まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「セプテンバー(September)」Earth,Wind&Fire(1978)

 おはようございます。

 今日はアース、ウィンド&ファイアーの「セプテンバー」です。


Earth, Wind & Fire - September (Official Music Video)

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Do you remember the 21st night of September?
Love was changing the minds of pretenders
While chasing the clouds away

Our hearts were ringing
In the key that our souls were singing
As we danced in the night
Remember how the stars stole the night away


Ba de ya, say do you remember
Ba de ya, dancing in September
Ba de ya, never was a cloudy day


My thoughts are with you
Holding hands with your heart to see you
Only blue talk and love
Remember how we knew love was here to stay
Now December found the love that we shared in September
Only blue talk and love
Remember the true love we share today

Hey hey hey
Ba de ya, say do you remember
Ba de ya, dancing in September
Ba de ya, never was a cloudy day

There was a
Ba de ya, say do you remember
Ba de ya, dancing in September
Ba de ya, golden dreams were shinny days

The bell was ringing
Our souls were singing
Do you remember, never a cloudy day

There was a
Ba de ya, say do you remember
Ba de ya, dancing in September
Ba de ya, never was a cloudy day

There was a
Ba de ya, say do you remember
Ba de ya, dancing in September
Ba de ya, golden dreams were shinny days

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おぼえているかい?9月21日の夜を

君の愛が偽善者の心を変えていったんだ

雲を追い払いながら

 

僕らのハートは高鳴っている

僕らのソウルが歌うのとぴったり重なる

夜の中二人でダンスしながら

星がどんな風に夜の闇を消し去ったのをおぼえているかい?

 

Ba de ya おぼえているかい?

Ba de ya 9月に踊ったね

Ba de ya 曇った日なんてなかった

 

僕の想いは君と共にあるんだ

君に会いたくて 君の心と手を握り合っているんだ

甘い語らいと愛だけ

思い出すんだ 愛がここにあることをどんな風にして知ったのか

今は12月 9月に分かち合った愛を見つけた

甘い語らいと愛だけ

僕らが交わした真実の愛をおぼえておくんだ

 

Ba de ya おぼえているかい?

Ba de ya 9月に踊ったね

Ba de ya 曇った日なんてなかった

 

Ba de ya おぼえているかい?

Ba de ya 9月に踊ったね

Ba de ya 曇った日なんてなかった

素晴らしい夢とは輝く日々のことだったんだ    (拙訳)   

 

「セプテンバー」楽譜はこちら

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 歌詞の内容は12月に9月21日のことを思い出すというものなので、12月か9月21日にアップすべきでしたね、、。

 

 さて、この曲が発売されたのはディスコの最盛期1978年で全米ビルボード・チャートでは最高8位止まりでした。僕の記憶では当時売れていたのは、インパクトの強いもっとベタなディスコ・サウンドで、それに比べて「セプテンバー」はすごくスマートな感じがしたのは確かです。そして、この曲を”新曲”として初めてラジオから流れてきた時のトキメキは、僕の音楽ファン史上最も強い記憶の一つとして鮮明に残っています。そして、当時僕は、こんな最高に楽しい曲がなんで8位なんだと憤慨したものです、、。

 (ちなみにこの曲は1978年のセプテンバー(9月)にレコーディングされ、11月に発売になっています)

 

 しかし、当時は彼らにとって一番の代表曲ではなかったこの曲ですが、時間の流れというのは正しいジャッジをくだすもので、今では世界中の誰もが知っている、彼らの文句なしに一番の有名曲になっています。

 アメリカではウェディング・パーティの定番曲らしく、わざわざ9月21日に結婚する人もけっこういたそうです。

 

  さて、この曲は、バンドのギタリストのアル・マッケイが自分のスタジオでリフからコード進行まで考えてベーシックを作って(「セプテンバー」を作った中心人物はアル・マッケイです)、そこにリーダーのモーリス・ホワイトが加わりメロディをつけ、そこにモーリスから声をかけてもらって初めて参加した女性ソングライターのアリー・ウィリスがモーリスと一緒に歌詞を考えたそうです。

 

 アリー・ウィリスはこう回想しています。

「私の友人が、当時アース・ウィンド&ファイアーのベーシストで、現在はグループのリーダーであるモーリス・ホワイトの弟、ヴァーダイン・ホワイトと友人だったの。 彼女(友人)が、ヴァーダインが当時プロデュースしていたPocketsというグループと、彼が最終的に結婚することになるShellyというソロシンガーのために、彼と一緒に作曲するように仕向けてくれたのよ。 それで、彼らのために曲を書いていたら、初日から "兄にお前のことを話してやる "と言われたの。

 

 当時、私は飢えたソングライターで、フードスタンプ低所得者向けに行われている公的な食料費補助対策)とメディキャル(当時カリフォルニアにあった医療保険制度)で生活していたわ。アース・ウィンド&ファイアーは大好きなグループだったから、「無理!一緒にやれるはずはないわ。大物すぎる」と思った。

