まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「砂の女」鈴木茂(1975)

 おはようございます。 

 

 ”風まじりの 雪がすべる 浜辺に

 いなづまのような  波がとどろく"

 

    これは、冬の海を舞台にした男と女の歌です。

 冬の海とくれば本来かなり重くウェットな世界になるのが日本人の定石ですが

 この曲、歌詞は徹底してドライで、サウンドは猛烈にグルーヴィーです。

 


Shigeru Suzuki - 砂の女

 作詞は松本隆。作曲、歌は鈴木茂

 共にはっぴいえんどのメンバーでした。

 

 この頃の鈴木茂を、僕はついついジョージ・ハリスンに当てはめたくなってしまいます。

 はっぴいえんどビートルズに例えると、細野晴臣大瀧詠一はレノンーマッカートニーになります。そして、鈴木とジョージは、少し年下のギタリストというところと、バンドの中で最初は曲を書いてなかったのに書くようになり、それがまたけっこういい、なんてところが似ていると思うわけです。

 そして、バンド解散後一番最初に売れたというのも一緒です。

 この「砂の女」の入った「バンドワゴン」というアルバムは発売当時でも3万枚売れたといいますから、細野や大瀧のソロよりも売れているんですね。

 そして、このアルバムは鈴木が”はっぴいえんど”で得たものを最大限に生かした作品でもありました。

 

 ”はっぴえんど”はセカンドアルバム「風街ろまん」を発売した後、解散する話をしていたところにレコード会社からLAでの録音を提案されて、松本以外の3人は乗り気になり、サードアルバム「HAPPY END」を作りました。

 ”洋楽”を追い求めてきたメンバーにとっては、当時アメリカ録音はまたとない貴重な機会だったんですね。メンバー間の空気感はかなり悪かったようですが、メンバーそれぞれが何かを得ようと貪欲ではあったようです。

 プレイヤー志向の強い細野、鈴木にとってはもちろん吸収するものが多かったようですが、大瀧もこの時の経験を、シュガーベイブのエンジニアリングに役立てています。

 しかし、一番刺激を受けたのは鈴木だったようで、その後また一人でLAに行きセッションをいくつか試みて、アメリカでミュージシャンとして活動できるかどうか可能性を探ったそうです(やはり難しいと思ったようですが)。

 そして、再度「HAPPY END」のコーディネーターを伝って、本格的なロック・アルバムを作ろうとして、LAでレコーディングしたのが「バンドワゴン」でした。

 

 この「砂の女」はLAで偶然できたものだそうです。そのとき彼はジョージ・ハリスンのサンフランシスコでのライヴを見に行って、そこで聴いた「マイ・スィート・ロード」が耳に焼き付いてしまい、そういう感じのツーコードのイントロを弾いていたら一気に出来上がってしまったとのことです。

              (参考「自伝 鈴木茂のワインディング・ロード」)


My Sweet Load (マイ・スウィート・ロード) / GEORGE HARRISON

 「砂の女」のメロディラインは、僕にはギターソロのラインのようにも聴こえます。歌とギターの関係が2台のギターのアンサンブルのように思える瞬間があるのです。ともかく、ギタリストならではのメロディだと思います。

 また、このレコーディングの時に、歌ものが足りなくなって、国際電話で松本隆に歌詞を依頼したらしく、しかもメロディーを送る方法も時間もないから、語数だけ伝えてあとで送ってもらったと鈴木は語っています。

 LAで作られた「砂の女」も、ひょっとしたら、メロディーやサウンドの詳細を知らないまま語数に合わせて松本が作ったのかもしれない、と僕は思いたちました。

 それだと、歌詞の世界(冬の海)とサウンドの不思議なミスマッチ感が納得できるのですが真相はどうなんでしょう?

 

 *海外のミュージシャンで作った「バンドワゴン」の世界を日本のライヴで再現するために、鈴木は「ハックルバック」というバンドを結成し、そのスタジオ録音の「砂の女」も聴くことができます。


鈴木茂- 砂の女 (1975)

 

 

BAND WAGON 2008-Special Edition-

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  • アーティスト:鈴木茂
  • 出版社/メーカー: NIPPON CROWN CO,.LTD.(CR)(M)
  • 発売日: 2008/04/23
  • メディア: CD