おはようございます。
今日もデヴィッド・ボウイ。「チェンジズ」です。
Still don't know what I was waitin' for
And my time was runnin' wild
A million dead end streets and
Every time I thought I'd got it made
It seemed the taste was not so sweet
So I turned myself to face me
But I've never caught a glimpse
How the others must see the faker
I'm much too fast to take that test
Ch-ch-ch-ch-changes
Turn and face the strange
Ch-ch-changes
Don't want to be a richer man
Ch-ch-ch-ch-changes
Turn and face the strange
Ch-ch-changes
There's gonna have to be a different man
Time may change me But I can't trace time
I watch the ripples change their size
But never leave the stream
Of warm impermanence
And so the days float through my eyes
But still the days seem the same
And these children that you spit on
As they try to change their worlds
Are immune to your consultations
They're quite aware of what they're goin' through
Ch-ch-ch-ch-changes
Turn and face the strange
Ch-ch-changes
Don't tell them to grow up and out of it
Ch-ch-ch-ch-changes
Turn and face the strange
Ch-ch-changes
Where's your shame?
You've left us up to our necks in it
Time may change me But you can't trace time
Strange fascinations fascinate me
Ah, changes are takin'
The pace I'm goin' through
Ch-ch-ch-ch-changes
Turn and face the strange
Ch-ch-changes
Ooh, look out you rock 'n' rollers
Ch-ch-ch-ch-changes
Turn and face the strange
Ch-ch-changes
Pretty soon now you're gonna get older
Time may change me But I can't trace time
I said that time may change me But I can't trace time
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”今もわからない 僕は何を待っていたのか
数えきれないほどの袋小路で やりたい放題にやってきた
いつも成功したと思っても その味はそんなに甘くはなかった
だから僕は振り返って 自分を見つめ直した
だけど僕は どんな風に人がニセモノを確かめているのかなんて
ちらっとも見てこなかった
僕はあまりに生き急いでいて、そんなテストをする余裕はなかったんだ
変化だ 振り返って未知のものに向き合うんだ
変わり続けるんだ もっと金持ちになろうなんて思うな
変化だ 振り返って未知のものに向き合うんだ
変わり続けるんだ そこには違った自分がいるはずだ
時間は僕を変えるかもしれない
だけど僕は時間の跡を追うことはできない
大きさを変えながらも 穏やかで儚い水の流れから
決して離れることのないさざ波を 僕は見つめている
日々は僕の目の前を漂ってゆくけれど
何も変わっていないようにも見える
君が唾を吐きかけた子供たちが
自分たちの世界を変えようとする時には
君の相談なんかには耳を貸さないさ
彼らは自分たちが経験してきたことをちゃんと把握してるんだ
変化だ 振り返って未知のものに向き合うんだ
変わり続けるんだ 子供たちに成長して脱皮しろなんて言っちゃダメだ
変化だ 振り返って未知のものに向き合うんだ
変わり続けるんだ どこが恥ずかしいんだい
君は僕らと深く関わってしまっているんだ
時間は僕を変えるかもしれない
だけど僕は時間の跡を追うことはできない
