まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「オンリー・ラヴ(Only Love Can Break Your Heart)」ニール・ヤング(1970)

 おはようございます。

 今日はニール・ヤングの「オンリー・ラヴ」を。


Only Love Can Break Your Heart

 

 

 ”君がまだ若くて 一人で生きていた頃

   ひとりぼっちってどんな気分だった?

   僕はいつも自分がやっているゲームのことを考えていたよ

   自分に与えられた時間を最大限に使おうとしながら

 

   だけど愛だけは君の心を打ち砕く

      最初から確かめたほうがいい

   そうさ、愛だけは君の心を壊せるんだ

    君の世界が崩れ落ちたらどうするんだい?

 

  一度も会ったことのない友達がいる

     夢の世界に頭を突っ込んでしまったのさ

  誰か彼を呼んで 出てこれるのか確かめたほうがいい

        彼が経験した落ち込んだ気分をやわらげてあげながら

 

  だけど愛だけは君の心を打ち砕く

        最初から確かめたほうがいい

     そうさ、愛だけは君の心を壊せるんだ

     君の世界が崩れ落ちたらどうするんだい?

 

        一度も会ったことのない友達がいる

     夢の世界に頭を突っ込んでしまったのさ

 

        そうさ、愛だけは君の心を壊せるんだ

        そうさ、愛だけは君の心を壊せるんだ  ” (拙訳)

 

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When you were young
And on your own
How did it feel to be alone
I was always thinking of games
That I was playing
Trying to make the best of my time

But only love can break your heart
Try to be sure right from the start
Yes, only love can break your heart
What if your world should fall apart

I have a friend I've never seen
He hides his head inside a dream
Someone should call him and see
If he can come out
Trying to lose the down that he's found

But only love can break your heart
Try to be sure right from the start
Yes, only love can break your heart
What if your world should fall apart

I have a friend I've never seen
He hides his head inside a dream

Yes, only love can break your heart
Yes, only love can break your heart

 

Writer/s: Neil Young

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  これはニール・ヤングの3枚目のアルバムで、彼の代表作の一つ「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」からのファースト・シングルで全米33位、彼のソロとしての初のシングル・ヒットになりました。この年アメリカのラジオではこの曲が頻繁にオンエアされていたそうです。

 

 「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」は1970年9月に発売されましたが、同じ年の3月にはクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSN&Y)の大ヒット作「デジャヴ」がリリースされていて、そのメンバーでもあったニールに世間が注目していたこともあり、実に勢いのあった時期でもありました。

 

 この曲はCSN&Yの仲間、グラハム・ナッシュのために書いたもので、彼がつき合っていたジョニ・ミッチェルと別れたことが念頭にあったと言われています。

 のちのインタビューでそのことについてニールは”覚えていない”と言っていたそうですが、1977年の自身のライヴではMCでそう語っていたという証言もあります。

 

 真偽はどうあれ、なんといっても注目すべきは”Only Love Can Break Your Heart”というフレーズでしょう。人間の心を壊すことができるのは愛だけなんだという、まぎれもない、でも、恋愛で傷ついた当事者になってみてようやく気づく真実です。愛の素晴らしさばかりを歌う曲があふれるなかで、まったく反対側からの視点を示してくれるわけです。

 もちろん、愛そのものに”破壊力”のようなものがあるわけじゃなく、あくまでもそれを受け止める心のほうの問題である、それだけ心は脆いものなのだということも誰もがわかってはいることなのですが。

 

 ちなみにこの曲よりもずいぶん前に”Only Love Can Break a Heart”(邦題「愛の痛手」)というタイトルの似ているヒット曲がありました。1962年にジーン・ピットニーが歌い全米2位になっていますから、ニール・ヤングも知っていたのかもしれませんね。

 曲を書いたのはバート・バカラックとハル・デヴィッド。当時の彼らにとって最大のヒットになったものです。

 (ちなみにその時の1位はジーン・ピットニー自身が書いたクリスタルズの「ヒーズ・ア・レベル」(フィル・スペクターのプロデュース)だったというから皮肉なものです)

 


Only Love Can Break a Heart (Remastered)

 

 ”愛だけが心を壊せるけど その心をまた治せるのも愛なんだよ

     昨夜、僕は君を傷つけてしまったけど 思い出してほしんだ

  愛だけが心を壊せるけど その心をまた治せるのも愛なんだよ

     本当にごめん 一度のキスでそれを証明してみせるよ

   愛だけ心を壊せるけど その心をまた治せるのも愛なんだよ "

 

   天才作詞家ハル・デヴィッドは、”心は壊せるのは愛だけ”という”それまでになかった視点”を発見しながらも、癒せるのもやっぱり愛だけ、という”フォロー”を間髪入れず入れているわけですね。そして、彼女を泣かせてしまった主人公のひとりよがりな”言い訳”にそれを使っているわけです(苦笑。

 でも、愛のネガティヴな面だけ言って終わるなんていうのは、ピットニーの時代のポップ・ミュージックではなかったことでしょう。

  なにより、愛が壊せるのは” A Heart”としているので、”一般論”のような感じがします。

 それでも、この曲が大ヒットしたのは”Only Love Can Break a Heart”という言葉の斬新さやインパクトが大きかったからのように思います。

(このバカラック-デヴィッド最初のTOP3ヒットは、バカラックのメロディよりデヴィッドの歌詞の方が”さえていた”というのが僕の見立てです。そもそもデヴィッドの詞先だったようですが)

 

 

 それに対して、「オンリー・ラヴ」では、愛が壊せるのは”Your Heart"とし、それをきっと同じような経験をしたことのある近い存在が語りかけるように歌ってくるわけで、その言葉の切実感はぐっと増して伝わってきます。

 何より、愛はそれを癒すこともできる、というようなフォローはニールの歌にはないわけです。

 心の痛手を追った相手にとって、一般論で慰めるより、同じ経験をしたものとして同じ目の高さで語りかける方が伝わってくるものがあるのは確かだと思います。

 

 

 歌の中で問題がちゃんと解決するのがジーン・ピットニーの頃のポップ・ソングだったわけですが、この歌のように解決のない孤独な内面を歌うことも、やはりその時代を象徴するスタイルでもありました。

 そして、この曲の入った「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」は同時期のジェームス・テイラーの「スウィート・ベイビー・ジェームス」などと並び、内省的なシンガー・ソングライターのブームの礎を築いた作品になったのです。

 

 1962年と1970年、わずか8年ですが、その間にはビートルズボブ・ディランがいて、大きくポピュラー・ミュージックを変えてしまいました。サウンド面もそうですが、ソングライターたちが自身の内面を掘り下げて歌にするようになっていったというのも重要なことだったと思います。

 そういうかたちで書かれた曲の中には時を超えて共感を集めるものが少なくありません。

 

 この「オンリー・ラヴ」も彼のレパートリーの中でも今もカバーされることが特に多い曲になっています。

 

 

1985年の”ライブ・エイド”での、CSN&Yの演奏


CSNY - Only Love Can Break Your Heart (Live Aid 7/13/1985)

 

ポール・マッカートニーと共演なんて動画もありました


Paul McCartney&Neil Young - Only Love Can Break Heart

 

 CSN&Yの代表曲

popups.hatenablog.com

ニール・ヤング作品の中でも最もポップな曲

 

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