まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「Esper」松任谷由実(1980)

 おはようございます。

 今日はユーミンの「ESPER」です。

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 彼女の場合、本当にたくさんの曲が広く知られていますが、最近では「ひこうき雲」とか「やさしさに包まれたなら」といった時の淘汰を経た”文句なしの名曲”ばかり聴かれることが多くなったような気がします。でも、昔から彼女を聴いてきた人には、いわゆる名曲の範疇には入らないかもしれないけど、たまに聴きたくなる曲がいろいろあると思います。僕の場合、彼女の軽快でポップな歌が好きだったりします。

 

 軽快でポップということでは「サーフ&スノウ」が代表的なアルバムだと思いますが、僕は「REINCARNATION」や「VOYAGER」も好きです。

 「REINCARNATION」は輪廻転生とか、今でいうスピリチャルな感じのテーマを、40年も前に、あくまでもポップ・ソングのフォーマットの中で女性の日常としっかり繋がった形で作っていることに、心から驚かされます。

 

 さて、この「Esper」で歌われている”超能力”は女子の恋愛における”念の力”や”勘”を指しています。 

 僕は正直恋愛について何か語れるほどのキャリアもなんもない男ですがw、その乏しい経験の中でも、超能力かよ?と思うような女性の恋愛における”勘”や”念の力”のすごさを感じたことが何度かあります。具体的には書きませんが(笑。

 

 そういう”摩訶不思議な恋愛念力”をはっきりと歌にしているのはこの「Esper」が史上はじめてじゃないかと思います(その後もそんなに作られていないとは思いますが)。 

 ”毛糸の編み目はくり返す呪文 やさしく縛りたいの”

 かわいらしく歌っていますが、よく考えてみると男性としてはけっこうビビるフレーズです。ただ、こういう念力には、無駄に抗おうとしないほうがいいような気もします。

 

 これは恋愛に限らずなんですが、勘とか念の力とか、最近の人間はそういう感覚がひょっとして弱くなってるんじゃないかなと思うことがあります。感を研ぎ澄ます方向じゃなく、鈍らせてゆく方向にどんどんいっているような。

 ストレスや悪い気に自分自身がやられないように敢えて感覚を鈍らせている、という面も特に大都会で働く人の場合あることなのでしょう。

  でも、第六感みたいなものを使わない暮らしというのも、何か味気なく思ってしまいます。雑念がすっと凪いだような瞬間に、ふと直感が働くという感覚は、快感でもありますよね。

 

 さて、思いっきり話が脱線してしまいすみません!

 

「ESPER」はユーミンが1980年3月にリリースしたシングル。彼女が華々しい活躍をする1980年代の幕開けを飾った曲なんです。コーラスを杉真理が手がけています。

 

 今聴き直してみると、明快でポップな曲がどんどんヒットチャートを賑わした1980年代の潮流をいち早く予測していたんじゃないかと思ってしまうような作風です。ソングライティングのシフトをガラッと変えたんですよね。

 そして、1980年の12月には、その後世の中が一大リゾート・ブームになり、自分自身が「リゾートの女王」へと変貌するのを予見するようなアルバム「SURF&SNOW」を発表しているんですから、彼女は正真正銘のエスパーなんですね。

 

 ただ、「ESPER」の関しては、世の中的にはちょっと早すぎたのでしょう。ファンの人もなかなかついていけなかったのかもしれません、オリコンチャートで最高77位と振るいませんでした(ただ、1970年代後半から「守ってあげたい」が大ヒットするまでは、彼女の場合アルバムはすごく売れても、シングルはだいたいそれくらいの順位でした)。

 

 そして、世の中が十分に”80's気分”になった1983年のアルバム「REINCARNATION」のためにこの曲を新たに録音し直して収録しています。3年前の曲なのに、書き下ろしかのようにアルバムにピタッとハマっています。「ESPER」は3年早かった曲だったわけですね。

 

 

 今回、久しぶりに「REINCARNATION」を聴き直してみましたが、いいアルバムですね。全曲いいです(彼女の場合、そういうアルバムは他にもいろいろありますが、、)。

 僕が一番多感だった(たぶんw)十代後半にリアルタイムで聴いたアルバムは「昨晩お会いしましょう」(1981)「PEARL PIEACE」(1982)「REINCARNATION」(1983)「VOYGER」(1983)あたりなので、どうしても思い入れもあるのですが、客観的に見てもどれも素晴らしいアルバムだと思います。

 当時はあれ?もうニューアルバム出るの?と思ったくらいどんどんリリースされていたイメージがあったのですが、この4作、リリース間隔が8~10ヶ月くらいしか空いていないんですよね。この頃の彼女の創作能力は本当に怖しいほどです。

 

 

 最後は、「ESPER」のB面に収録され、その後アルバム「時のないホテル」用に新たに録音された「よそゆき顔で」を。

(追記:こちらは彼女の50周年記念ベスト「ユーミン万歳!」にも収録されています。「ESPER」はシングルなのに、彼女のベスト・アルバムに収録された記憶がありません。なぜか、わかるような気もしますが、、、)

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「ESPER」「よそゆき顔で」の貴重なシングル・ヴァージョン

 

 

 

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