まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「君に愛されたい(I'm Gonna Make You Love Me)」ダイアナ・ロス&ザ・スプリームス/ザ・テンプテーションズ(1968)

 おはようございます。

 今日はモータウンの看板グループ、ダイアナ・ロス&ザ・スプリームスとザ・テンプテーションズが共演した「君に愛されたい」です。


"I'm Gonna Make You Love Me" Diana Ross & the Supremes and The Temptations

 

 "君のためにできることは何だってするよ

   女の子が男にして欲しいものは何でもね

   僕は自分を君に捧げよう 君のためなら過ちも犯してもいい

 

  毎分、毎時間ごとに    君に愛と愛情を浴びるよ

  見てごらん 君に向かってくるんだ

 

 そして、君からも愛されるようになる

 そうさ、きっと、そうさ、きっと

 君からも愛されるようにしてみせる

 そうさ、きっと、そうさ、きっと

 

 あのね!

 私の愛は強いの わかるでしょ

 私に飽きたりなんか絶対にさせない

 本に書いてあるあらゆるトリックを使ってね

 あなたを夢中にさせるために本気でやってみるわ

 

 毎晩 毎日 こう言うの

 あなたは私のもの あなたを私のものにするの

 気をつけてね だってあなたは私のものになるんだから

 あなたからも愛されるようになる

 そう、きっと そう、きっと

 あなたからも愛されるようにするの

 そう、きっと そう、きっと

 息をするたびに 一歩前に進むごとに

 あなたに近づいていくの ベイビー もっと近くに

 離れ離れの毎日で胸の鼓動が響くたびに

 むなしく過ぎてしまった時間を渇望してしまうんだ


 毎晩 毎日 こう言うんだ

 君は僕のもの 君を僕のものにするんだ

    見ているがいいよ だって君は僕のものになるんだから


    そして、君からも愛されるようになる

 そうさ、きっと、そうさ、きっと

 君からも愛されるようにしてみせる

 そうさ、きっと、そうさ、きっと   "                    (拙訳)

 

 

 モータウンの男女看板グループの夢の競演ですね。

 しかし、今回僕が注目したいのは曲の作者なんです。

   ケニー・ギャンブル&レオン・ハフ、”フィラデルフィア・ソウル”の生みの親ですね。

 

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 彼らは1971年に”フィラデルフィア・レコード・インターナショナル(PIR)”を創設し、PIRは”第2のモータウン”とも称されるわけですが、その以前にモータウンの大ヒット曲を手がけていたんですね。

 

 そして、彼らと共作しているのがジェリー・ロス。連日このブログに登場していますね。

 キースやスパンキー&アワ・ギャングなど、ポップス・マニアが夢中になるセンスのいいポップスを数々生み出し、「サニー」のようなスタンダードも手がけ、「ヴィーナス」のような”エグい”ヒット曲を海外から発掘してきた彼ですが、偉大な才能を発掘した人でもあったのです。

 そう、ギャンブル&ハフを見つけ、育てたのがジェリー・ロスです。フィラデルフィア・ソウルのもう一人の大プロデューサー、トム・ベルも彼が道を開いてあげています。

 歌手を夢見ていたケニー・ギャンブルがまだ17歳のときに、ジェリーに出会い彼のオフィスに入り浸っていたそうです。

 そして、彼の仲間であったトム・ベルと”ケニー&トミー”というデュオを結成、ジェリーの作ったインディー・レーベル”ヘリテッジ”から1962年にシングルをリリースしています。


I'll Get By Without You - Kenny & Tommy

   この曲のバッキングには、レオン・ハフのほか、ボビー・マーティン、ボビー・エリなど後のフィラデルフィア・ソウルを作った人々が参加しています。

 

 また翌1963年にジェリーはギャンブルをクライヴ・デイヴィスに売り込み、自分のプロデュースでコロムビア・レコードからシングルをリリースしています。これが、ギャンブルとジェリーの共作です。


kenny gamble - you don't know what you got until you lose it

 残念ながらヒットはしませんでしたが、その後もケニー・ギャンブル&ジェリー・ロスは約10年に渡ってたくさんの曲を作っています。

  そして、ジェリー・ロスは自分の曲で気に入ったものは、いろんなアーティストで何度も録音し直すという傾向がすごく強い人です。執着心が半端ないんでしょうか(苦笑。

 このケニー・ギャンブルの「You Don't Know What You Got Until You Lose It」も後にジェリー・バトラーやボビー・ヘブにも歌わせています。

 

 そして、ジェリー自身が、自分のプロデュース作品で10回は録音させたと語っているのがこの「君に愛されたい」です。

 (なのに、もう一人の作者、ケニー・ギャンブルは自分のプロデュース作品でこの曲を一回もレコーディングしていないんだ、とジェリーはあるインタビューで力説していました,,)

 

    ジェリーがマーキュリー・レコードにA&Rとして採用され、フィラデルフィアからニューヨークに行ったのですが、レコーディングにはフィラデルフィア時代に彼が使っていたミュージシャン達を呼んでいました。その中に、ケニー・ギャンブル、レオン・ハフ、トム・ベルもいました。

    そして、その頃ジェリーとギャンブルが作ったのがこの曲で、最初に録音したのがディー・ディー・ワーウィック。ディオンヌ・ワーウィックの妹です。 

 全米88位で終わりましたが、R&Bチャートは13位まで上がっています。


Dee Dee Warwick - I'm Gonna Make You Love Me - good audio

 

 また、ジェリーのプロデュース以外ではイギリスのマデリン・ベルという女性シンガーがカバーしています。元々はダスティ・スプリングフィールドに打診されたところを彼女が蹴ったので、バックコーラスだったマデリンに話がいったのだそうです。

 リリースするとアメリカのほうで反響があり、全米26位まであがりました。


Madeline Bell - I'm Gonna Make You Love Me (1968)

 ジェリー・ロスが何度もレコーディングしたこの曲で、常にコーラスを担当していたというのがアシュフォード&シンプソンです。彼らと、のちに80年代R&Bを代表する歌姫となるメルバ・ムーアの3人は”ジェリー・ロス組”といいますか、コーラスになると必ず呼ばれていたといいます。

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 で、そのアシュフォード&シンプソンのニコラス・アシュフォードが後にプロデュースしたのが、テンプテーションズスプリームスのヴァージョンなんです。

 間違いなくアシュフォードの選曲でしょう。

 ジェリー自身がなんどもレコーディングしても大ヒットできなかった曲を、バックコーラスだったアシュフォードが大ヒットさせたわけです。

 ジェリーは常に、若い才能のために扉をオープンにしていると語っていますが、まさに、その姿勢が生んだヒットなのでしょう。

 

 ポップスの歴史を作った天才的な才能たち。いくら才能があっても、彼らは孤立したままでは花開くことは当然できなかったわけで、

 ジェリー・ロスのように、オープンな姿勢で才能を見抜き、ステップアップするチャンスを与え、才能同士を引き合わせて化学反応を起こさせる、そういうことのできる人が、見えないところで大きな役割を果たしていたんじゃないか、などと僕は思ってしまいます。