未知の魅力が僕を魅了する
経験するのと同じ速度で変化は起きている
変化だ 振り返って未知のものに向き合うんだ
変わり続けるんだ 自分をロックンローラーだと思って
変化だ 振り返って未知のものに向き合うんだ
変わり続けるんだ あっという間に年寄りになってしまうんだ
時間は僕を変えるかもしれない
だけど僕は時間の跡を追うことはできない” (拙訳)
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アメリカの雑誌「ローリングストーン」 が2004年に発表した”史上最高の500曲”で128位に入り、デヴィッド・ボウイの曲としては「ヒーローズ」(46位)に次ぐ評価を受けているこの曲ですが、発売当時は全く売れませんでした。
アメリカで最高66位、本国イギリスではチャートインすらしなかったのです。しかし時間とともに評価が上がってゆき、彼が2016年に亡くなった時には、イギリスやオーストラリアなどでヒット・チャートに入っています。昨日このブログで取り上げた「スペース・オディティ」でソングライターとしての才能が一気に爆発した後の作品であり、やはりこの曲も彼の創作能力が遺憾無く発揮されていると思います。
また、この「チェンジズ」は、そのキャリアを通して絶え間なく変貌を続けていった彼自身を象徴するものだとも受け取られています。
彼のデビューは1964年で、ビートルズやストーンズ、フーなど数々のバンドが売れるのを横目に見ながら、彼は「スペース・オディティ」で売れるまでに5年もかかっているのです。そして、その期間彼は地道に同じことをコツコツやるのではなく、慌ただしく変化をしていました。
1962年に15歳でバンド活動を始めて1973年「ジギー・スター・ダスト」で正真正銘のブレイクを果たすまでの11年間に、実に9つも違うバンドを渡り歩いたといいます。
(最初はR&Bバンドでサックスを吹いていたそうで、この「チェンジズ」のアウトロのサックスも彼が吹いています)
この歌詞に出てくるフレーズ
”How the others must see the faker I'm much too fast to take that test”
は、人のことなど気にせずに、猛烈な早さで活動してきた彼の実感なのかもしれません。
ちなみに彼のデビュー曲「Liza Jane」はキング・ビーズというバンドと組んだ演奏したもので彼はデイヴィー・ジョーンズ(本名がデイヴィッド・ロバート・ジョーンズ)と名乗っていました。
デヴィッド・ボウイの”売れなかった5年間”は、僕のような”ポップスおたく”には興味深いエピソードがいくつかあります。
まずは、ペトゥラ・クラークの「恋のダウンタウン」などで有名な”イギリスのバート・バカラック”トニー・ハッチが彼のプロデュースをしていた時期があります。
1966年、ロウアー・サードというバンドと組んで、名前をデイヴィー・ジョーンズからデヴィッド・ボウイという芸名に変えたころでした。当時人気が爆発していたモンキーズにデイヴィー・ジョーンズがいたため名前を変えることにしたらしく、”ボウイ”は大型ナイフの”ボウイ・ナイフ”(西部開拓時代にジェームズ・ボウイという人物が使ったもの)からとったそうです。
トニー・ハッチ・プロデュースの「Can't Help Thinking About Me」。ヒットはしませんでしたが、トニーはボウイのことを、ストーリー・テーラーで、自分の経験からネタを探して曲にすることは当時では目新しいものだった、と評しています。
David Bowie & The Lower Third - Can't Help Thinking About Me
そして、僕が一番興味を持ったのは、彼のファーストアルバムに収録されていた「Love You till Tuesday」。それを新たにシングルにするときに新たにリメイクしたのがアイヴァー・レイモンドだったんです。
レイモンドはダスティ・スプリングフィールドの「二人だけのデート」の作編曲家で、ウォーカー・ブラザースの「太陽はもう輝かない」で、”イギリスのジャック・ニッチェ”と呼んでも差し支えないような”フィル・スペクター・サウンド”を生み出した人です。
「Love You till Tuesday」のアルバム・ヴァージョンです。
こちらがアイヴァー・レイモンドによるシングル・ヴァージョン。”イギリスの小西康陽”(?)と呼んでいいような仕上がり。
David Bowie - Love You Till Tuesday (single version)
話が逸れてしまいましたが、デヴィッド・ボウイは大抵の人間はあきらめてしまうはずの不遇な時代にあっても、言い方が悪いですが”性懲りも無く”常に新しいアクションを起こしていたようです。
そして、売れなかった長い期間の試行錯誤の中で、自身のビジュアル・スタイルを作り出し、演劇的なライヴ・パフォーマンスを生み出し、ストーリーテラー手法のソングライティングを磨いていきました。そしてそれが一つに集約されたのが、彼の大出世作「ジギー・スター・ダスト」だった、というわけです。