まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ブラック・ムーン」RAJIE(ラジ)(1981)

 おはようございます。

 今日はラジ(RAJIE)の「ブラック・ムーン」です。

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 僕が昔、”シティポップ感”をものすごく感じたものに、"MAXELL"のカセットテープ”UDシリーズ”のTVCMがありました。

 最初は、1980年の山下達郎の「RIDE ON TIME」。山下達郎本人が出演しているという、今考えるとものすごくレアなものですよね。

 

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 そして、翌1981年は同じ商品の新シリーズの色が黒だったことから、三人の女性シンガーに”黒”がタイトルに入った新曲を歌わせるという、画期的な企画がありました。

 

 使われたのは、吉田美奈子の「BLACK EYE LADY」、大貫妙子の「黒のクレール」、そしてラジの「ブラック・ムーン」で、三人ともCMに出演していました。

 ちなみに、「BLACK EYE LADY」は本人の作詞作曲で編曲が山下達郎、「黒のクレール」も本人の作詞作曲で編曲は坂本龍一、「ブラック・ムーン」は作詞:来生えつこ、作曲:南佳孝 編曲:井上鑑でした。

 

 吉田美奈子だけは関連動画がなかったのですが、大貫妙子のCM動画はこちらになります。

 

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 「黒のクレール」、すごくいい曲ですのでフルでもどうぞ。

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そして、ラジのCM動画がこちら

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 ラジは吉田美奈子大貫妙子に比べてしまうと知名度は落ちてしまいますが、吉田、大貫がシティポップの枠を超えた存在になってしまったのに対し、彼女の作品群はシティポップというフォーマットに見事にリンクしたまま、今もなお存在し続けているように思えます。

 

 また、彼女は日本のポップス史に大きな足跡を残した重要人物たちと交流していた、貴重なプロフィールの持ち主です。

 

 彼女は本名を相馬純子といい、”ラジ”というのはアメリカのNBCのTVドラマ「巨像マヤ」の主役の一人であるインド人の少年の役名からとったそうです。

 

 1973年にROWという女子高生四人組グループで「失われたもの達」(作詞:山上路夫作曲:村井邦彦)という曲でデビューしています。

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  1975年には加藤和彦高橋ユキヒロのバックアップをうけ、グループ名を”ポニーテール”に変え再デビューし、「チャンスと口紅」(作詞:阿久悠 作曲:加藤和彦)というシングルをリリースしています。

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 しかし、方向性の違いから彼女ともう一人のメンバーが脱退します(残ったメンバーは二人組になり、ムーンライダーズ一派のバックアップでユーミンの曲「二人は片思い」をリリースしています)。

 

 彼女はしばらくCMシンガーの仕事をやっていたそうですが、加藤和彦率いるサディスティック・ミカ・バンドの解散を受けて、バンドメンバーの高橋ユキヒロ、高中正義後藤次利今井裕が結成した”サディスティックス”の1stアルバム「Sadistics」(1977)のヴォーカリストの一人として抜擢され「TOKYO TASTE」と「香港戀歌」の2曲録音しています。

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 そして、同じ1977年に彼女は高橋ユキヒロと後藤次利サウンド・プロデュースでシングル「HOLD ME TIGHT」、アルバム「Heart to Heart」でソロ・デビューを果たします。

 

 昨今のシティポップ・ブームで、彼女のレパートリーの中で一番人気がこのデビュー曲。

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 もう1曲の人気曲はサディスティックスのアルバムで歌ったものを再レコーディングした「TOKYO TASTE」。デュエットの相手は南佳孝

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   南佳孝は「ブラック・ムーン」を書いていますが、彼女には「クール・ダウン」という曲を書いてデュエットしています。ラジと南は同じレコード会社で同じディレクターでしたので、彼女は”女性版”南佳孝といった狙いもあったようです。

 

 高橋ユキヒロが軸になったことで、サディスティック・ミカ・バンドYMO細野晴臣坂本龍一)、ムーン・ライダーズ、そして井上鑑が参加したことでパラシュート(林立夫斎藤ノブ松原正樹、今剛)のメンバーと、この当時の”洋楽的な日本のポップス”を作り上げたミュージシャンが勢ぞろいして、彼女のバックを固めたというのは特筆すべきことでしょう。 

 

 そして、「ブラック・ムーン」がリリースされた1981年には、日本のポップスの金字塔である、大瀧詠一の「A LONG VACATION」に彼女は参加し「Velvet Motel」でデュエットしています。

 

 シティポップ・ブームに興味を持ってさかのぼって聴き始めた人たちには、彼女は避けては通れないアーティストだと僕は思います。

 

 21世紀のシティポップを代表する歌姫、一十三十一(ひとみとい)も「ブラック・ムーン」をカバーしています。

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 最後は、彼女はジャパニーズ・シティ・ポップの象徴的作家”林哲司”作品も歌っているのでそれを紹介します。

 杉山清貴&オメガトライブの1985年のアルバム「ANOTHER SUMMER」で、杉山清貴とデュエットしている「You're a Lady,I'm a Man.」です。

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