まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「チェンジ・オブ・ハート(Change of Heart) 」エリック・カルメン(1978)

 おはようございます。

 今日はエリック・カルメンの「チェンジ・オブ・ハート」を。


ERIC CARMEN Change Of Heart (#19 USA/1978) HQ

 

 ”今でも思い出せるよ 僕たちが永遠の愛を誓った時のことを

 まぶしく輝いて見えた未来のための二人の計画もすべて

 ああ、君が僕から去ってゆく理由も全部理解できるけど

 毎晩一人ぼっちで眠るときにはどうしようもなくなるんだ

 

 ああ、だから、君の気持ちがまた変わることがあったら

 思い出して欲しい まだやり直せることを

 もし君が今も愛の力を信じているのなら

 

 君の代わりになってくれる誰かを

 見つけることだってできるのかもしれない

 だけど、君みたいに僕の心を動かせる人はいない

 ああ、今だけはさよならを言うよ、

 でももし君がまだ僕を思っていることに気づいたら

 ただ呼んでくれればいい、だっていつも君のためにここにいるから

 

    ああ、だから、君の気持ちがまた変わることがあったら

 思い出して欲しい まだやり直せることを

 もし君が今も愛の力を信じているのなら


 君が何をやったって 変えることはできないんだ

 心の深いところにあるこの思いを

 僕が行ってしまう前に 君にわかってもらわなきゃ

 遅かれ早かれ、いつかはわからないけど

 僕は君をこの腕に取り戻すのさ

 

    だから、君の気持ちがまた変わることがあったら

 思い出して欲しい まだやり直せることを

 もし君が今も愛の力を信じているのなら     "        (拙訳)

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I can still recall when we said that our love was forever
All those plans we made for tomorrow that looked so bright
Ah, and I understand all the reasons you gave me for leaving
But that doesn't help when I'm sleeping alone each night

Ah, so if you ever have a change of heart
Just remember it's not too late to start
If you still believe in what love can do

I could find someone more than willing to be your replacement
But there's no one else who can move me the way you do
Ah, so for now, goodbye, but if ever you find you still want me
You just call my name, 'cause I'll always be here for you

Ah, so if you ever have a change of heart
Just remember it's not too late to start
If you still believe in what love can do

Nothing you could ever do would change the things I know
Deep in my heart
So I got to make you understand before I go
Sooner or later, I don't know when
I'm gonna get you back in my arms again

And if you ever have a change of heart
Just remember it's not too late to start
If you still believe in what love can do

So if you ever have a change of heart
Just remember it's not too late to start
If you still believe in what love can do

So if you ever have a change of heart
Just remember it's not too late to start
If you still believe in what love can do

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  14歳のときに好きだった音楽がその人の人生に最も大きな影響を与えるというのは、たくさんのアーティストが口を揃えて言うことですが、僕もそれに強く同意するひとりです。

 僕の場合、14歳の時は1978年になるのですが、その年にヒットした曲は洋楽でも邦楽でもジャンルを問わず今でもよくおぼえています。

 このエリック・カルメンの「チェンジ・オブ・ハート」も、初めてラジオで流れてきた時の空気感みたいなものまで、今でも曲を聴くたびに蘇る気がします。

 彼の場合はなんといっても「オール・バイ・マイセルフ」が有名なので、ファンじゃない人はバラード作家だと思っているかもしれないですが(確かに素晴らしいバラード作家ですが)、僕にとってはE.L.Oのジェフ・リンなどと並んで、"なんてポップな曲を作れるんだろう”と、唸らされた、ポップスの達人なんです。

 

 彼はわずか2歳半で音楽学校に通いはじめ早くからピアノやヴァイオリンを学んだというクラシックのルーツと、高校時代にビートルズに衝撃を受けてビートルズのコード・ブックでギターを独学でマスターしたという”音楽的な二つの柱”があり、それが彼の作風にはっきり投影されています。

 

 まず彼は、オハイオ州の大学時代に”サイラス・エリー”というバンドを組み、1968年にエピック・レコードからシングルを一枚リリースしていますが、彼が作詞作曲したものでした。


CYRUS ERIE- Sparrow

 しかし曲はまったくヒットせずバンドは解散し、1970年に地元でやはり人気のあったバンド”The Choir”のメンバーと彼は”ラズベリーズ”というバンドを結成します。

 そして1972年、ラズベリーズのセカンド・シングル「Go All The Way」が全米5位という大ヒットを記録します。


Raspberries Go All The Way Mike Douglas Show 1974

  ラズベリーズはあと2曲のトップ20ヒットと、四枚のアルバムを残して1975年に解散してしまいます。

 

 ポップでありながらソリッドなバンド・サウンドで”パワーポップ”の代表的バンドと呼ばれるラズベリーズはアーティストからの人気も高く、ブルース・スプリングスティーントム・ペティ、キッスのポール・スタンレー、ガンズのアクセル・ローズなどが、彼らを好きだったと公言しています。

 そして1975年12月にソロデビューし、リリースした「オール・バイ・マイセルフ」が全米2位の大ヒットになります。 

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 続くセカンド・シングル「恋にノータッチ」も全米11位とスマッシュヒットを記録しました。

 1977年リリースのセカンドアルバム『雄々しき翼 (Boats Against the Current) 』からは「愛をくれたあの娘(She Did It)」が全米23位まで上がっています。

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 そして、この「チェンジ・オブ・ハート」は彼の同名のサード・アルバムからのファースト・シングルで、1978年に全米19位まであがっています。

 

 ポップな曲ではありますが、クラシカルなバラードとバンド・サウンドのポップスという彼の音楽的な2本柱のどちらにもあてはまらない、都会的なグルーヴを感じさせる曲になっています。AORが人気だった当時の流行を意識した曲だったのでしょう。

 実はこの曲はもともと、オーストラリアの女性シンガー、サマンサ・サングのために書いたものだったのです。サマンサ・サングはビー・ジーズが手がけた「愛のエモーション(Emotion)」が当時大ヒットしていました。

 彼女の歌う「チェンジ・オブ・ハート」は「愛のエモーション」が収録されているアルバム「ときめきへの誘い(Emotion)」に収録されています。


Samantha Sang -Change Of Heart

 彼女のヴァージョンもエリックと同じ1978年リリースで、サマンサが1月リリース、エリックが9月リリースなので、彼女のブレイクを受けてエリックも自分でやることに決めたということなんじゃないかと考えられます。

 ちなみに、彼女のヴァージョンのプロデュースは、ニック・デカロなんです。 

 それからサマンサはエリックのヴァージョンにバック・コーラスとして参加。他にヴァレリー・カーター、ブレンダ・ラッセルといったソロ・アーティストとしても実績のある豪華な面々がコーラスに加わっています。

 

 クラシックの影響の濃い美しいバラードとビーチ・ボーイズビートルズフィル・スペクターに影響されたキャッチーなポップスの両方を作れたのが彼の特徴ですが、最後にアルバム「チェンジ・オブ・ハート」からもう1曲、彼の”ビーチ・ボーイズ愛”が感じられる「Someday」という曲を。

 ブルース・ジョンストン、カート・ベッチャー、ジョー・シャーメイ、ナイジェル・オルソンといった人たちの素敵なコーラスが楽しめます。


Eric Carmen - Someday 

 

 

 

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