まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「いつもあなたと(I'll Be Around)」スピナーズ(1972)

   おはようございます。

   今日はスピナーズの「いつもあなたと」を。

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This, is our fork in the road
Love's last episode
There's nowhere to go, oh no

You made your choice, now it's up to me
To bow out gracefully
Though you hold the key, but baby

Whenever you call me, I'll be there
Whenever you want me, I'll be there
Whenever you need me, I'll be there
I'll be around

I, knew just what to say
Now I found out today
That all the words had slipped away, but I know

There's always a chance
A tiny spark will remain, yeah
And sparks turn into flames
And love can burn once again, but I know you know

Whenever you call me, I'll be there
Whenever you want me, I'll be there
Whenever you need me, I'll be there
I'll be around, yeah

Whenever you call me, I'll be there
Whenever you want me, I'll be there
Even if I have to call, I'll be there
I'll be around

Just call me on the phone, I'll be there
I'll never leave you alone, I'll be there
Just call out my name you know I know you know
I'll be around

I'll be skipping and jumping, I'll be there
I'll be a-rippin' it up, I'll be there
I'll be calling out your name to let you know
I'll be around

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これが、僕たちの分かれ道

愛の最後のエピソード

もうどこにも行く場所はないんだ

 

君は選択した、

潔く身を引くかは 僕にかかっている

君がその鍵を握っているけど

だけど、ベイビー

 

君が呼んだらいつでも、すぐに行くよ

僕にいて欲しいならいつでも すぐに行くよ

僕が必要ならいつでも そこに駆けつけるよ

 

僕は なんて言うべきか知っているよ

言える言葉は全部消えてしまったと今日わかったんだ

だけど、

いつもチャンスはある

小さな火花は消えないんだ

火花は炎になり 愛をもう一度燃え上がらせるんだ

だけど君もわかっているはず

 

君が呼んだらいつでも、すぐに行くよ

僕にいて欲しいならいつでも すぐに行くよ

僕が必要ならいつでも そこに駆けつけるよ


ただ電話してくれれば そこに行くよ

君を一人にはしない そばにいるよ

僕の名前を呼ぶだけでいい わかるだろ

駆けつけるよ
                                                  (拙訳)

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   スピナーズは1950年代半ばにデトロイトの郊外ファーンデールでを結成されたザ・ドミンゴズというグループが母体になっています。

 1961年、当時人気のあったドゥーワップ・グループ”ムーングロウズ”のリーダー、ハーヴィー・フークワと出会い彼のレーベル、トライファイと契約。ハーヴィーはマーヴィン・ゲイの恩師としても知られています。

 トライファイがモータウンに買収されたことにより、彼らはモータウンのアーティストになりますが、ヒットがなかなか出ず、テンプテーションズやフォートップスといった人気グループの陰に隠れた存在になってしまいます。

 

 そして1972年にアトランティック・レコードに移籍。それにはアレサ・フランクリンの推薦があったと言われています。

 しかしメンバーのうち、GCキャメロンがモータウンの社長ベリー・ゴーディーの姉とつきあっていて、契約の問題もあったことから、彼だけモータウンの残留し、かわりに自分の従兄弟であったフィリッペ・ウィンを推薦してメンバーにします。

 

 移籍後彼らはジミー・ローチというプロデューサーと作業しますがうまくいかず、その代わりに目をつけたのが、トム・ベルでした。

  彼はデルフォニックスやスタイリスティックスといったグループをヒットさせて勢いに乗っていました。流麗なストリングスと躍動感のあるリズムセクションが印象的な”フィラデルフィア・ソウル”のサウンド面での生みの親ともいうべき存在でした。

 

 フィラデルフィア・ソウルというくらいですから、フィラデルフィアにトムが使っているスタジオもミュージシャンもいましたから、スピナーズの面々はフィラデルフィアに飛んでレコーディングしたわけです。

 

  当初、トム・ベルが彼らのために用意した曲はこの2曲でした。 

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 デルフォニックスやスタイリスティックスで有名になった彼ですから、やはりバラードを用意していたんですね。

 

 そして、この「いつもあなたと」は思いがけないかたちで生まれます。

 トムがスタイリスティックスのレコーディングをしている時に、パーカッショニストのヴィンス・モンタナが"君は昔のドゥーワップのような3コードのシンプルな曲が書けないんだろう”と言ってきたのです。音楽的にレベルの高い彼に対し、逆にシンプルなものはできないだろうとからかったわけですね。

 その挑発に乗ったトムは夜オフィスに戻り、ピアノに向かって3つのコードで曲を作り始めます。

 そして、Eメジャー7、Gシャープマイナー、Fシャープメジャー6の3つのコードで作ったのがこの「いつもあなたと」だったのです。

 

 トムはこの曲はスピナーズのボビー・スミスに合うと思い、彼らに用意した2曲の”保険”としてレコーディングしようと考えました。

 

 そして、この曲のレコーディングで彼はドラマーのアール・ヤングに2拍目と4拍目を強調するよう指示を出します。

 そう、2拍目と4拍目を強調するビートとは、ディスコからEDM、昨年大ヒットしたBTSの「Dynamite」まで脈々と続く、最強のダンスビートです。

 

 トムはこう語っています。

「これがフィリー(フラデルフィア・ソウル)のダンスビートの始まりで、その後に登場する多くのディスコ・ヒットに採用されていったんだ」

 (THE WALL STREET JOURNAL June 18, 2017)

 

 「いつもあなたと」以前にももちろんそういうパターンのビートの曲はあったわけですが、現在にも続くダンス・ビートの直接のルーツになると、源流はさかのぼるとこの曲になるのかもしれません。

 

  それから、この「いつもあなたと」のダンスビートについて、もう少し説明すると2拍目と4拍目でスネア・ドラムとフロア・タムを同時に叩くことによって強調していたそうです。

 そして、バスドラムは1拍目と3拍目に2回、2拍目と4拍目に1回叩いています。トトトン、トトトンって感じですね。こうすることで、ミディアム・テンポでもグルーヴが生まれるんですね。

 このパターンはフィラデルフィア・ソウルの曲でよく見受けられます。

 

 さて、最初この曲は、トムが最初に用意したバラード曲「How Could Get You Run Away」のB面として発売されましたが、DJたちは「いつもあなたと」を気に入ってかけたらしく、途中からA面に差し替えてリリースしたところ大ヒットしたわけです。

 

 ここから、ディスコの流れが始まったわけですね。

 

 歌詞は、恋人たちが今まさに別れようとする局面を歌っていて、決してハッピーな歌ではありません。主人公は相手に無茶苦茶、未練があります。でも嘆いているわけではありません。いま、この局面では別れることは仕方ないと思っているふしもあります。でも、また未来にはいつかきっとまた、と執念の炎が燃えているわけです。見事なまでに往生際が悪い。でも、そこがまた何とも言えず頼もしい。

 

 

 サウンドでは、後半の間奏で弦のセクションと管楽器のセクションが同じフレーズを追いかけっこするみたいにくり返すのですが、僕はいつ聴いてもここでぐっときてしまいます。とても、短いフレーズなのに。でもここの間奏好きな人は、世界中にたくさんいる気がします。

 トム・ベルサウンドって、洗練されているのに病みつきになってしまうところがあります。

 

 それでは最後にこの曲のカバーをいくつか。

 

 スピナーズのバック・コーラスもやっていたとうテリー・ウェルズの1984年のカバー。プロデュースはルース・エンズやミキ・ハワードなどアーバンなR&Bを得意としたニック・マルティネリ。

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こちらはホール&オーツのカバー。

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