まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「Esper」松任谷由実(1980)

 おはようございます。

 今日はユーミン

 彼女の場合、本当にたくさんの曲が広く知られていますが、最近では「ひこうき雲」とか「やさしさに包まれたなら」といった時の淘汰を経た”文句なしの名曲”ばかり聴くことが多くなったような気がします。でも、昔から彼女を聴いてきた人には、いわゆる名曲の範疇には入らないかもしれないけど、たまに聴きたくなる曲がいろいろあると思います。僕の場合、けっこう彼女の軽快でポップな歌が好きだったりします。

 

 軽快でポップということでは「サーフ&スノウ」が代表的なアルバムだと思いますが、僕は「REINCARNATION」や「VOYAGER」も好きです。

 輪廻転生とか、今でいうスピリチャルな感じのテーマでも、あくまでもポップ・ソングのフォーマットの中で女性の日常としっかり繋がった形で作られていて、ほんとにすごい人だなと思います。

 さて、シングル発売され、その後「REINCARNATION」にも収録されていた、この「Esper」で歌われている”超能力”は女子の恋愛における”念の力”や”勘”を指しています。 

 僕は正直恋愛について何か語れるほどのキャリアもない男ですが、その乏しい経験の中でも、超能力かよ?と思うような女性の恋愛における”勘”や”念の力”のすごさを感じたことが何度かあります。具体的には書きませんが(笑。

 そういう”摩訶不思議な恋愛念力”をはっきりと歌にしているのはこの「Esper」が史上はじめてじゃないかと思います(その後もそんなに作られていないとは思いますが)。 

 ”毛糸の編み目はくり返す呪文 やさしく縛りたいの”

 かわいらしく歌っていますが、よく考えてみると男性としてはちょっとビビるフレーズです。ただ、こういう念力には、無駄に抗おうとしないほうがいいような気もします。

 

 これは恋愛に限らずなんですが、勘とか念の力とか、最近の人間はそういう感覚がひょっとして弱くなってるんじゃないかなと思うことがあります。発揮する場が減っている、発揮しなくても、スマホでちゃんと情報を集めて分析して活用すれば問題なく生きていける、ということかもしれないですが。

 あと、へんに感覚を研ぎ澄ましてしまうと、ストレスや悪い気がいっぺんに入ってきそうなので、サバイバルするために敢えて鈍らせている、ということもあるでしょう。

  でも、第六感みたいなものを使わない暮らしというのも、何か味気なく思ってしまいます。雑念がすっと凪いだような瞬間に、ふと直感が働くという感覚は、快感でもありますから。

 

 僕は中高年男性ではめずらしいとは思いますが、神社では本気でお祈りしますし、占いもけっこうチェックします。スピリチュアルな本もたまに読んだりもします。

 ただ、そういう理屈で説明できないような世界を、現実生活と対比するものとしてとらえて、そっちに頼りすぎるのもどうかな、と思っています。

 あくまでも普通の生活があって、その延長線上に、人知を超えたような、でも長い間信じられてきたものがある。ふだんの視線のフォーカスはあくまでも日常生活に合わせている、でもたまに俯瞰するとそのまわりの境界線は、神秘的な何かとグラデーションを作っている、そういうイメージでしょうか。

 自分の理解を超えたものを信じすぎたり、たよりすぎるのはとても危険ですが、逆に自分の理解できないものは頭から信じないというのは、不遜というか、もしくは恐怖心の裏返し、のようにも思えます。自分が理解できないことがある、という事実を無意識に怖れる、男性の場合多い反応かもしれません。

 僕が思うに、”そういうことも、きっとあるのかもなあ” くらいが”いいあんばい”じゃないでしょうか。

 そういう意味では、日常的なポップソングなのに、理屈を超えた”念の力”をすごく自然に組み入れることに成功している「Esper」は、本当にレアな曲だと思います。

 

 


ESPER シングル

 

ESPER (single version)

ESPER (single version)