まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「バブーシュカ(Babooshka)」ケイト・ブッシュ(1980)

 おはようございます。

 今日はケイト・ブッシュの「バブーシュカ」を。

www.youtube.com

****************************************************************

She wanted to test her husband
She knew exactly what to do
A pseudonym to fool him
She couldn't have made a worse move


She sent him scented letters
And he received them with a strange delight
Just like his wife
But how she was before the tears
And how she was before the years flew by
And how she was when she was beautiful
She signed the letter

All yours
Babooshka, Babooshka, Babooshka-ya-ya
All yours
Babooshka, Babooshka, Babooshka-ya-ya

Babooshka

She wanted to take it further
So she arranged a place to go
To see if he
Would fall for her incognito
And when he laid eyes on her
He got the feeling they had met before
Uncanny how she
Reminds him of his little lady
Capacity to give him all he needs
Just like his wife before she freezed on him
Just like his wife when she was beautiful
He shouted out

I'm all yours
Babooshka, Babooshka, Babooshka-ya-ya
All yours
Babooshka, Babooshka, Babooshka-ya-ya
All yours
Babooshka, Babooshka, Babooshka-ya-ya

Babooshka, Babooshka, Babooshka-ya-ya
Babooshka, Babooshka, Babooshka-ya-ya
Babooshka, Babooshka, Babooshka-ya-ya

****************************************************************

彼女は夫を試したかった

どうすればいいか正確にわかっていた

彼を騙すための偽名

これよりマズい行動はなかったでしょう

 

彼女は香水のついた手紙を彼に送った

そして、彼は不思議な喜びでそれを受け取った

ちょうどまるで彼の妻のようだ

だけどそれは涙にくれる前の彼女

そして年月が過ぎ去る前の彼女

そして美しかった時の彼女

彼女は手紙に記した


"あなたのもの バブーシュカバブーシュカバブーシュカ

彼女はもっとやってみたくなった

それで、彼が変名の自分と恋に落ちるか

見てみるために待ち合わせをアレンジした

そして彼は彼女に目をとめると

彼は前にあったような感覚があった

奇妙なほどに彼女は彼に

可愛いレディを思い出させた

彼の望むものを全て与える力を持っているレディを

それはまるで、彼を凝らせてしまう前の妻のように

それはまるで、美しかった時の妻のように

彼は叫んだ

 

”僕は君のものだ、バブーシュカバブーシュカバブーシュカ

君のものだ バブーシュカバブーシュカバブーシュカ

 

バブーシュカバブーシュカバブーシュカ
            (拙訳)

****************************************************************

  クラシックな推理小説のような語り口で、まだ21歳の女性が書いたとはとても思えないような個性的で見事な作品だと思います。

 当時、僕はサビの”Babooshka, Babooshka, Babooshka-ya-ya”というフレーズが、ずっと頭にこびりついてしまって困った記憶があります(苦笑。

 ”incognito”(インコグニート)という言葉が出てきますが、変名、偽名、という意味のようです。

 

 当時イギリスの音楽界で天才の名をほしいままにしていたケイト・ブッシュの、三枚目のアルバム「魔物語(Never for Ever)」からのシングルとして全英5位、オーストラリア(2位)、フランス(4位)などでも大ヒットしました。

 

 「バブーシュカ」というのはロシア語で”おばあちゃん”という意味なのだそうですが、

彼女はそのことを知らなかったようです。

 

「それはとても不思議なことだったわ、それはこの曲を書いているときにその名前が浮かんできたから。それがどこから来たのかわからなかったんだけど、ロシアのおとぎ話から来ているのではないかとその時は思ったの。お姫様か何かの名前のように聞こえるし、その曲にぴったりで、音節もちょうどよくて感じもぴったりだった。それで、そのまま進めたの。

 その後不思議な偶然がたくさん起こったわ、テレビをつけるとドナルド・スワンがバブーシュカについての歌を歌っていたりとか。そこで私は、実際にこういう名前の人がいることに気づいて、ラジオ・タイムズ(註:イギリスのラジオの週間情報誌)で「バブーシュカ」という番組のちょっとした詳細を見つけたることができたの。

 それは誰かが書いたオペラで、バブーシュカは彼女の家の上に星が止まったことで、3人の王が会いに行った女性だったみたい。彼らはイエス様がそこにいるのではないかと思ったんだけど、イエス様がいなかったので彼らはまた別の場所に探しに行った。彼女は彼らと一緒にイエス様を探しに行きたかったんだけど、彼らがそれを許さなかったので、彼女は残りの人生を彼を探して生きたという話。それ(バブーシュカ)が、どこから来たかわからないけど、曲の役に立ったわ」

                                           (1980 MisK)

 

 また、曲後半に出てくるガラスの割れる音が、当時とてもインパクトがありました(今では別に珍しいものではないですが、、)。これは、1980年に発売されたばかりのシンセサイザー「フェアライトCMI」でサンプリングしたもので、ポップ・ミュージックとしては最初期の使用例のひとつだったそうです。

 


 ケイト・ブッシュは知り合いを通してピンク・フロイドデヴィッド・ギルモアに才能を認められ、彼のバックアップでメジャーの契約を勝ち取ります。デビュー前には、リンゼイ・ケンプやアダム・ダリウスといった人たちのもとで舞踏やパントマイムを習い、それが彼女の表現スタイルに大きく役立っています。

 1978年にシングル「嵐が丘(Wuthering Heights)」デビューし、いきなり全英1位に輝きます。彼女が18歳のときに映画の「嵐が丘」を見てインスピレーションを得て数時間で書き上げたものだと言われています。

www.youtube.com

 新人のデビュー曲としての独創性ということでは史上屈指の作品でしょう。日本では「恋のから騒ぎ」のテーマとしてお馴染みでしたね。意外なのはブリティッシュ・ポップ・バンド”パイロット”のデヴィッド・ペイトン(A.G)とイアン・ベアンソン(E.G)が演奏メンバーにいることでしょう。

 

 彼女は大英帝国勲章を受章するほどイギリスでは高く評価されていますが、アメリカでは成功しませんでした。アメリカで最も成功した曲は1985年の「神秘の丘(Running Up That Hill (A Deal with God))(全米30位、全英3位)

www.youtube.com

 40年以上のキャリアで、オリジナル・アルバムはわずか10枚と寡作ですが、イギリスでは現在もリリースするたびにチャートの上位に入るほど、確固たる地位を築いています。

 

   彼女は本来ピアノの弾き語りをするのですが、デビュー当時のインタビューで、ピアノを弾く女性アーティストはリンジー・ディ・ポールかキャロル・キングみたいにしか思われないので、もっと男性アーティストのような圧倒するようなものをやりたいと語っていました。それが、パントマイムや踊りを融合させた表現につながったのでしょう。

 

 最後はその彼女のピアノ弾き語りの動画を。これがけっこういいんですよね、、。

www.youtube.com

 

Babooshka

Babooshka

  • Parlophone UK
Amazon

 

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com

f:id:KatsumiHori:20210710184636p:plain