まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「煙が目にしみる(Smoke Gets In Your Eyes)」プラターズ(1958)

 おはようございます。

 今日はプラターズの「煙が目にしみる」です。

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They asked me how I knew
My true love was true
I of course replied, something here inside
Cannot be denied

 

They said some day you'll find
All who love are blind
When your heart's on fire, you must realize
Smoke gets in your eyes

 

So I chaffed them and I gaily laughed
To think they could doubt my love
Yet today my love has flown away
I am without my love

 

Now laughing friends deride
Tears I cannot hide, hide
So I smile and say, when a lovely flame dies

Smoke gets in your eyes

 

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人は僕にたずねた、どうしてわかるのか
僕の真実の愛が本物だったことを
僕はもちろん答えた、胸の中にある何かを
否定することはできないからと

 

彼らは言った、いつか君も知るだろう
愛する者はみんな盲目だと
心が燃えているときに、気づかなければいけない
煙で目が見えなくなることに

 

だから、みんな僕の愛を疑っていると思って
僕は彼らをからかい、陽気に笑い飛ばした
だけど今日、僕の愛は飛び去っていった
僕にはもう愛がない


今、笑っている友人たちはバカにする
僕の隠しきれない涙を
だから僕は微笑んで言うんだ
愛しい炎が燃え尽きた時

煙が目にしみたのさ、と

                  (拙訳)

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 本当に巧みな歌詞ですね。

 歌の最後の、泣いているのは煙が目に入ったから、というくだりは元々わかっていましたが、その前のサビでは、恋で心に火がついている時はその煙でよく見えなくなるんだ、という意味で使っていて、それがあるがこそ最後のフレーズの効果がまた一段上がる、という仕組みですね。

 

 作詞したのはオットー・ハーバック。

 彼はミュージカル史上屈指の作詞家オスカー・ハマースタイン2世(「サウンド・オブ・ミュージック」の「ドレミの歌」「エーデルワイス」「私のお気に入り」も彼の作品)をメンターとしていて、直接バックアップされていた人です。

 

 そして、作曲したのがジェローム・カーン

 アメリカのポピュラー・ミュージック創世記の最大の作曲家の一人で、ジョージ・ガーシュインをして

「私はカーンの作品を欠かさず聴いて、彼が作ったすべての曲を詳しく検討した」

(「イージー・トゥ・リメンバー アメリカン・ポピュラー・ソングの黄金時代」)

 と言わしめたほどの人です。

 ハマースタイン2世とコンビで「ショウボート」などを手がけていた人で、ハマースタインの弟子であるハーバックともコンビを組むようになりました。

 

 「煙が目にしみる」は1933年にミュージカル「ロバータ」のために書かれた曲で、1935年に映画化もされています。

 

 ミュージカル史上最高のコンビ、フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャースのダンスシーンで使われていたんですね。

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 そして、この曲をカバーしたプラターズは、1952年のロサンゼルスで結成されたヴォーカル・グループ。Platterとは”大皿”の意味もありますが、レコード・プレイヤーの”レコードを乗せる円盤状のプレート”の意味があり、そこからグループ名をつけたようです。

 彼らはバック・ラムという作編曲家/プロデューサーと出会うことで大ブレイクしました。ラムはヒット曲を書いただけではなく、リードシンガーを新たに加入させ、女性メンバーも入れるなどグループを大改革しました。

 最初の大ヒットは定番中の定番、1955年の全米5位「オンリー・ユー」(バック・ラム作詞作曲/プロデュース)

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  次のシングルは見事、全米1位に。「グレート・プリテンダー」(バック・ラム作詞作曲/プロデュース)。フレディ・マーキュリーもカバーしていましたね。

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 他にも「マイ・プレイヤー」(1956年全米1位)「マジック・タッチ」(1956年全米4位)「トワイライト・タイム」(1958年全米1位)と大ヒット曲をたくさんリリースしました。

  ちなみに「トワイライト・タイム」はスリー・サンズ(キャロル・キング、バリー・マンなどを擁した”アルドン・ミュージック”ドン・カーシュナーと一緒に立ち上げたアル・ネヴィンズが在籍していたグループ)が作り演奏したインスト・ナンバーに、バック・ラムが歌詞をつけたものでした。

 バック・ラムという人はソングライターとしての才能だけではなく、選曲眼にも大変優れた人だったんですね。

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   バック・ラムは、プラターズを白人中流層向けにアピールする音楽に徹底させることで大成功を収めます。その流れとして、アメリカン・スタンダードであった「煙が目にしみる」を選んだと思われます。

 

 しかし、「ビルボード・ナンバー1・ヒット上1955~1970」によると、ジェローム・カーンの未亡人は大反対で、弁護士を立てて発売中止を申し入れたそうです。大ヒットをたくさん持つグループとはいえ、まだそういう”壁”は高かったのかもしれません。

 曲の権利を持つ出版社は、プラターズが歌えばヒット間違いなしですから、ミリオンセラーの印税が入ると必死に奥さんを説得したそうです。

 オットー・ハーバックの方はこのヴァージョンを絶賛したそうで、彼の師匠ハマースタインも賛辞を表明したと言われています。

 

 

 僕はこの曲というとやっぱり映画「アメリカン・グラフィティ」の印象が強いです。カバーも調べると600近くあるようで、日本では山下達郎のカバーも有名ですね。

 数あるカバーの中から今回は、スピルバーグの映画「オールウェイズ」で使われたJ.D.サウザーのヴァージョンを最後に。

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