞれ打ち上げ、宇宙開発競争の幕開けにもなりました。そして社会では「科学とテクノロジーが人類を明るい未来へ導く」という楽観的なムードが満ちていました。

 ちなみに日本もこのプロジェクトに参加し、南極観測を行うために昭和基地を作っています。僕のような昭和世代には懐かしい”10円切手”の絵柄はこの国際地球観測年だったんです。

 1950年代後半〜60年代初頭に子供時代を過ごしたフェイゲンは、当時信じていた「輝かしい未来像」を、ノスタルジックにかつどこか皮肉っぽく歌にしています。当時のSF的未来予想図がいくつも登場します。

 彼よりひとまわり年下ですが、僕の子供の頃も、<科学がもたらす夢のような未来像>はマンガやアニメにもよく出てきて、無邪気にワクワクしていたものでした。

 21世紀になって、そのうちのいくつかは実際に形になっています。しかし、科学の発展とは、ユートピア的側面とディストピア側面が表裏一体になって同時に進んでいくことをつくづく思い知らされます。もちろん、それは科学が悪いのではなく、それを使う人間の思惑、欲望によって左右されるのですが、、、。

 1950年代当時のことをフェイゲンは、

 政治的な情勢、性的なものへの抑圧、そしてその時代の技術的進歩の背後に、指針となるような人間主義的な哲学が存在しないように思えた、と語っています。

 そして、その代替えとして、多くの若者がジャズやその他の黒人音楽、深夜ラジオのトーク番組から得られるヒップ(粋な)考え方や態度の中にそれらを見出したんだ、と。

 この「I.G.Y」が収録されているアルバム「ナイトフライ」はその印象的なジャケットとともに、ポップ・ミュージック史上でも屈指の名盤の地位にある作品ですが、制作当初の大きなテーマは、幼少期の経験が彼自身、そして同世代の多くの人々の人生観にどのような影響を与えたのかを探求し、記録することでした。

 そして、少しずつ楽曲が出来上がっていくと、コンセプト・アルバムのようなものへと発展し、フェイゲンが生み出した「レスター・ザ・ナイトフライ」という架空のDJによってアルバム全体がくっきりと一つにまとめられました。

 フェイゲンによると、実は、「ナイトフライ」の曲はできるだけ皮肉を込めずに書こうとし、アルバム全体は、スティーリー・ダンのレコードよりも少し明るく軽快なものもっと楽しく聴けるもの、そしてパーソナルなアルバムにしたかったとのことです。

 ”皮肉”というのは客観的な目線で語る必要があるものですが、確かに「I.G.Y」は、無邪気に科学を信じている当事者の心情を歌詞にすることで、直接的には皮肉ってはいません。結果的に聴く側が皮肉さを感じるんですね。

 スティーリー・ダンよりも明るく軽快、ということでは、例えばこの「I.G.Y」は、まずドラムマシーンを鳴らして曲のフィーリングをつかんでから、シンセや他のパーツを加えていくというスタイルで作ったそうです。

 「ナイトフライ」というと、常にそのサウンドの素晴らしさばかりが、評判になりますが、彼自身のアルバム全体に込められた<幼少期の強い記憶>というものが、特別な深みと奥行きを与えているように僕には思えます。

 

 最後に2021年に発売された「ナイトフライ」のライヴ・アルバム「Donald Fagen's The Nightfly Live」から「I.G.Y」を。

www.youtube.com

THE NIGHT FLY

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Donald Fagen's The Nightfly Live

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