まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「アナザー・デイ(Another Day)」ポール・マッカートニー(1971)

 おはようございます。

 今日はポール・マッカートニーの「アナザー・デイ」です。小中高生の場合、夏休みが終わって普通なら今日(9月1日)から また「アナザー・デイ(いつもと同じ日)」が始まるわけですが、今年は違っているようですね。そして、この歌詞のように毎日毎日慌ただしくオフィスに通う人も減っているのでしょう。

「アナザー・デイ」の意味自体が変わってしまった年になってしまった気がします。

 


Another Day (Remastered 2012)

 

  "毎日、彼女は朝風呂に入って  髪を洗い

   体にタオルを巻きながら 寝室の椅子に向かう

   そう、いつもと同じ1日

   急いでストッキングをはき 足を靴に突っ込んで

   レインコートのポケットにちょっと手を入れる

   今日もいつもと同じ

 

  書類の山が増えてゆくオフィスで 彼女はちょっと休憩をとる

  もう一杯コーヒーを飲むけど 眠気はとれそうもない

  それがいつもの1日       

 

  ドゥドゥドゥドゥドゥ それがいつもの1日

  ドゥドゥドゥドゥドゥ それがいつもの1日

 

  悲しすぎる 悲しすぎる

  ときどき彼女はひどく悲しくなる

  アパートに一人きりで暮らすのだろう 

  夢の男性が現れて 魔法を解いてくれるまで
  そばにいて 彼女との約束をすっぽかさないで

  でも 彼がやってきて一緒に過ごしても 次の日には出て行ってしまう

  悲しすぎる ときどき彼女はひどく悲しくなる 

 

     "サウンド・オブ・ファイヴ”(ラジオ番組)にまた悩み相談の手紙を出すとき

  まわりにたくさん人がいて 生きるてゆくことが辛く思える 

 

 ドゥドゥドゥドゥドゥ それがいつもの1日

 ドゥドゥドゥドゥドゥ それがいつもの1日

 

  悲しすぎる 悲しすぎる

  ときどき彼女はひどく悲しくなる

  アパートに一人きりで暮らすのだろう 

  夢の男性が現れて 魔法を解いてくれるまで
  そばにいて 彼女との約束をすっぽかさないで

  でも 彼がやってきて一緒に過ごしても 次の日には出て行ってしまう

  悲しすぎる ときどき彼女はひどく悲しくなる

 

   毎日、彼女は朝風呂に入って  髪を洗い

   体にタオルを巻きながら 寝室の椅子に向かう

   それが、いつもと同じ1日

   急いでストッキングをはき 足を靴に突っ込んで

   レインコートのポケットにちょっと手を入れる

   今日もいつもと同じ                ” (拙訳) 



 歌詞の中に

    ”As She Posts Another Letter To The Sound Of Five” という一節があって

 「5時(終業)の合図のベルが鳴って、彼女は郵便物を出して(仕事を終える)」

 という感じに、あらゆる和訳がなされているのですが、「The Sounf Five」というのは60年代のイギリスのラジオ番組で、リスナーから人生相談の手紙をもらって、それについて専門家たちが意見を言い合う、ような内容だったという投稿を海外のサイトで見つけました。詳細についての”裏”は取れていないので正誤は不明ですが、お悩み相談のラジオ番組にいつも手紙を出しているという行動が、歌の主人公の孤独感とすごくしっくりする気がしたので、その方向で訳してみました。

 

 それにしても、ぱっと聴くと軽やかなポップ・ソングなのに、歌われている内容はけっこう悲しいものです。

 考えてみると、ポール・マッカートニーは、そのポップでユーモラスなイメージとは裏腹に、驚くほど冷ややかな目線で孤独を描くことがあります。 

 

 ”エリナー・リグビーは 結婚式があったばかりの教会で

 (ライス・シャワーで撒かれた)米を拾っている 夢の中に生きているんだ”

 

 有名な「エリナー・リグビー」の冒頭のフレーズですが、他人の結婚式が終わった教会に米を拾いに行く、って、なかなかポップスの歌詞で見かけることがない”容赦ない”描写です、しかも流麗なメロディに乗っかっているわけです。

 

 

 さて、「アナザー・デイ」はポールの初のソロ・シングルとして知られていますが、1969年ころにビートルズ用に書いたものだったそうです。「レット・イット・ビー」を作っていた頃です。

   「レット・イット・ビー」をリリースした年に、ソロ・アルバム「マッカートニー」をリリースしていましたが、ビートルズの解散を受けて、本格的なソロ作品を制作するために彼はニューヨークに向かいます。「ラム」というアルバムとして成就するセッションですね。

 そして、彼と組んだエンジニアがフィル・ラモーンでした。

 彼はエンジニアとして「ゲッツ/ジルベルト」などを手がけ、

 

 のちにプロデューサーとして、ポール・サイモン「時の流れに」ビリー・ジョエルストレンジャー」「ニューヨーク52番街」といった名作を残しています。

 

 ニューヨークのA&Rスタジオで、フィル・ラモーン、まさに”ニューヨーク”という環境で作られたんですね。

 ちなみに、この当時のポールのドラマー、デニー・セイウェルはこの「アナザー・デイ」を”ニューヨークのエリナー・リグビー”と評したそうです。

 

 

 ポールはこんな風に語っています。

「僕はニューヨークでフィル・ラモーンと仕事をしていた。リンダと僕は素晴らしい時間を過ごし、かなりハードに仕事をした、そして、すごく出来が良かった曲の一つが「アナザー・デイ」だった。「シングルにいいんじゃないか」と思えた一番最初の曲じゃなかったかな。それくらいシンプルなことだったんだよ、実際に」

 

 フィル・ラモーンは2013年に亡くなってしまいますが、その後ポールは自身のコンサートで彼に捧げると言ってこの「アナザー・デイ」を演奏しています。


Paul McCartney - Another Day & And I Love Her