まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ガール・イズ・マイン(The Girl Is Mine)」マイケル・ジャクソン&ポール・マッカートニー(1982)

 おはようございます。

 今日はマイケル・ジャクソンポール・マッカートニー「ガール・イズ・マイン(The Girl Is Mine)」です。

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Every night she walks right in my dreams
Since I met her from the start
I'm so proud I am the only one
Who is special in her heart


The girl is mine
The doggone girl is mine, m-m-m
I know she's mine
Because the doggone girl is mine m-m-m


I don't understand the way you think
Saying that she's yours, not mine
Sending roses and your silly dreams
Really just a waste of time


Because she's mine
The doggone girl is mine
Don't waste your time
Because the doggone girl is mine


I love you more than he
(Take you anywhere)
Well I love you endlessly
(Loving we will share)
So come and go with me
To one's town

 

But we both cannot have her
So it's one or the other
And one day you'll discover
That she's my girl forever and ever


Don't build your hopes to be let down
'Cause I really feel it's time
I know she'll tell you I'm the one for her
'Cause she said I blow her mind

[Hook: Michael Jackson]
The girl is mine
The doggone girl is mine
Don't waste your time
Because the doggone girl is mine

[Refrain: Michael + Paul]
She's mine, she's mine
No, no, no, she's mine
The girl is mine, the girl is mine
The girl is mine, the girl is mine
The girl is mine (mine, mine); yep, she's mine (mine, mine)
The girl is mine (mine, mine); yeah, she's mine (mine, mine)

 

Don't waste your time
Because the doggone girl is mine
The girl is mine, the girl is mine


Michael, we're not going to fight about this, okay?
Ha, ha, Paul, I think I told you I'm a lover, not a fighter
Eh, I've heard it all before, Michael
She told me that I'm her forever lover, you know, don't you remember?
Well, after loving me she said she couldn't love another
Is that what she said?
Yeah, she said it; you keep dreaming


(I don't believe it!) (Mine, mine)
(No, no, no) The girl is mine (Mine, mine, mine)
(No, mine) No, mine (Mine, mine)
(She's mine, mine, mine, mine, mine) (Mine, mine, mine)
'Cause the girl is mine
(No, the girl is mine) (Mine, mine)
The girl is mine (Mine, mine, mine)
(No, the girl is mine)
The girl is mine (Mine, mine)
(No, she's mine)

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毎晩、彼女は僕の夢にまっすぐ現れる
最初に出会ったときからさ
すごく誇らしいよ
僕が彼女の心の中で特別な
たった一人の存在だってことに


あの娘は僕のもの
まさにあの娘は僕のものさ
彼女は私のものだ
だって、あの娘は私のものだから 


キミの考え方は理解できないよ
彼女はキミのもので 僕のものじゃないと言う
バラの花とキミのくだらない夢を送るなんて
本当にただ時間の無駄さ


だって、彼女は僕のもの
まさにあの子は僕のもの
時間を無駄にしないで
だって、まさに彼女は僕のもの

 

ヤツよりもキミを愛してるよ
(どこにでも連れてゆく)
終わることいなく愛するよ
(愛を分かち合って)
だから僕と一緒に行こうよ
僕らの街へ

 


だけど、彼女を共有するなんてできない
だから、どちらか一方さ
そしてある日キミは気づくんだ
彼女は永遠に僕のものだってね


がっかりするために期待をふくらませないで
だって、もうはっきりする頃さ
僕が彼女の運命の人だって彼女は言うはずさ
だって、僕に夢中だって言ったんだから


あの娘は僕のもの
あの、娘は僕のものなんだ
時間を無駄にしないで
だって、あの、娘は僕のものさ


彼女は僕のもの、僕のものさ
違う違う、僕のものさ
彼女は僕のもの、僕のものさ
彼女は僕のもの、僕のものさ
彼女は僕のもの、僕のものさ

 

時間を無駄にしないで
だって、あの、娘は僕のものさ
あの娘は僕のもの 僕のものさ


マイケル、このことで、喧嘩しなくてもいい、そうだよね?

ハ、ハ、ポール、僕はキミに僕は恋人で、戦う人じゃないって言ったよ

えー、前にも聞いたことがあるよ、マイケル
彼女は僕が永遠の恋人だと言ったんだ、覚えてないの?

僕を愛した後で、彼女は他の人を愛せないと言ったんだ

彼女がそう言ったのか?

