まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「LADY PINK PANTHER」鈴木茂(1976)

 おはようございます。

 今日は鈴木茂の「LADY PINK PANTHER」です。

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 シティポップの舞台が都会からリゾートへ移ってゆく先駆けとなった作品

 

 

  はっぴいえんど解散後、単身LAで向こうのミュージシャンと渡り合いながら作ったファースト・ソロ「バンドワゴン」の次のアルバム「LAGOON」のオープニングを飾っていたのがこの「LADY PINK PANTHER」でした。

 

「そろそろバブルの足音も聞こえ始めて、世は贅沢な時代に突入していく。そんなときにライフ・スタイルだけでなく音楽でも注目されたのがトロピカル・リゾート路線。細野さんはとっくにその世界だったし、高中正義くんがトロピカルな路線のアルバム『セイシェルズ』でソロ・デビューしたのもこの頃だったね。

 

 ぼくもセカンド・アルバムの構想を練り始めたんだけど、またアメリカに行って一からやるのは精神的にも肉体的にもきついなあと思っていたところだった。ちょうどボサノヴァとかポール・サイモンとか、ソフトな音楽ばかり聴いていたので、このアルバムはハワイで録音することにした。用意していた曲も南国っぽいのが多かったしね」

  (「自伝 鈴木茂のワインディング・ロード」)

 

 はっぴいえんどシュガーベイブを起源とする街の音楽”シティ・ポップ”は1976年あたりに”夏の海”という、”第2の拠点”を見出します。その動きの先端にいた一人が鈴木茂でした。

 また、シティ・ポップではありませんが、細野晴臣の「泰安洋行」「トロピカル・ダンディ」という”トロピカル路線”が、期せずしてそれを先導するかたちになった、というのも興味深いところです。

 

 さて、この「LADY PINK PANTHER」には、彼の最も気心の知れたリズム隊、細野晴臣(ベース)と林立夫(ドラム)に、パーカッションの浜口 茂外也、ミッキー吉野の後にゴールデンカップスに在籍したことがあり、ティン・パン・アレイの「キャラメルママ」にも参加したジョン山崎、ブレッド&バター岩沢幸矢、そしてアメリカからジャズ・ピアニスト、マーク・レヴィンが参加しています。

 

 このハワイ・レコーディングの夏っぽいアルバムというのは、世の中のムードと、本人のムードが一致したことで生まれたようですが、シティ・ポップという視点で見直した時に、南佳孝の「忘れられた夏」とともに、「LAGOON」は ”街から海へ”という舞台の移動を先駆けた作品になっています。

 

 そして、シティポップの原点とされる”はっぴいえんど”のメンバーでソロ活動をした三人(細野、大瀧、鈴木)の中で、その動きが現在の視点でシティ・ポップ最もとクロスしているようのが彼のように思えます。

 この翌年に彼が当時の音楽シーンの流れを大きく変えた原田真二の「てぃーんずぶるーす」のアレンジを手がけたということもとても重要だと僕は思います。

(また、日本のシティポップ・ファンにとっての金字塔である大瀧詠一の「A LONG VACATION」が海外のファンからはシティポップじゃなくオールディーズだという見方もあるらしく、そのあたりは個人的にすごく興味深く思えました)

 

 最後に「LAGOON」からもう1曲。「時の流れに」あたりのポール・サイモンっぽさが強く感じられる「デビル・ゲーム」を。

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