 でも1週間半後、電話がかかってきて、こんな会話だったわ。

 

モーリス・ホワイトだけど、次のアース・ウィンド&ファイアーのアルバムを全部一緒に書いてみる気はないか”と言われたの。

 

 それは私の人生の中で最も衝撃的な瞬間だったわ。その数秒前まで、私はフードスタンプを何に使おうかと考えていたんだから.....」

 

 

「次の日、スタジオに行った。皮肉なことに、そこは私のアパートから数ブロックの徒歩圏内だったわ。 そしてスタジオに入ると、彼らがある曲のイントロを作っていて、今まで聴いたことのないようなハッピーなサウンドの音楽が聴こえてきたの!  そして、"神様、この曲は神様が私にやらせたい曲なんだ!"と思ったのを覚えているわ。

 モーリスは私の方を向いて、他のメンバーに私を紹介し、その曲について、「"September "というタイトルにしたいんだけど、出だしは "Do you remember...... "だ」と言ったわ。

 モーリスは私に、裏打ちされたパッドから小さなシートを手渡したわ。彼はAメロの歌詞のアイデアを書き留めてたの。

"9月21日を覚えていますか..(Do you remember the 21st day of September?)."

  それで私は、"day"を "night "に変えたら、もっとロマンチックになるから......と言ったの」

      (The Library of Congress April 24, 2019

 

 ちなみに最初に彼女はモーリスから「世界最強の商人」(オグ・マンディーノ著)という本を渡され読むように言われ、LAにある「Bodhi Tree(菩提樹)」という有名なスピリチュアルな書店に連れて行かれて、そこで「世界最強の商人」で紹介されている哲学書をたくさん買ったそうです。

 一緒に曲を書くにあたって、自分の精神的な世界観を理解してもらおうというのは、いかにもモーリス・ホワイトらしいところです。そして、この本は彼女のその後の人生にも大きく影響を与えたそうです。

 彼女は基本的に歌詞を書いたと思いますが、他のアースの作品では「ブギー・ワンダーランド」、そして同曲の入ったアルバム「I am(黙示録)」では全9曲中7曲に参加しています。

 実は、僕はアースは「セプテンバー」から「I am」の時代が一番好きなんですが、彼女はサウンド的には一切貢献はしていないはずなのですが、何か化学反応みたいなものをもたらしたのかな、などと考えたりします。凡庸な言い方で恐縮ですが、彼女が加わった曲はハッピーなエネルギーの目盛りがグンとあがるんですよね。

 

 この曲の有名なコーラスは「ba-dee-ya」で、モーリスが最初から歌っていた意味のないフレーズだったそうで、アリーはちゃんと意味のある言葉に変更してほしいとずっと彼に強く主張したのですが却下されてしまいます(歌入れが終わった後も、彼女はモーリスの脚にしがみついて泣きながら懇願したそうです、、)。

 

モーリスは彼女にこういう主旨のことを言い、それがその後の彼女のキャリアに大きく影響を与えたそうです。

「彼は私のソング・ライティングに対する考え方を永遠に変えるようなことを言いました。 彼が言ったことを要約すると、歌詞がグルーヴの邪魔をしてはいけないということ。 メロディ、ビート、そしてスピリットがそこにあれば、誰もがあなたが何を言っているのか、感情的にわかるはずだと。

 私は、この信念に基づいて、これまでのキャリアを歩んできたわ。歌詞は、誰かが意味を持たせすぎたり、2音節の単語の方がいいのに4音節の単語を使ったりすることで、ぎこちなくなるの」

(The Library of Congress April 24, 2019

 

「歌詞は決してグルーヴの邪魔をしてはいけない」

 この言葉に、僕は大きく、本当に大きく、頷いてしまいます。

 今の音楽は歌詞の支配力が大きすぎるんです、、、。

 もちろん、それは時代の要請でしょう。しかし、少なくとも歌詞がメロディーやビート、曲の全体までも支配してしまっているような曲からは、深い共感を得ることはできても、決して音楽的高揚感、<自分を日常から切り離して全然違う次元へと連れて行ってくれるような>幸福感を得ることは不可能だと僕は思います。

 

 

 話が脱線してしまいましたが、、

 歌詞の中で、なぜ9月21日なのか?9月21日に何か意味があるのか?ということなんですが、これはただ、曲に9月1日から順にメロディにハメていって一番しっくりしたからということらしいです(苦笑)。

 それが今では結婚する日に指定されるというのも不思議な話ですけど。

 

 

  最後に、2014年にアース、ウィンド&ファイアーが歌詞を12月に替えた「December」というヴァージョンを作っていますので、そちらをどうぞ。


Earth, Wind & Fire - December (Official Video)

 

彼らのベスト盤なら僕はこれをお薦めします

「December」収録の彼らのクリスマス・アルバム

 

popups.hatenablog.com

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「セプテンバー」を引用した楽曲です

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