まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ヒューマン・ネイチャー(Human Nature)」マイケル・ジャクソン(1983)

 おはようございます。

 今日はマイケル・ジャクソンの「ヒューマン・ネイチャー」です。


Michael Jackson - Human Nature (Audio)

Looking out
Across the nighttime
The city winks a sleepless eye
Hear her voice
Shake my window
Sweet seducing sighs

Get me out
Into the nighttime
Four walls won't hold me tonight
If this town
Is just an apple
Then let me take a bite

If they say
Why, why, tell 'em that it's human nature
Why, why, does he do it that way
If they say
Why, why, tell 'em that it's human nature
Why, why does he do me that way

Reaching out
To touch a stranger
Electric eyes are everywhere
See that girl
She knows I'm watching
She likes the way I stare

If they say
Why, why, tell 'em that it's human nature
Why, why, does he do me that way
If they say
Why, why, tell 'em that it's human nature
Why, why does he do me that way

I like livin' this way
I like lovin' this way

(That way) Why why
(That way) Why why

Looking out
Across the morning
Where the city's heart begins to beat
Reaching out
I touch her shoulder
I'm dreaming of the street

If they say
Why, why, tell 'em that it's human nature
Why, why, does he do me that way
If they say
Why, why, ooo tell 'em
Why, why does he do me that way、、、

Writer/s: Steve Porcaro, John Bettis

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    ”この夜の向こうまで 目をやれば

   眠らない街がウィンクする

   彼女の声がする 僕の部屋の窓が揺れる 甘く誘うような吐息で

 

   外に出してほしい  夜の時間の中に

   部屋の四方の壁が 今夜僕を抱きしめてくれるわけじゃないし

   もしこの街がただにリンゴ(Apple)なら 一口かじらせてほしい

 

   もし誰か「どうして、どうして」って言うなら

   それは人間だから、って言ってやるよ

   「どうして、どうして 彼はそんな風にやるの?」って言うなら

      もし誰か「どうして、どうして」って言うなら

   それは人間だから、って言ってやるよ

      「どうして、どうして 彼は僕にそんなことをするの?」って言うなら

     

    見知らぬ人に触れようと手を伸ばす 

       あらゆるところで電飾が目を光らせている

  あの娘を見てごらん 僕が見つめているのをわかっている

  こんな風に見つめられるのが好きなんだね

 

       もし誰か「どうして、どうして」って言うなら

    それは人間だから、って言ってやるよ

      「どうして、どうして 彼は僕にそんなことをするの?」って言うなら

      もし誰か「どうして、どうして」って言うなら

   それは人間だから、って言ってやるよ

      「どうして、どうして 彼は僕にそんなことをするの?」って言うなら

 

 

       こんな風に生きたい こんな風に愛したい

 

  この朝の向こうまで 目をやれば

  街の鼓動が鳴り始めている

  手を伸ばし 彼女の肩に触れる

  僕はストリートの夢を見ているんだ

 

       もし誰か「どうして、どうして」って言うなら

    それは人間だから、って言ってやるよ

      「どうして、どうして 彼は僕にそんなことをするの?」

      もし誰か「どうして、どうして」って言うなら

   それは人間だから、って言ってやるよ

      「どうして、どうして 彼は僕にそんなことをするの?」 ”(拙訳)

 

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マイケル・ジャクソン「ヒューマン・ネイチャー」の楽譜はこちら

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 ご存知、世界最大のヒットアルバム「スリラー」からの5番目のシンングルとして、この曲は全米第7位のヒットになりました。

 

 曲を書いたのはTOTOのメンバーとして有名なキーボーディストのスティーヴ・ポーカロ。TOTOではそれほど曲は書いてはいませんが、シンセサイザーの使い手としてTOTOの”打ち込みサウンド”を一手に引き受けていた人です。

 

  TOTOのレパートリーでは、ファーストの入っていたこの曲が彼の作品です。


TOTO - Takin' it back

 

 ちなみに彼はソングライターとしては「恋はフェニックス」(グレン・キャンベル)や「ビートでジャンプ」(フィフス・ディメンション)などで知られるジミー・ウェッブに大きな影響を受けたと語っています。

 

