まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ペニー・レイン(Penny Lane)」ザ・ビートルズ(1967)

 おはようございます。

 いよいよ、ビートルズの登場。曲は「ペニー・レイン」です。


The Beatles - Penny Lane

 

In Penny Lane there is a barber showing photographs
Of every head he's had the pleasure to know
And all the people that come and go
Stop and say hello


On the corner is a banker with a motorcar
The little children laugh at him behind his back
And the banker never wears a mac
In the pouring rain
Very strange


Penny Lane is in my ears and in my eyes
There beneath the blue suburban skies
I sit and meanwhile back


In Penny Lane there is a fireman with an hourglass
And in his pocket is a portrait of the Queen
He likes to keep his fire engine clean
It's a clean machine


Penny Lane is in my ears and in my eyes
Four of fish and finger pies
In summer, meanwhile back


Behind the shelter in the middle of a roundabout
A pretty nurse is selling poppies from a tray
And though she feels as if she's in a play
She is anyway


In Penny Lane the barber shaves another customer
We see the banker sitting, waiting for a trim
And then the fireman rushes in
From the pouring rain
Very strange


Penny Lane is in my ears and in my eyes
There beneath the blue suburban skies
I sit, and meanwhile back


Penny Lane is in my ears and in my eyes
There beneath the blue suburban skies
Penny Lane

 

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ペニー・レーンには、床屋があって
店主ご自慢の客の写真を飾ってる
そして行き交う人たちはみんな
立ち止まって挨拶するんだ


角の銀行には車を停めてる銀行家
その後ろで子供たちが彼を笑ってる
銀行家はレインコートを着ないんだ
雨が降りしきってるのに
すごく不思議だ


ペニー・レインが今も僕の耳に、まぶたに残ってる
あの郊外の青い空の下を
僕は座って、思い出している


ペニー・レインには砂時計を持った消防士がいて
ポケットには女王の肖像画が入っている
彼は消防車をきれいにしておくのが好きなんだ
ピカピカのマシーンさ


ペニー・レインが今も僕の耳に、まぶたに残ってる
4ペニーのフィッシュ&チップスとフィンガー・パイ
夏になると 思い出してしまう


ロータリーの真ん中にある待合所の裏で
きれいな看護婦さんがポピーをトレイに乗せて売っている
彼女は自分が芝居している気分なのかもしれないけどね
いずれにしても


ペニー・レーンで床屋が客の髭を剃っている
その銀行員が座って順番待ちしているのが見える
そして、消防士が駆け込んでくるんだ
降りしきる雨の中から
すごく不思議だ

 

ペニー・レインが今も僕の耳に、まぶたに残ってる
あの郊外の青い空の下を
僕は座って、思い出している

 

ペニー・レインが今も僕の耳に、まぶたに残ってる
あの郊外の青空の下を
ペニーレインを

                    (拙訳)

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 ペニー・レインは、ビートルズのポール、ジョン、ジョージの3人の出身地リバプールにある実在の通りです。

 歌詞に出てくる床屋も銀行も消防署もバス待合所も実際にあったものがモデルになっています。

 

 大ヒットしたりスタンダードになっているポップスには、実在の土地や場所をテーマにしたものが少なくないですよね。

 そしてリスナーはそこに行ったこともないのになんの抵抗感もなく歌に入り込めるのです。いや、かえってその場所に行ったことがない、知らない方がいいんじゃないか、という気さえします。

 「ペニー・レイン」と同じ年に発売されたビー・ジーズの「マサチューセッツ」はマサチューセッツ州があるアメリカより、ヨーロッパや日本の方がヒットしたそうですし、日本の曲でも「桜坂」(福山雅治)とか「渡良瀬橋」(森高千里)とか、その歌が大好きでもその場所には行ったことのない人の方が全然多いでしょう。

 

 ポップ・ソングの場合、具体的な名前が入った方が入り込みやすく、その場所を知らなくてもあとは想像力が自分の好きな方向に補完してくれるんでしょうね。

 故郷の通り、思い出の坂、懐かしい橋、みたいに漠然と歌われた方が意外に入り込めないことが多いものですし。

 

 

