おはようございます。
今日はエルトン・ジョン。
「ボヘミアン・ラプソディ」の監督が手掛けた彼の自伝映画「ロケット・マン」が8月に日本で公開されることも決まって、再び脚光を浴びそうなアーティスト。レコードとCDの総売り上げは、ビートルズ、プレスリー、マイケル・ジャクソン、マドンナに次いで史上5位で、シンガー・ソングライターとしては最も成功した人だと言ってもいいでしょう。
さて、数知れぬほどの大ヒット曲を書いた人なのに、今回取り上げたのは彼の自作ではありません。
1970年代半ば、出す曲出す曲大ヒットして全盛期を迎えていた彼ですが、スランプに陥っていったたようで、今までの制作パターンを一新して、他の人の曲、プロデュースでアルバムを作ることにします。1977年のことです。
そこで白羽の矢が立った、トム・ベルは、昨日このブログで紹介しましたがスピナーズなどを手がけた、フィラデルフィア・ソウルのプロデューサー(アレンジャー、コンポーザー)です。
当時もっとも売れていたアーティストであるエルトンが、プロデュースをしてほしいと強く思うくらい、トム・ベルの作品というのは魅力的だったんですね。
しかし、ずっと同じ環境で制作してきた彼には、相当勝手が違う現場だったのかもしれませんが、意思疎通がうまくいかず、フル・アルバムは完成しないままお蔵入りしてしまいます。
ただ、1979年にそのうち3曲を収録したシングルをリリースし、「キャント・バイ・ユー・ラブ」という、フィラデルフィア・ソウルというより、かなりエルトンに”寄せた曲”がアメリカでスマッシュ・ヒットしました。そしてこの「恋にご用心」はイギリスでシングルになりましたが、最高42位とエルトンとしてみたら大惨敗という結果に終わってしまいました。
ちなみに、この曲にはスピナーズのメンバーがコーラスで参加していて、同じ年にスピナーズのヴァージョンもリリースされています。
それから月日は流れ、クラブ・シーンでこの曲がDJから人気を集めるようになります。イギリスは昔から、アメリカのR&Bの中でも洗練されたものを好む傾向があって、フィラデルフィア・ソウルも人気が高いジャンルです。
そして、2003年、DJでトラックメイカーのアシュリー・ビードルがこの曲のリミックス・ヴァージョンを作ると、イギリスでTVのサッカー番組で使われたりしたこともあって、イギリスでNo.1ヒットになりました。
リアルタイムではコケたのに、24年後にNO.1になったわけです。ポップ・ミュージックというのはこういうことが起こるから面白いですね。
まあエルトンの場合は、仮にこの曲の大ヒットがなくてもちっとも困らないくらい稼いでいるわけですけど、長く続けているから、こういう奇跡的なことも起こったわけですよね。
大きく成功している人はいい時期悪い時期の波が極端な形として出るのでわかりやすいですが、普通に暮らしている人でも、忘れたころに思いもよらなかった形で人から評価されるなんてこともありますよね。
”タイミング”は、自分では操作できるものではないし、あてにしてはいけないものでしょう。できるのは、なるべく長く続けること、その過程で結果を期待しすぎないこと、でしょうか。そして、できれば自分の周りの”波”をいつも感じておくことができているといいなあ、と思います。
Elton John - Are You Ready For Love