まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「いったい現実を把握している者はいるだろうか? (Does Anybody Really Know What Time It Is?)」シカゴ(1969)

 おはようございます。

 今日はシカゴの「いったい現実を把握している者はいるだろうか? 」です。

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As I was walking down the street one day
A man came up to me and asked me what the time was that was on my watch, yeah
And I said

Does anybody really know what time it is (I don't)
Does anybody really care (care about time)
If so I can't imagine why (no, no)
We've all got time enough to cry

And I was walking down the street one day
A pretty lady looked at me and said her diamond watch had stopped cold dead
And I said

Does anybody really know what time it is (I don't)
Does anybody really care (care about time)
If so I can't imagine why (no, no)
We've all got time enough to cry

And I was walking down the street one day (people runnin' everywhere)
Being pushed and shoved by people (don't know where to go)
Trying to beat the clock, oh, no I just don't know (don't know where I am)
I don't know, I don't know, oh (don't have time to think past the last mile)
(Have no time to look around) And I said, yes I said (run around and think why)

Does anybody really know what time it is (I don't)
Does anybody really care (care about time)
If so I can't imagine why (no, no)
We've all got time enough to die

Everybody's working (I don't care)
I don't care (about time)
About time (no, no)
I don't care

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ある日、僕が通りを歩いていたら

一人の男がやってきて尋ねてきたんだ

僕の時計で何時かって?

それで僕はこう言ったんだ

 

今が何時なのか

本当にわかってる人なんているのだろうか

いったい誰がそんなこと気にかけるのだろうか

(僕は時間なんて気にしない)

もしそうなら、僕はどうしてかわからないよ

(わからない)

僕たちには声をあげて泣くのに十分な時間があるんだ

 

ある日、僕が通りを歩いていたら

ひとりの美しい女性が僕を見て

ダイアモンドの時計が全く動かなくなってしまった

って言ってきたんだ

それで僕は言った

 

今が何時なのか 本当にわかってる人なんているのだろうか

いったい誰がそんなこと気にかけるのだろうか

(僕は時間なんて気にしない)

もしそうなら、僕はどうしてかわからないよ

(わからない)

僕たちには声をあげて泣くのに十分な時間があるんだ

 

 


ある日僕が通りを歩いていると(人々はいたるところで走っている)

人々に押されて、押しのけられた(どこに行くのかもわからずに)

彼らは時計を壊そうとしている ああ、どうしてなんだ

(自分の居場所もわからない)

わからないんだ、わからないんだ(直近の過去を振り返る時間さえもなく)
(周りを見渡す時間もない)だから僕は言ったんだ
(走り回って、どうしてか考えて)

今が何時なのか 本当にわかってる人なんているのだろうか

いったい誰がそんなこと気にかけるのだろうか

(僕は時間なんて気にしない)

もしそうなら、僕はどうしてかわからないよ

(わからない)

僕たちには死ぬのには十分な時間があるんだ

 

誰もが働いている(僕は気にしない)

気にしないんだ(時間なんて)

時間なんて 気にしないんだ

                   (拙訳)

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  結成されてから50年を超えるバンド”シカゴ”の歴史はこの変わったタイトルの曲から始まりました。一番最初にレコーディングされたのが、この曲だったんですね。

 

 ロックにジャズっぽいホーン・セクションを加えた”ブラス・ロック”を代表するバンドとして有名になったシカゴはその名の通り、アメリカのシカゴで結成されました。

 

 ホーンの3人、ジェイムズ・パンコウ(Tb)、ウォルター・パラゼイダー(Sax、木管)、リー・ロックネイン(Tp) は音楽を専攻していた大学生、ロバート・ラム(Vo,Key)はニューヨークから母親と共に引っ越してきた大学生で、テリー・キャス(Vo,G)、ダニー・セラフィン(Drums)、ピーター・セテラ(Vo,Bass)は市内でカバー・バンドをやっていたそうです。

 ホーンを加えたロックバンドをやろうと発案したのが、ウォルターとテリーで、彼らがいろんな人に声をかけてメンバーを集めていきました。最初のバンド名は”The Big Thing"といったそうです。

 

 ウォルターの友人に、ジェイムズ・ウィリアム・ガルシオという人物がいて、シカゴ出身で今は西海岸で音楽業界で仕事をしていました。彼をシカゴに呼んでバンドの演奏を聴かせたところ気に入り、マネージャー兼プロデューサーになることを申し出ます。

 

 当初彼らは地元シカゴを中心にアメリカ中西部でライヴをやっていましたが、ガルシオの要請で西海岸に拠点を移し、ジャニス・ジョプリンジミ・ヘンドリクスの前座も務めたそうです。

 そして、ガルシオの尽力もあり、シカゴは1969年にアルバム『シカゴの軌跡 (The Chicago Transit Authority) 』でメジャー・デビューを果たし、その中に収録されていたのがこの「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」でした。

 

「僕はティーンエイジャーで、生まれ育ったニューヨーク、ブルックリンの通りを歩いていたんだ。映画館に通りかかると、案内係が外で一服していた。僕が彼に”ヘイ、メン、今何時だい?”ってきくと、彼は言ったんだ”Does anybody really know what time it is?”ってね。僕がビートルズ風のシャッフルの曲を作ろうとした時にそれを思い出して、Does anybody really know what time it is?'というアイディアを膨らませていったんだ」

                    (songfacts)

 

 実際にこのフレーズを言った人がいたんですね。

 「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」という思い切った邦題に対応させるように、CDの和訳が”What time it is”を「今がどういう時代なのか」と和訳しているものがあって、おお、なるほど、と思ったのですが、ただ前後の歌詞を読むと”時代”はちょっと大げさなような気がします。もちろん、僕も作者の真意はわからないですが。

 誰もが自分に与えられた時間のことなんて考えもせずに、ひたすらあくせくと動いていることを皮肉っているのでしょう。

 ただ、ロバートが実際に出会った映画館の案内係はもっと哲学的な意図で、まさに時代を意味して、”Does Anybody Really Know What Time It Is?”と言ったのかもな、などと想像したりもします。

 

 また、ロバートはレノン=マッカートニーに最も大きく影響を受けていて、この曲の曲調はサージェント・ペパーズあたりのビートルズをイメージしていたようです。

 

 さて、この曲の入った『シカゴの軌跡 (The Chicago Transit Authority) の次にセカンド・アルバム『シカゴ』がリリースされ、そこから彼らの代名詞的なヒット「長い夜」が生まれるのですが、その次のシングルとしてこの「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」が発売され、全米7位の大ヒットになっています。

 

 セカンド・アルバムから大ヒットが出た後に、ファースト・アルバムからのシングルカットが出るというのもめずらしいですが、「長い夜」の勢いで『シカゴ』だけじゃなく、『シカゴの奇跡』もあらためて売ろうということだったのかもしれません。

 

 最後はシカゴのデビュー・シングル「クエスチョン67/68」。ロバート・ラムが1967年から1968年に経験した恋愛で感じた疑問を歌にしたものです。それにしても、この頃ロバートは曲のタイトルを新奇なものにすることにこだわっていたんでしょうか、、。

 

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