おはようございます。
今日は”中秋の名月”ということで、ニール・ヤングの「ハーヴェスト・ムーン」です。
Come a little bit closer
Hear what I have to say
Just like children sleeping
We could dream this night away
But there's a full moon rising
Let's go dancing in the light
We know where the music's playing
Let's go out and feel the night
Because I'm still in love with you
I want to see you dance again
Because I'm still in love with you
On this harvest moon
When we were strangers
I watched you from afar
When we were lovers
I loved you with all my heart
But now it's getting late
And the moon is climbing high
I want to celebrate
See it shining in your eye
Because I'm still in love with you
I want to see you dance again
Because I'm still in love with you
On this harvest moon
Because I'm still in love with you
I want to see you dance again
Because I'm still in love with you
On this harvest moon
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もう少しそばに来て
君に言わなくちゃいけないことがあるんだ
眠っている子供みたいに
僕たちは今夜夢見て過ごすことができるかも
だけど満月が登ってくる
灯の下で一緒に踊ろう
どこで音楽が鳴っているかわかってる
外に出て夜を感じよう
だって今も君に恋をしているから
もう一度踊る君を見たいんだ
だって今も君に恋をしているから
このハーヴェスト・ムーンの夜に
僕たちが他人だった頃は
遠くから君を見ていた
恋人同士になると
心の底から君を愛した
だけど、夜は更けてゆく
月は高く昇ってゆく
僕は祝いたい
君の目に輝く月を見て
だって今も君に恋をしているから
もう一度踊る君を見たいんだ
だって今も君に恋をしているから
このハーヴェスト・ムーンの夜に
だって今も君に恋をしているから
もう一度踊る君を見たいんだ
だって今も君に恋をしているから
このハーヴェスト・ムーンの夜に
(拙訳)
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1960年代半ばから音楽活動を始めていたニール・ヤングは1980年代も精力的に活動しましたが、テクノからロカビリーまでアルバムを出すたびにスタイルを変えたため、レコード会社から彼は真剣に売ろうとしていない、と訴えられたことさえあったそうです。
そして、1980年代後半は、大音量でノイジーなバンド・サウンドを聴かせ、当時人気だった”グランジ・ロック”の父とも呼ばれていました。
1989年「Rockin' in the Free World」。同年代のロック・ミュージシャンたちがおとなしくなっていく中で、このパワーはすごかったですね。
そして、凄まじいライヴ・パフォーマンスを行い、その模様は1991年のライヴ・アルバム「アーク」と「ウェルド」におさめられています。特に「アーク」は35分のワントラックのみで、轟音のノイジーなサウンドが延々と続くものでした。
しかし、このスタイルは40歳半ばになっていた彼には、やはりハードなものだったようです。
「『アーク/ウェルド』のあと、それ以上のことができなかった。精力を使い果たしてしまったんだ。そこから逃れて、回復するまでに、長い時間がかかった。本当に極限まで消耗してしまったんだよ」
(「ニール・ヤング 傷だらけの栄光」)
疲労だけではなく、彼は耳をかなり悪くしてしまっていたようです。
