まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「スターマン(Starman)」デヴィッド・ボウイ(1972)

  おはようございます。

  今日もデヴィッド・ボウイでいってみます。「スターマン」。


Starman (2012 Remaster)

  

 ”それが何時だったのかわからないが 街灯は暗く

   僕はラジオにもたれかかって聴いていた

     誰かがロックンロールをかけて ”ソウルたっぷりだぜ”って彼は言った

  そしてでかいサウンドは消えていって

  電波に乗ってゆったりした声のようなものが聞こえてきた

     それはDJじゃなく  ぼんやり聞こえる宇宙のダンスミュージックだったんだ

 

   スターマンが空で待っている

      僕らに会いたがっているけど 

   僕らをひどく驚かせるかもしれないって思ってる

   スターマンが空で待っている 

   台無しにするなと言っている

   それがみんな価値あるものだと彼はわかっているから

    彼は僕にこう言ったんだ 

    子供たちの気持ちを解放しろ    子供たちに任せるんだ

       子供たちみんなロックで踊らせるんだ

 

  誰かに電話しなきゃと思って君にかけたんだ

  ”ヘイ、すごいんだぜ”って言ったら 君も彼の声を聞いていた

  TVをつけて チャンネル2で彼が映るかも

        窓の外を見たら彼が放つ光が見えるよ

        もし僕らが光で合図できたら 今夜彼は地上に降りるかもしれない

  パパに言っちゃダメだよ 怖がって僕らを監禁してしまうから

 

     スターマンが空で待っている

        僕らに会いたがっているけど 

     僕らをひどく驚かせるかもしれないって思ってる

     スターマンが空で待っている 

     チャンスを逃すなと言っている

     それがみんな価値あるものだと彼はわかっているから

      彼は僕にこう言ったんだ 

     子供たちの気持ちを解放しろ    子供たちに任せるんだ

        子供たちみんなロックで踊らせるんだ   ”     (拙訳)

 

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Didn't know what time it was and the lights were low
I leaned back on my radio
Some cat was layin' down some rock 'n' roll 'lotta soul, he said
Then the loud sound did seem to fade
Came back like a slow voice on a wave of phase
That weren't no D.J. that was hazy cosmic jive

There's a starman waiting in the sky
He'd like to come and meet us
But he thinks he'd blow our minds
There's a starman waiting in the sky
He's told us not to blow it
'Cause he knows it's all worthwhile
He told me
Let the children lose it
Let the children use it
Let all the children boogie

I had to phone someone so I picked on you
Hey, that's far out so you heard him too!
Switch on the TV we may pick him up on channel two
Look out your window I can see his light
If we can sparkle he may land tonight
Don't tell your poppa or he'll get us locked up in fright

There's a starman waiting in the sky
He'd like to come and meet us
But he thinks he'd blow our minds
There's a starman waiting in the sky
He's told us not to blow it
'Cause he knows it's all worthwhile
He told me
Let the children lose it
Let the children use it
Let all the children boogie

There's a starman waiting in the sky
He'd like to come and meet us
But he thinks he'd blow our minds
There's a starman waiting in the sky
He's told us not to blow it
'Cause he knows it's all worthwhile
He told me
Let the children lose it
Let the children use it
Let all the children boogie

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 デビューから5年もかかってようやく初めてのヒット曲(「スペイス・オディティ」)を出したボウイでしたが、その後の3年間、世間からは引退していたかのように思われていたと言います。

   作品はリリースしていました。「スペイス・オディティ」を収録したファースト・アルバム「デヴィッド・ボウイ」、セカンド「世界を売った男」、ボウイの代表曲である「チェンジズ」や「火星の生活」のが入っているサード「ハンキー・ドリー」。しかし、すべて全く売れなかったのです。

 「スペイス・オディティ」がアポロの月面到着に合わせた”企画もの”扱いされて、アルバムまで大衆の興味が及ぶアーティストとしては認知されていなかったのかもしれません。

 そして、ライヴもやらなくなっていました。

 バンド・メンバーでそれぞれがスーパー・ヒーローに扮したコスチュームでライヴをしたことがあったそうで、そこで観客の反応がひどかったのです。

 

「まさしく爆死ってやつだったよ。で、当たり前の話だけど、メンバーたちから言われたんだ、ほらな、言った通りだろ、さあ、元の普通のバンドに戻ろうぜって、って。僕はそこですっかり心を折られたんだよ。そのパフォーマンスの後、僕はパタッと一切の活動から手を引いたんだ、何故って、そうすることが正しいってわかっていたからさ。

僕にとってはあれこそが自分のやりたいことだと確信を持っていたし、いずれ必ず人々から求められることになるものだと思ってた。ただ、それがいつのことなのかはわからなかったから、とりあえず待つことにしたんだ」

             (「デヴィッド・ボウイ インタヴューズ」)

 客観的に見えば「スペイス・オディティ」の一発屋で終わってしまう可能性のあったタイミングで、彼は”タイミングを待つ”ことを選んだわけですね。普通は「スペイス・オディティ」のヒットの勢いが残っているうちに、とかジタバタしてしまいそうですが。

 それまでも、バンドを組んで売れない、それで次のバンドで組んでまた売れない、ということを繰り返していた彼ですから挫折に対する耐性があったのかもしれませんし、あらゆる成功者に共通する”根拠のない自信”をしっかり持っていたように思います。

 

 そして、彼は他の星から来た架空のロック・スター”ジギー・スターダスト”を演じることを思いつきます。

 「スペイス・オディティ」が売れた後、少しスターになったような立ち振る舞いをしていたという彼に対して、世間の人たちは”デヴィッド・ボウイ”ではなく、曲の主人公「トム少佐」と声をかけたといいますが、今度はそれを逆手にとるように彼自ら、曲のキャラクターに完全になりきる戦略をとったわけです。

 実際にこのアルバムが大ヒットした時に、世間は彼をデヴィッド・ボウイじゃなく”ジギー・スターダスト”として受け止めまたのです。

 

 さて、「ジギー・スターダスト」からの最初のシングルで、「スペイス・オディティ」以来実に3年ぶりのシングルヒットになったこの「スターマン」は、アルバムが一旦完成したあとに、追加で作られたものだったと言います。

 アルバムを聴いたレコード会社が、シングルヒットしそうな曲がないと注文をつけたのです。

 

 「ここだけの話 皆がシングルを出せというんだ。そこで僕は考えた。いかにも僕らしい曲を書いてやろう。『スペイス・オディティ』を基にして皆が待っている続編だとすぐわかるような曲をね。『スターマン』は15分ほどで書き上げた。異星人とか宇宙に関する言葉を思いつく限り並べて言った。それを3分に詰め込んだら出来上がりだ」

             (「デヴィッド・ボウイ 最初の5年間」)

 

    開放弦の不協和音をあえて残したギターのストロークで、宇宙の空間を表現しているようなイントロにしたのは、あえて「スペイス・オディティ」の続編的な印象を持たせるためなのでしょう。

 ともかく3年間作れなかったヒット曲が、ちょっとした発想の転換であっという間に書けたわけですから不思議なものです。

 

 そして”ジギー・スターダスト”として、世界中を熱狂させたツアーの最終公演で、彼は突然“ジギー・スターダスト”自体を終わらせる宣言をし、また次の展開に向かっていくことになります。

 

 

 

 

 

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