まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「てぃーんずぶるーす」原田真二(1977)

 おはようございます。

    今日は原田真二のデビュー曲。彼の登場で、それまでの音楽シーンが一気に変わったような印象を当時の僕は持ちました。


てぃーんずぶるーす/ 原田真二

 

 この曲が出てくるまで、TVや巷でよく耳にする日本の音楽はフォーク・ソングと歌謡曲が主流でした。フォーク・ソングは四畳半フォークと呼ばれるものが人気で、僕は歌謡曲と共通するウェットな抒情的なムードを強く感じました。

 

 そこに、19歳の童顔のシンガーがピアノを弾きながら軽快で洗練されたポップスを歌って現れた。他の歌手に比べて圧倒的にあか抜けて、新しく見えました。

 前にこのブログでも書いたように1975年あたりから、細野晴臣ユーミン山下達郎などが洋楽的な都会的なポップスを世に送り出し始めていましたが、原田真二はTVに出て、当時のアイドルや歌謡曲歌手、フォーク・シンガーたちと同じ土俵に立ったので、その新しさがより際立ちました。

  しかし、プロフィールをいろいろ調べていくと原田真二のポップスの才能はデビュー前から発揮されていたわけではなく、デビューが決まってから飛躍的に伸びていったもののようです。

 

 吉田拓郎井上陽水泉谷しげる小室等の4人のフォーク・シンガーが立ちあげたのが”フォーライフ・レコード”。当時、日本で初めてアーティストが作ったレコード会社ということで大きな話題になりました。

 そのフォーライフ・レコードのオーディションにデモを送ってきたのが原田真二でした。

 デモの曲は

 「多重録音でこりまくったミキシングの音に、戦闘的な詞がかぶさっていた。”パニックだ!パニック!”だと連呼するような歌唱で、メロディラインも音楽的というよりひたすらハードで挑戦的だった」(「吉田拓郎 挽歌を撃て」)

 どんな音楽か全くイメージつかないですよね。

 5次審査まであるオーディションの1次で落ちたらしいので、少なくともまったく売れそうなものではなかったのでしょう。ただ、スタッフがおもしろがって、彼に写真を送れとコンタクトをとったのだそうです。そして、送られて来た写真には実に可愛らしい少年が写っていてスタッフは驚いたといいます。

 

 そしてそれが吉田拓郎の目に留まり、彼自らが原田をまさに”手塩にかける”ことになります。デビュー前に合宿をやった時には、拓郎は彼に筒美京平の曲を毎晩聴かせてプロの作曲家の技法を説明したそうです。

 

 最初に彼が夢中になった洋楽はモンキーズで、ビートルズよりもエルトン・ジョンのほうが好きだったそうです。また高校時代にビッグ・バンド・ジャズのギタリストをやっていて、ジャズで使うコードはその頃に身につけていました。

 洗練された洋楽的なポップスを書く”下地”は彼には十分あったわけですね。しかし彼自身は自ら望んでそういうものを作ろうとは思わなかったようで、デビューが決まり、拓郎やレコード会社のスタッフから曲を書くように言われ、いろいろアドバイスされてゆく過程でその才能が急激に開花したと思われます。

 

 「てぃーんず・ぶるーす」はデビューが決まって上京する前に地元広島で書いた曲でした。「君の世代へ」というタイトルで自作の歌詞もついていたそうで、暴走族など社会問題を反映させいていて、俺たちはこのままでいいのかという同世代へのメッセージ・ソングだったといいます。そういう風に書くと、尾崎豊と共通するような感じもしますね。

 しかし、原曲の歌詞は重いということで、もともとロック・ミュージシャンでいながら商業ベースに乗れる歌詞を書ける松本隆に依頼することになります。

 

 結果的に松本隆の歌詞は彼のメロディー、そして彼のルックスとこれ以上ないほどマッチして以降大ヒットを連発します。

 (松本隆と離れてからは、彼はどんどんスピリチュアルな方に行ってるなあと当時僕は思っていたのですが、彼が本来持っている資質はそっちのほうだったんですね)

 

 アレンジとギターは鈴木茂(弦アレンジは瀬尾一三)。ドラムスは林立夫、ベース後藤次利、キーボード佐藤準と、当時の日本で洋楽的なサウンドを作り上げたパイオニアたちが揃っていることも見逃せないところです。

 

 元々ピアノよりギターがメインの楽器だったという彼の「てぃーんず・ぶるーす」ロック・ヴァージョン。音源化されている1978年の武道館ライヴでも聴けますが、70年代後半の洋楽ロックの感じが強く出ていて、これもかなりいい出来じゃないかと思います。同じ頃にアメリカで大ブレイクしていたピーター・フランプトンをちょっと彷彿させますね。

 後半に伊東ゆかりさんとしばたはつみさんが加わりますが、なんのライヴだったんでしょうね。。ピーター・フランプトンのライヴにリタ・クーリッジとナタリー・コールがゲスト参加したって感じでしょうか、。


TEEN'S BLUES ( Rock Version) -原田真二

 

 

当時、「てぃーんずぶるーす」「キャンディ」を収録し爆発的に売れた彼のデビュー・アルバム『Feel Happy』(1978年発売)』に、その後のヒット・シングル「シャドー・ボクサー」「タイム・トラベル」、さらに「タイム・トラベル」と「ティーンズ・ブルース」のセルフ・カバー(2007年新録音)2曲を加えたアルバム。