まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「星に願いを(When You Wish upon a Star)」クリフ・エドワーズ(1940)

 おはようございます。

 今日はディスニーの大スタンダード「星に願いを」です。

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When you wish upon a star,
Makes no difference who you are,
Anything your heart desires,
Will come to you.


If your heart is in your dream,
No request is too extreme,
When you wish upon a star,
As dreamers do.

 

Fate is kind,
She brings to those who love,
The sweet fulfillment of,
Their secret longing,

 

Like a bolt out of the blue
Fate steps in and sees you through
When you wish upon a star
Your dreams come true

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星に願いをかけるとき
あなたが誰かなんて違いはない
心から望めば何でも
やってくるはず あなたのもとへ


あなたの心がもし夢の中にあるのなら
行き過ぎた願いなんてない
あなたが星に願いをかけるとき
夢見る人がそうするように


運命は親切さ
彼女は愛する者たちの
心に秘めた強い想いを
優しく満たしてくれる


青天の霹靂のように
運命は、あなたの心を見通す
星に願いをかけるとき
夢は叶う

           (拙訳)

 

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「星に願いを」楽譜はこちら

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 この曲は1940年のディズニー映画「ピノキオ」の中で、作品のストーリーテラーでもありピノキオの良心役を任されるコオロギ”ジミニー・クリケット”によって歌われています。

 ジミニー・クリケットを演じたのが俳優でミュージシャンのクリフ・エドワーズ。”ウクレレ・アイク”というニック・ネームのウクレレ奏者として人気でした。

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 冒頭でご紹介したのは映画のヴァージョンですが、エドワーズはレコード用として別途録音しています。

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 こちらは歌詞を二回繰り返していますが、その間にこういうパートが挿入されています。

 

” When a star is born
  They possess a gift or two
  One of them is this 
  They have the power to make a wish come true”

 

(星が生まれる時 特別に与えられた力を一つか二つ与えられているんだ

そのうちのひとつがこれ 星は夢を叶える力を持っているのさ)

 

    そして、「Fate steps in and sees you through」という歌詞を

「Suddenly, it comes to you」に変えています。子供向けにわざとよりシンプルな言い回しにしたのでしょうか。しかし、いろいろカバーを聴いてみましたが、その後この曲がカバーされるときは、ほぼディズニー盤の「Fate steps in and sees you through」で歌っているようです。

 

  この曲を作詞したのがネッド・ワシントン、作曲がリー・ハーライン。ともに、映画音楽で活躍した人たちです。

 

 リー・ハーラインという作曲家について少しプロフィールを紹介します。

 

  スウェーデンからの移民の子としてユタ州に生まれたハーラインは、6歳からピアノを始め作曲家になるために勉強を続け、チャンスをつかむために大学を辞めてロサンゼルスに向かいました。

 そしてカリフォルニアのラジオ局で主にオルガン奏者としてキャリアを始め、作曲家としても徐々に有名になっていきました。

 彼がカリフォルニアにやってきたのが1928年頃と言われていますが、その同じ年の11月にウォルト・ディズニーミッキー・マウスを映画デビューさせています。

 

 ハーラインの評判を聞きつけたウォルト・ディズニーは1932年に彼を自社の音楽部門に雇い入れました。

 彼は映画「白雪姫」の「いつか王子様が(Someday My Prince Will Come)」や「ハイ・ホー」で知られる作曲家フランク・チャーチルと両輪となってディズニー映画の音楽を支える存在になりました。

 

 優れたピアニストだったチャーチルは、ピアノで演奏できて"簡単に口笛やハミングができる "ような曲を作り、ハーラインはピアニストとしては優れた才能はなかった分"幅広い音楽教育 "を受けていたため、"両手とピアノだけ "では伝えきれないメロディーや構造を持つ、より複雑な音楽を作曲することができた、と言われています。

 

 僕が思うに、チャーチルは”歌モノ”が得意、ハーラインは”劇伴”も得意、という感じだったのかなと思います。

 

 ちなみに「白雪姫」ではチャーチルがメインの楽曲を書いていますが、一人で完成させることができなかったため、ハーラインともう一人ポール・J・スミスという作曲家が加わって作り上げています。

 

 この「白雪姫」での見事なサポートが認められたのでしょうか。その次回作「ピノキオ」の音楽ではハーラインが起用され、スミスの協力も多少あったようですが、ほぼ一人でやりきっています。

 

 考えてみると、「星に願いを」は覚えやすいメロディーが得意なチャーチルの方が作りそうな感じもしますが、どのようにしてハーラインが書いたのか興味はありますが、残念ながら、そういう記事を見つけることはできませんでした、、。

 

  さて、「ピノキオ」は映画としては「白雪姫」ほどのヒットにはなりませんでしたが、「星に願いを」の評価は高く、アカデミー賞の最優秀歌曲賞を受賞しました。これはディズニーとしては初めての受賞だったそうです。そして、ご存知の通り、今ではディズニー映画のオープニングで使われる、ディズニーをまさに象徴する曲となっています。

 

  参考:Utah Historical Quarterly, Volume 85, Number 2, 2017 by Utah State History

 

 最後に500以上あるこの曲のカバーからいくつかご紹介します。

 

 1960年のディオン&ザ・ベルモンツ。ブライアン・ウィルソンのフェイヴァリットで、この曲から「サーファー・ガール」を思いついた、なんて話もあります。

 クリフ・エドワーズが間奏においていたパートを、こちらは冒頭に持ってきていますね。

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  1991年のビリー・ジョエル。様々なアーティストがディズニー・ソングをカバーしたアルバム「Simply Mad About the Mouse」。ビリーも、同じニューヨーカーの先輩ディオンのヴァージョンが好きだったのでしょうか、冒頭を同じパターンで始めています。

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”When a star is born   They possess a gift or two〜”から始まるカバーは、僕の知っているところでは他にジョニー・マティスやニール・ダイアモンドなんかもそうでした。

 

 最後は2011年リリースのアルバム「In The Key of Disny」ブライアン・ウィルソンのカバーで。

 

 今年も本当に長くてマニアックなブログにお付き合いいただき、ほんとうにありがとうございました!!

 みなさま、ぜひ大好きな音楽とともに良いお年をお迎えください。

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