 この「ヒューマン・ネイチャー」のインスピレーションは、ちょっとほほえましいエピソードから生まれました。

 彼がスタジオに向かう途中に当時4~5歳だった娘にひと声をかけてから行こうと思って家に寄ると、彼女はひどく怒っていて、その理由をたずねると、学校の滑り台で男の子に叩かれて落とされたのだそうです。

 どうして彼はそんなことするの?と娘からたずねられた彼は、その男の子は彼女の気を引こうとしたのかもしれないな、とも思いながら、人間(Human Nature)というのはね、と彼女に説明しようとしたそうで、そんなことから「ヒューマン・ネイチャー」というタイトルと、サビの「Why Why..」というフレーズが浮かんだのです。

 そして、彼はTOTOの代表曲「アフリカ」のミックス作業中にこの曲を書きあげたと言われています。

 

 

 さて、「スリラー」の制作にあたって、プロデューサーのクインシー・ジョーンズは600曲も集めて、その中から収録曲を選んだと言われています。

   スティーヴも含めTOTOのメンバーはミュージシャンとして「スリラー」のレコーディングにに参加していました。

 アルバムがほぼ完成しかかったころ、ミッド・テンポの曲が必要だということになり、TOTOの多くの曲を書いているデヴィッド・ペイチにもクインシーから曲を書くよう強い要望があったそうで、彼の家に連日メッセンジャーがデモをピックアップに来ていたと言います。

 

 当時、スティーヴもデヴィッドの家に住んでいたそうで、ある日デヴィッドがクインシーに送るデモを録音するので空いているカセットはないかと彼に聞いてきたそうです。全く空のテープがなかったので、片面に「ヒューマン・ネイチャー」のデモが入ったカセットを渡し、デヴィッドはその反対の面に自分のデモを入れてクインシーに送りました。

 

 翌日、クインシーからデビッドに電話があって「ヒューマン・ネイチャー」を絶賛したそうです。クインシーは興奮した様子だったので、デヴィッドがそれは自分の曲じゃないと説明するまで30分もかかったといいます。

 

 「ヒューマン・ネイチャー」のデモは歌詞が完成していなかったので、スティーヴ自身でいったん全部書き上げましたが、クインシーは納得せず、彼の提案でジョン・ベティスに仕上げてもらうことになりました。

 

  ジョン・ベティスはクインシーがプロデュースしたドナ・サマーのアルバム「Donna Summer(邦題:恋の魔法使い)」で1曲歌詞を書いていました。

 

 ジョンはこのブログにも何度も登場していますが、リチャード・カーペンターの同級生で「イエスタデイ・ワンス・モア」などリチャードの作品の作詞家として名を上げた”3人目のカーペンターズ”と呼ばれていた人です。

 

 この年の2月にカレン・カーペンターが亡くなってしまったばかりで、ジョンが歌詞を書くときに彼女のことを思い出したそうです。

 ”もしこの街がただのリンゴ(Apple)なら”というのは

 Big Apple=ニューヨークのことで、カレンがなくなる前に住んでいたのがニューヨークだったので、思いついたフレーズだと言います。

 そして若くしてスターになったカレンとマイケルを重ねるようにしていったようで、

確かにこの歌詞の主人公を若く孤独なスターとすると、しっくりするように思います。

 

 しかし、以前にこのブログで彼の代表曲「ロック・ウィズ・ユー」と「オフ・ザ・ウォール」はカレン・カーペンターのために書かれた曲だということを書きましたが、”ポップ”の象徴的存在であるこの二人には、やはり何か見えないつながりのようなものがあるのでしょうか。

 

 

 さて、この「ヒューマン・ネイチャー」は”つかみ”の強い曲が揃った「スリラー」の中では、とてもソフトで優しい曲に思えますが、かなりの隠れた人気曲で彼のレパートリーの中でもカバーされることが多いものの一つになっています。

 

 それでは、カバーの中から1曲。ジャズ界最大のプロデューサーであるクインシー・ジョーンズを興奮させたこの曲は、ジャズ界最大の大物、マイルス・デイヴィスも気に入ったようで、彼のアルバム「You're Under Arrest」でカバーされています。


human nature- miles davis

 

 最後に、マイケルの来日公演の時の「ヒューマン・ネイチャー」の映像を。


Michael Jackson - Human Nature - Live Yokohama 1987 - HD

 

 

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