まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「スレッジハンマー (Sledgehammer)」 ピーター・ガブリエル(1986)

 おはようございます。

 今日はピーター・ガブリエルの「スレッジハンマー」です。

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You could have a steam train
If you just lay down your tracks
You could have an aeroplane flying
If you bring your blue sky back
All you do is call me
I'll be anything you need


You could have a big dipper
Going up and down, all around the bends
You could have a bumper car, bumping
This amusement never ends


I wanna be your sledgehammer
Why don't you call my name?
Oh, let me be your sledgehammer
This will be my testimony


Show me 'round your fruit cage
'Cause I will be your honey bee
Open up your fruit cage
Where the fruit is as sweet as can be


I want to be your sledgehammer
Why don't you call my name
I'm going to be-the sledgehammer
This can be my testimony
I'm your sledgehammer
Let there be no doubt about it


I get it right
I kicked the habit(Kicked the habit, kicked the habit)
Shed my skin(Shed my skin)
This is the new stuff(This is the new stuff)
I go dancing in(We can go dancing in)
Oh, won't you show for me?(Show for me)
I will show for you(Show for you)
Show for me(Show for me)
Oh, I will show for you
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, I do mean you
(Show for me)
Only you
You've been coming through
(Show for you)
I'm gonna build that power
Build, build up that power, hey

Come on, come on, help me do
Come on, come on, help me do
(Show for you)
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, you
(Show for me)
I've been feeding the rhythm
I've been feeding the rhythm
Show for you
It's what we're doing, doing
All day and night

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君は蒸気機関車だって持てるんだ
そこに線路を敷くだけで
君は飛行機だって持てるかもしれない
もし君が自分の青空を取り戻したら
僕のことを呼ぶだけでいいのさ
君が必要なもの何にだってなるよ

ジェットコースターだって君のものさ
上がったり下がったり、ぐるっと曲がったり
バンパー・カーだって君のもの
バンバンぶつかって
このお楽しみは終わりはしない


僕は君のスレッジハンマーになりたい
なぜ僕の名前を呼んでくれない?
ああ、君のスレッジハンマーにしてほしい
これは僕の宣誓なんだ


君のフルーツケージの中を見せて
僕は君のミツバチになるから
君のフルーツケージを開いて
果実が一番甘くなる場所さ


僕は君のスレッジハンマーになりたい
なぜ僕の名前を呼んでくれないんだ?
僕がスレッジハンマーになるよ
これが僕の宣誓さ
僕は君のスレッジハンマー
疑いの余地もなく

 

よくわかったんだ
習慣なんか捨てて
殻を脱ぎ捨てて
これが新しい僕さ
踊りに行くよ
僕に見せてくれないか
君に見せてあげるよ

僕に見せてよ
君に見せてあげるさ
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah  君のことなんだ
君だけさ 君はがんばってやってきた 
あの力を蓄えてゆく、どんどんどんどん

さあ、僕に力を貸して
さあ、僕に力を貸して
僕はこのリズムをもっと盛り上げているんだ

それが僕らがやること 朝から晩まで

さあ、僕に力を貸して

僕はこのリズムをもっと盛り上げているんだ

 (拙訳)

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  1980年代のポップ・ミュージックは、イギリスの白人アーティストの多くがR&Bを取り入れた楽曲で大ヒットを飛ばしたという大きな潮流がありました。ワム、カルチャークラブ、フィル・コリンズユーリズミックス、ポール・ヤング、スタイル・カウンシル、などなど。

 このピーター・ガブリエルの「スレッジハンマー」もその代表的なものです。

ただし、他のアーティストはモータウンなどの都会的に洗練されていて、イギリスのクラブ・シーンで人気の”ノーザン・ソウル”の影響を感じさせるものが多かったのですが、「スレッジハンマー」はアメリカ南部の”サザン・ソウル”のフィーリングが色濃く出ているところが印象的でした。

 

 ピーター・ガブリエルのキャリアは”ジェネシス”というバンドから始まっています。ジェネシスパブリック・スクールで友人になったトニー・バンクスと曲を作り始め、そこにクリス・スチュワートが加わり、学校で別のバンドをやっていたアンソニー・フィリップスマイク・ラザフォードが加わり、最終的にジェネシスになります。1967年のことでした。