そして、彼は自分の原点であるアコースティック・ミュージックに戻ることにします。
そして、作られたアルバムが、この「ハーヴェスト・ムーン」を表題曲とする「ハーヴェスト・ムーン」でした。
彼のフォーク・ロックのスタイルを愛し、近年のノイジーなロックに戸惑っていた古いファンたちは手放しで歓迎しました。
しかも、彼の最高傑作である「ハーヴェスト」とタイトルも似ている上に、「ハーヴェスト」に参加していたザ・ストレイ・ゲイターズ(ジャック・ニッチェ、ベン・キース、ティム・ドラモンド、ケニー・バトレー)、リンダ・ロンシュタット、ジェイムズ・テイラーなどが、このアルバムに集っていたから、あたかも「ハーヴェスト2」のように受け止められたのです。
「ハーヴェスト」と「ハーヴェスト・ムーン」はメンバーやサウンドが近いからこそ、その違いがはっきり出ている2作だと思います。「ハーヴェスト」は内向的なベクトルなパワーが強く感じますが「ハーヴェスト・ムーン」のほう時はもっと外に向けて開かれたニュアンスがあって、もっとアメリカン・ルーツ・ミュージックに近い印象があります。
ニール本人もこの2作は全く違うものだと語っていて、それを”thrust"(推力)の違いだと言っているのですが、難しいですね。なんとなく理解できるような気もしますが。
「ハーヴェスト・ムーン」は結婚生活の長い夫婦が、ハーヴェスト・ムーンの夜に踊りながら、もう一度その関係に新鮮さを取り戻そうという歌で、MVの中で彼が一緒に踊っているのは本物の奥さんだそうです。
原点に戻って、というこの曲の姿勢が、そのまま、自分の音楽的な原点に戻ろうとする彼の姿勢と重なるところが興味深いところです。
また、僕が興味を惹かれたのは”ハーヴェスト”じゃなく”ムーン”のほうです。彼の曲の中で28曲に”月”が登場し、月が彼の指針となっていて、満月の日には彼はプロジェクトを引き受けやすいと音楽業界では言われているそうです。
2005年のHarpという雑誌のインタビューで彼はこう語っていたそうです。
「宗教が組織化されるよりも前に、月はあったんだ。インディアンは月について知っていたし、異教徒たちは月に従った。僕も思い出せる限り月に従ってきた、それが僕の宗教なんだ。僕は特に何か実践してはいないし、読まなければならない本があるわけでもない。満月の雰囲気の中で仕事をするのは危険になりうるんだ。何か間違ったことがあれば、本当にうまくいかないことがありから。だけど、それはすごいことなんだ、特にロックンロールにとってはね」
満月の夜にロックンロールをやると、失敗する危険もあるけど、何か特別なものにもなり得る、ということでしょうか。満月とロックンロール、不思議な魔力を持つもの同士が化学反応をおこすのかもしれませんね。
そして、この「ハーヴェスト・ムーン」という曲についても、彼にとっては月の存在の方が大事だったんですね。
その後彼は、現在に至るまで凄まじい勢いで作品をリリースし続けています。もう直ぐ76歳、多くのロック・レジェンドたちの中でも、エネルギーは飛び抜けています。
彼はかつてこう語っていました。
「若い頃は、経験がないんだ、エネルギーが充電されてもコントロールできないのさ。そして年をとると、エネルギーがなくなっていて、あるのは記憶だけ。だけどもし、充電されて自分の身の回りのことから刺激をうけて、かつ経験もあるとすると、何を尊重し、何をやり過ごすべきかわかるんだ。そうすると、本当にうまく進めるんだ」
(Rolling Stone JANUARY 21, 1993)
「物事をいつも新鮮な状態に保つ、いつも気持ちを新たにする、それが大切。型にはめられてしまったり、同じことを繰り返すばかりでなく、新しい何かを発見しようと努め、初めて触れた時のように、それを感じることが大事なんだよ」
(「ニール・ヤング 傷だらけの栄光」)
僕も長く仕事をしてきて、経験からくるノウハウがかなり蓄積された実感があるんですが、今度はそれを使おうにも逆にすぐ”ガス欠”になることが悩みです(苦笑。今のノウハウと、若い頃のエネルギーがあったら、すごかっただろうななんて思ってしまうこともあるのですが、そんなこと言っても”しゃあない”ので、意識的に好奇心を持って新鮮さをキープしていかなきゃなあ、とつくづく思います。
満月とは関係のない話になってしまいましたが、、。
最後はLAで活動する”Poolside"というデュオのこの曲のカバーです。彼らは自分たちのスタイルを”デイタイム・ディスコ”と表現しているそうです。