そうさ、彼女は言ったんだ。キミは夢を見続けているのさ


(信じられない!)(僕のもの)
(いやいや) あの娘は僕のものだ(僕のもの)
(いや僕のだ) 違う、僕のだ (僕のもの)
(彼女は僕のもの、僕のもの、、、) 
だって、あの娘は僕のもの
(違うよ、あの娘は僕のものさ)
あの娘は僕のもの (僕のもの、、)
(いや、あの娘は僕のもの)
あの娘は僕のものは (僕のもの、、)
(いや、あの娘は僕のもの)

             (拙訳)

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 ポップ・ミュージック史上最高のソングライターとパフォーマーの夢の共演ですね。

 

 二人の本格的な共演が始まる前に、ある曲のキャッチボールが行われていました。

それが「ガールフレンド」です。アルバム「ロンドン・タウン」(1978)に収録されています。

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 1976年6月、ビバリーヒルズでのパーティーで、ポールとマイケルは2度目の対面を果たします。マイケル・ジャクソンは次のように語っていたそうです。

 

「たくさんの人がいる中で握手をして、『あのね、君のために歌を書いたんだ』と言われたんだ。僕はとても驚いて、彼にお礼を言った。そして、彼はそのパーティーで「ガールフレンド」を僕に歌ってくれたんだ。それで電話番号を交換してすぐに会う約束をしたんだけど、おたがいに違うプロジェクトや生活が邪魔をして、それ以来2、3年話ができなかった。結局、彼はこの曲を自分のアルバム『ロンドン・タウン』に収録することになったんだ」

(the Paul McCartney project)

 

  しかし、その翌年(1979)にマイケルは自身のアルバム「オフ・ザ・ウォール」でこの曲をすかさずカバーしています。

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 そして、二人の共演になるわけですが、マイケルから電話があったようです。

「マイケルから電話があって」とポール。「一緒に仕事をしたいと言われたんだーぼくは「どういう意味だい?」と訊いた。そしたら「ヒットがほしいんだ、わかるだろ?」

と言ってきたんで、ぼくは「悪くないね」と答えた。それで彼が訪ねてきたのさ。

 ロンドンにあるぼくのオフィスの上の階であれこれおしゃべりしてるうちに、ぼくがギターを手に取ってね。<セイ・セイ・セイ>はそこから生まれた」

(「ポール・マッカートニー 告白」)

 

「セイ・セイ・セイ」は「ガール・イズ・マイン」のヒットの翌年、1983年にリリースされていますが、作られたのはこちらが先で録音は1981年の4~5月に行われていました。

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 このときに「The Man」という曲も一緒に作っています。

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 ポールはこう回想しています。

「あの段階でのマイケルはまだ、ソングライターとも言えなかった。それよりはまずボーカリストであり、ダンサーだった」

 (「ポール・マッカートニー 告白」)

 

 この2曲はポールのアルバム用にキープされ、1983年リリースの「パイプス・オブ・ピース」に収録されることになります。

 そしてその2曲が寝かされている間、マイケルは自分のアルバム用にポールをゲストに招きます。

 そして録音されたのがこの「ガール・イズ・マイン」でした。

 世界で一番売れたアルバム「スリラー」からのファースト・シングルで全米2位までいった曲ですが、「今夜はビート・イット」「ビリー・ジーン」「スリラー」といった、”キャラ立ちのすごい”曲の印象が強いせいで、”忘れられがちな曲”でもあります。

 

 プロデューサーのクインシー・ジョーンズは自伝の中でこう言っちゃってます。

「<ガール・イズ・マイン>は前置きのようなものだった」

 

 じゃあ、なぜファーストシングルに選ばれたかといえば、当時のアメリカはR&Bシーンと、ポップ・シーンの間には大きな壁があって、アルバム「オフ・ザ・ウォール」でその壁を超えたばかりの彼には、まずポップ・シーンにアピールする曲を出そうという戦略があったからです。

 

 ちなみに、この曲は”共演”ではあっても、”共作”じゃないんですね。マイケルの単独作なんです。

 

 ポールにソングライターとしてはまだまだ、と言われたマイケルでしたが、果敢にソングライティングに挑戦したんですね。

 

 「オフ・ザ・ウォール」でも「今夜はドント・ストップ」など、ダンス・ナンバーは自分で書いたものはありました。

 

 しかし、ポップ・ソングは初なんですね。

 <”キング・オブ・ポップ”が”ポップス界最高のマエストロ”の手ほどきをうけた後に、単独で書いた初めてのポップ・ソング>

 というのがこの「ガール・イズ・マイン」の存在意義、だと僕は解釈しているんです。

 

   さて、当時のマイケルのような下の世代の大スターの活躍を目にした時に、自分のようなベテランが取るべき態度として、このようなことを語っています。

 

『「ぼくにはムーンウォークはできない。でも歌や演奏ならできるし、彼にはやれないギター・ソロも弾ける」とならなきゃ駄目なんだ。無理やりにでも自分のことを、ビッグなスターたちと同じ次元で見るようにしないと。」』

 (「ポール・マッカートニー 告白」)

 

 あのポップ史上最高の天才が、このようにして自分自身を焚き付けているのか、と思うとちょっとグッときてしまいます。

 そして、彼がいつでも現役でいられる秘訣が少しわかったような気持ちになります。

 

  それから、こういう何気ないポップソングこそアレンジが難しくて、下手をすると味気ないものになりがちなのですが、その辺りはアレンジを担当したデヴィッド・ペイチをはじめとするTOTO一派、シンセを担当していたデヴィッド・フォスターと役者が揃い、スーパースター二人を全面的に前に出しつつ、非常に巧みにバックアップしていたことは特筆すべきだと思います。

 

 

 さて、この曲は2008年にブラック・アイド・ピーズのウィル・アイ・アムのリミックス・ヴァージョンが作られていますのでそちらを最後にどうぞ。

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