 この曲を書いたのはポール・マッカートニーです。

「僕がこの曲を書こうとすると、ジョンがやってきて、3番の歌詞を手伝ってくれたんだ、よくあるパターンさ。僕たちは子供の頃の思い出を書いていた。8年か10年前の、最近になって薄れてきた思い出だったから、その当時の最新のノスタルジーで、二人にとっての楽しい思い出だった。すべての場所がまだそこにあって、僕たちはそれをはっきりと覚えていたから、その先書き進めることができたんだ」

 (ポール・マッカートニー『メニー・イヤーズ・フロム・ナウ』バリー・マイルズ)

 

 ジョン・レノンが考えたものの一つが、"Four of fish and finger pie "というフレーズだと言われています。

「ほとんどの人は耳にしないだろうけど、"フィンガー・パイ "というのは、エッチな話が好きなリバプールの若者にとっては、ちょっといいジョークなんだ」
 (ポール・マッカートニー、「アンソロジー」)

 

 "フィンガー・パイ”は女の子とイチャイチャするような意味らしく、ネットを見ると”the banker never wears a mac”も”He likes to keep his fire engine clean”といったフレーズにも性的な裏の意味があるなんて考察も見受けられました。

 (しかし、それをいちいち和訳に反映させてしまうと、なんだか、この最高のポップソングが”猥歌”みたいになっちゃいますし、歌としても性的な意味が大事なんじゃなくて、当時の自分達若者はこんなスラングを使っていた、というノスタルジックな意味合いが強いので特にそれに寄せて訳すことはしませんでした)

 

 この当時ジョンとポールは別々に歌を作ることが多くなっていたようですが、共通の思い出の場所が舞台の歌ということで、二人が十代の若者の気持ちに戻って、束の間一緒の思い出を辿るように歌詞を書いたということなんでしょうね。

 

  この「ペニー・レイン」はジョン・レノンが作った「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」と両A面シングルとして 1967年2月に発売され、全米1位、全英2位を記録しています。

 ビートルズのプロデューサーのジョージ・マーティンは史上最高のシングルと言っていたそうですが、僕も異論はありません、、、。

 

 この年の夏にビートルズは「サージェント・ペパーズ」を発売するわけで、ビートルズ、中でもポップス史上最高の才能、ポール・マッカートニーのポップ・センスがまさに爆発した年だったわけです。

 

 シーンを見ても「君の瞳に恋してる」(フォーシーズンズ)、「デイドリーム・ビリーバー」(モンキーズ)、「ビートでジャンプ」(フィフス・ディメンション)、「グルーヴィン」(ヤング・ラスカルズ)、「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」(マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル)など、ポップス史に残る大傑作が作られたのが1967年でした。

 

 ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」、ビートルズの「リボルバー」のリリースが前年の1966年ですから、1966~1967年にかけてコマーシャルな大衆性とアーティスティックな実験性が奇跡的に融合できたポップソングがたくさん生み出されたわけです。1966~1967年というのは音楽的なクオリティという観点からしたらポップスのピークに達した時代だったのかもしれません。

 

  ポールやブライアン・ウィルソンのような天才に触発された他の才能も一斉に進化し始める、そういう大きな化学反応が連鎖的に起こっていったのは間違いないのではないでしょうか。

 

 

 ここで、私事で恐縮なんですが、「ペニー・レイン」を初めて聴いたのは小学生4年くらいでした。ビートルズが好きだった兄がほぼ無理やり聴かせた何曲かのうちのひとつでしたが、その時聴きながら無性に心が浮き立つような感じになって、それがすごく新鮮な感動だったことを今でも覚えています。思えば、初めてのポップス体験、僕のポップスのルーツ、すなわちこのブログの根っこにあるのが「ペニー・レイン」だったんです。

 

    10歳の子供が楽しい気分になる親しみやすい曲なのに、今相当な大人になっても相変わらず全然聴き飽きない、曲がいいだけじゃなく、音楽的にきめ細かな仕掛けが施されています。

 この時代のビートルズは、サウンド、アレンジが本当に神がかっていると思います。

 

 最後は両A面シングルのカップリング「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を。こちらはジョンの作品。こちらも実在の場所、ジョンが幼年期に過ごした家のそばにあり、遊び場だった戦争孤児院「Strawberry Field」がモチーフになっているそうです。

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