まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「長い夜(25 or 6 to 4)」シカゴ(1970)

 おはようございます。

 今日はシカゴの「長い夜」です。

www.youtube.com

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Waiting for the break of day
Searching for something to say
Dancing lights against the sky
Giving up I close my eyes
Sitting cross-legged on the floor
25 or 6 to 4

Staring blindly into space
Getting up to splash my face
Wanting just to stay awake
Wondering how much I can take
Should have tried to do some more
25 or 6 to 4

Feeling like I ought to sleep
Spinning room is sinking deep
Searching for something to say
Waiting for the break of day
25 or 6 to 4
25 or 6 to 4

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夜明けを待ちながら
何か言いことを探している
空に向かって舞う光
あきらめて目を閉じる
あぐらをかいて床に座る
4時まであと25、6分

 

わけもなく虚空を見つめる
顔を洗うために立ち上がる
ただ目覚めたままでいたい
どれだけもつのか考えながら
もう少しやってみればよかった
4時まであと25,6分

 

眠ったほうがいい気がする
部屋回転しながら深く沈んでゆく
何か言うことを探しながら
夜が明けるのを待っている
4時まであと25、6分
4時まであと25、6分

 

 (拙訳)

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 ”25 or 6 to 4”。

 このタイトルの数字をめぐって、その意味が長い間取りざたされてきました。

 6時から明け方4時まで効きめがあることからLSD「6 to 4」と呼ぶことがあったらしく、またLSDの化学組成と結びつける説もあり、その多くはこの曲を薬物と結びつけたものだったようです。

 

 タイトルの数字の意味について数えきれないほど質問されてきた、作者でシカゴのメンバーである、ロバート・ラムは2017年のインタビューではこう端的に語っています。

「"25 or 6 to 4"は、時計の針のことで、片方の針が時計の25と6の間にあって、もう片方の針が4の近くにあったときのことを歌っているんだ」

(Songwriter Universe   March 6, 2017

 

もう少し、彼の発言を探してみました。

 

「時間のことを指しているんだ。曲を書くことについての歌だ。ちょうど書いているときに時計を見たら、朝の4時まで25分だったか、26分だったか、ということ。アース・ウィンド&ファイアーのメンバーの中には、"あの曲を書いたとき、君はLSDをやっていたはず!"と言ったんだ。もちろん、僕は言ったよ。 "いやいや、君は間違っている "って。確かに、LSDの時代だったけどね」

   (BU TODAY  June 15, 2009)

 

「僕はウィスキー・ア・ゴーゴー(ライヴハウス)の近くに住んでいたんだ。ある夜、家に帰ってきて、何となくくつろいでいると、ピアノの前に座って、まだ名前も歌詞もないリフのようなものを弾き始めたんだ。たぶん30分くらいだらだらとそれを弾いてから、街を眺めると、高いビルのあかりが見えた。それが、"空に向かって舞う光 "という歌詞になったんだ」

「時間は正確にはわからなかったけど、時計の針は午前4時25、26時分前あたりだった」

「とりあえず、この曲を作る過程を書いてみよう。歌詞の内容は後で考えよう、と思ったんだ。でも、その必要はなかった」

 (abc NEWS RADIO  October 15, 2019 )

 

 さて、この「長い夜」は彼らのセカンドアルバム「シカゴII(シカゴと23の誓い)(原題:Chicago)」からのセカンド・シングルとして全米4位の大ヒットになりました。

 タイトルの意味云々関係なく、この曲の演奏はやはりかっこいいですよね。ホーン・セクションのフレーズも見事ですが、全編を通して”深夜の錯乱した感じ”を見事に表現しているギターがすごいですね。みんながこの曲を薬物を結びつけたがるのは、このギターが一番の要因じゃないか、なんて僕は思いますが。

 イントロのギターのリフに関しては、作者のロバート・ラムが考えて、ギタリストのテリー・キャスに教えたそうです。ラムはキーボーディストですが、独学でギターも弾いて時折作曲やアレンジで使ったそうです。そして、ラムが考えたリフをキャスに弾いてみせると、彼はいつも楽々と、即座にラムが望んでいたようなプレイをしてくれたといいます。

 

 ラムはこう語っています。

「書き上げた曲のほとんどは、特に初期の頃は、バンドに渡してリハーサルをするとき、それが曲が形になるときなんだ、彼らがその曲を把握したときにね」

「確かに、たくさんの手のつけていない素材があった。歌詞を書いて、コード進行を書いて、リハーサルに譜面を持ってきたときには、僕はそれが曲だと思っていたけれど、みんなが演奏するまでは本当の意味での曲ではなかったんだ」

 (https://ultimateclassicrock.com/     June 25, 2021)

 

 シカゴのようなバンドはまさに、プレイヤーたちのアンサンブルによって事実上曲が完成するんですね。

 ジミ・ヘンドリックスはシカゴの演奏を初めて見たときに、ホーンセクションは肺が1セットになって吹いているようで、ギターは俺よりうまい、と言ったそうです。70年代半ば以降バラード・バンドの印象が強くなりますが、元々は凄腕バンドだったんですね。

 最後はこの曲のライヴ映像を、テリー・キャスのギターの存在感が他を圧倒していますね。

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Chicago

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