  そして彼らは1968年に「The Silent Sun」という曲でデビューします。これは、彼らのプロデューサーのジョナサン・キングがビー・ジーズの大ファンだったことから、彼らがそれに”寄せた”曲だと言われています。

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 しかし、その後彼らは難解で長尺なプログレッシヴ・ロックの方向にシフトしていき、ライヴは舞台的な演出のアート志向の強いものになり、そのメイン・アクトとしてピーターはキツネのマスクな奇抜な衣装やメイクで評判になりました。

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 ピーター在籍時のジェネシス最大のヒット「I Know What I Like」(全英21位)

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 1975年に彼がジェネシスを抜けると、バンドの主導権をフィル・コリンズが握り、ポップな方向に変わっていくとともに商業的にも大きな成功をおさめていきます。

 

 彼はソロ活動を始め、1977年のソロ・デビュー曲「Solsbury Hill」が全英13位とヒットを記録し、こちらも人気アーティストとしての地位を固めていきます。

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  彼がアメリカで最初にヒットしたのはこの曲、1982年の「ショック・ザ・モンキー」(全米29位)。

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 僕がそうでしたが、ピーター・ガブリエルというとアーティスティックで難解なイメージがあったのですが、その印象を覆したのがこの「スレッジハンマー」で、全米NO.1に輝きました。イギリスも1位かなと思ったら意外にも4位が最高でした(やっぱりイギリス人はノーザン・ソウルっぽい方が好きなのかな、なんて思ったりしますが)。

 

 この曲ではR&Bのフィーリングが強く打ち出されていますが、彼はもともとソウル・ミュージックに大きな影響を受けていました。

 はじめてバンドを組んだパブリック・スクール時代に”ラム・ジャム・クラブ”というスカやR&Bをかけるサロンに出かけたことがきっかけだったそうです。

 

 「観客として人生最高のギグだった。オーティス・レディングが歌っていて、ウェイン・ジャクソンがトランペットを吹いていて、まさにその夜、僕は自分のヒーローを見つけたんだ。オーティスは”Try a Little Tenderness”を熱唱し、観客との信頼関係は並外れていた。僕はクラブの中央に立って、自分が目立たないようにできるだけ前の方に行った、そして、生涯ミュージシャンでいたいと心に決めたんだ」

 (SPIN   August 4 2019)

 

 そして、彼はオーティス・レディングなどを輩出したアメリカ南部のレーベル”スタックス・ボルト”に夢中になり、R&Bのカバー・バンドでドラムを叩くようになったといいます。

 そして、彼にとって”人生最高のギグ”だったオーティス・レディングのステージでトランペットを吹いていたウェイン・ジャクソンを、この「スレッジハンマー」のレコーディングに招いて吹いてもらっているんですね。

 ただし、ホーン・セクションすべてをウェインのようなスタックス系で固めるのではなく、サックスはビリー・ジョエル・バンドのマーク・リベラにしたり、サンプリングしたり、レトロではなく、あくまでもハイブリッド、いろんなものを掛け合わせて最新種を作ろうとする意図が感じられます。

 それから、歌詞にbig dipperとかfruit cageとか、セクシャルな意味のあるスラングを入れているのも、ピーターがブルースなどから引用したものだと推測している記事もありました。

 さて、タイトルの「スレッジハンマー」、でかいハンマーなんですが、どうして曲名になったかについてプロデューサーのダニエル・ラノワはこう語っています。

「僕たちはある体制を作り上げようと決めたんだ、労働倫理みたいなね。そこで僕たちは、建設作業員のように仕事に現れるというアイデアをちょっと楽しんだんだ。黄色いヘルメットをかぶってね。

 みんなヘルメット姿で現場に現れるんだ。そして、僕はいつも「さあ、スレッジハンマーで叩こう!」と言うんだ。その日の仕事を終えると、スレッジハンマーにまつわる話がたくさんあったんだ。ピーターはそこからタイトルをつけたのだと思うよ。つまり、僕たちが楽しんで、そして働いた、それが一体になっているんだ」

 (songfacts)

 

 最後は「スレッジハンマー」が収録された大ヒットアルバム「so」から、ケイト・ブッシュとのデュエット「Don't Give Up」を。アメリカのルーツ・ミュージックを参照して作った曲だったので、彼はデュエット相手として最初ドリー・パートンをリクエストして断られたそうです。ドリー・パートンとのデュエット、ちょっとイメージできないですよね。僕はケイト・ブッシュで良かったと思います。

 

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