まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「愛に抱かれて (Love Will Conquer All)」ライオネル・リッチー(1986)

 おはようございます。

 今日はライオネル・リッチーの「愛に抱かれて」です。

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Here we are
Out here, me and you
Reaching out to each other
Is all that we can do
Here we stand trying not to fall
There's no need to worry
Love will conquer all


Do you really want to know
Just how long love will last?
Will all of the bad times pass?
How can we make things right?
Ooh and why, why is the world so unkind?
We surely can find peace of mind
If we only see the light
Can't you see that?


Here we are
Out here, me and you
Reaching out to each other
Is all that we can do
Whoa, here we stand trying not to fall
Oh, there's no need to worry
Love will conquer all


Can somebody tell me why
Why do our dreams go wrong?
Why can't we all belong?
Ooh, where did we start?
Oh, and tell me when
When will we ever learn?
There's nowhere else we can turn
The truth is in our hearts
Here we are together


Sometimes the road gets hard to travel
Sometimes the pain's too much to bear
Sometimes when life seems to unravel
That's the time oh to say
We're going to make it anyway
Can't you see that?


Here we are
Out here, me and you
Reaching out to each other
Is all that we can do
Here we stand trying not to fall
There's no need (There's no need to worry)
Love will conquer all

 

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さあ、着いたよ
ここで、僕と君は
お互いに手を差し伸べるんだ
それだけでいい
二人ここに立って、倒れないように
心配することはない
愛はすべてを乗り越える


君は本当に知りたいの
愛がいつまで続くかって?
悪い時はすべて過ぎ去るの?
どうすればうまくいくの?
ああ、どうして、世界はこんなに不親切なのって?
僕たちはきっと心の平穏を見つけられるさ
あの光を見るだけで
見えないかい?

さあ、着いたよ
ここで、僕と君は
お互いに手を差し伸べるんだ
それだけでいい
二人ここに立って、倒れないように
心配することはない
愛はすべてを乗り越える


誰か教えてくれないか
なぜ僕たちの夢はうまくいかないの?
なぜ二人は一緒にいられない?
ああ、僕たちはどこから始めたの?
ああ、そして教えてほしい
いつになったらわかるの?
どこにも引き返せないって
真実は僕たちの心にある
ここで二人一緒に


時には道は険しくなり
時には痛みに耐えられなくなる
時には人生が解明されそうに思える時
その時こそ、言うべきさ
僕たちはとにかくやり遂げるんだと
わからないのかい?


さあ、着いたよ
ここで、僕と君は
お互いに手を差し伸べるんだ
それだけでいい
二人ここに立って、倒れないように
心配することはない
愛はすべてを乗り越える

             (拙訳)

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 「僕はキャリアを通して、ヒップ(最先端)な存在だったことなんて一度もないよ。僕はいつもポピュラーだった。それが僕の目指してきたものなんだ。その昔、コモドアーズは一番ヒップな存在じゃなく、それはアース・ウィンド&ファイアーやオハイオ・プレイヤーズだった。そして、僕がソロ活動を始めた頃は、マイケル・ジャクソン、プリンス、ジョージ・マイケルがそうだった。ウサギとカメのことを考えてみたら、僕は亀なんだ。そしてある時点で、ドアの裏に這い上がって思うんだ、"僕は勝った "って」

 (VARIETY    Mar 7, 2018)

 

 ”ヒップ”じゃなく”ポピュラー”。客観的に自分を見れる人のようですね。”僕はいつもポピュラーだった”なんてなかなか言える言葉じゃないですけど。

 ともかく、1980年代にマイケル・ジャクソン、プリンスという不世出の大天才の全盛期に、30歳半ばのおっちゃんでありながら、対等に渡り合った、というのはやはり並大抵なことじゃないと思います。

 

 しかし、当時彼は日本でも、音楽家としてあまりリスペクトされてはいなかったですね。音楽メディアでは<売れ線の音楽=魂を売った>みたいな、図式がまかり通っていた時代ですから、彼なんかは、魂を売った人の代表みたいにとらえられていました。

 

 僕が記憶しているのは、80年に渋谷陽一浜田省吾にインタビューした記事で、具体的な話の流れは忘れてしまいましたが、そういうネガティヴなニュアンスでライオネル・リッチーの名前が出された時、浜省は「いや、彼はいいバラード書きますよ」といった回答をしたんですよね。それに、僕はちょっと感動しました。

 

 なんかいやらしそうなおっちゃんだな〜と生理的な部分ではライオネルのことは僕もそんなに好きな感じではないですが(失礼!)、こと曲に関してはすごくいいものがあると認めざるを得ないなあ、と思っていたからです。

 

 

 ソングライティングと格闘し続け、優れたバラードをいくつも残した浜省だからこそ、完成度の高いバラードを書くライオネル・リッチーの才能がよくわかったのだと思います。

 

 個人的には、年齢のせいなのかわかりませんが(苦笑)、最近は、彼の「永遠の人に捧げる歌」や「エンドレス・ラヴ」や「トゥルーリー」といった大バラードより、ちょっと力の抜けたさりげない曲の方がいいな、と思うようになってきました。

 

 この「愛に抱かれて」は彼の三枚目のソロアルバム「セイ・ユー、セイ・ミー  (Dancing on the Ceiling)」からのシングルとして全米9位になっています。

 

  作詞したのがシンシア・ワイル。バリー・マンとのおしどり夫婦コンビで「ふられた気持ち」(ライチャス・ブラザース)など数々のヒット曲を書きアメリカン・ポップス史に名を残す大作詞家ですね。(*2023年6月残念ながらなくなってしまいました)

 

 そして、この曲でフィーチャーされている女性ヴォーカルのマーヴァ・キングは、ダイアナ・ロスジャネット・ジャクソンなどの大物のセッション・シンガーを務め90年代後半からはプリンスのNPG(ニュー・パワー・ジェネレーション)に参加したことでも知られています。1981年のファースト・ソロアルバム「Feels Right」はアーバン・メロウ好きには要チェックの作品です。

 

MARVA KING 「Do You Want to Make Love」

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 そして、僕が一番気になったのはライオネルとこの曲を共作したグレッグ・フィリンゲインズです。

 1970年代にスティーヴィー・ワンダーのバック・バンドからキャリアをスタートし、西海岸きってのセッション・キーボーディストの座に上りつめた人です。マイケル・ジャクソンの「オフ・ザ・ウォール」「スリラー」「BAD」「デンジャラス」にも参加し、2000年代には一時TOTOのメンバーにもなっている人です。

 

  ソロ活動もやっていて、1985年のアルバム「Pulse」はアーバン・ソウル好きは要チェックで、マイケル・ジャクソンがレコーディングしてお蔵入りしたことでも知られるYMOの「ビハインド・ザ・マスク」もやっています。

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 グレッグはこの曲を共作しただけじゃなく、トラックも作っています。実は彼がこういう形でライオネルと共演したのは、前作「オールナイト・ロング(Can't Slow Down)」の中にもあって「Love Will Find A Way」という曲でした。

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 僕は「Love Will Find A Way」とこの「愛に抱かれて(Love Will Conquer All)」は共通のテイストを強く感じます。

 ともするとベタになりがちな彼の曲に、メロウで都会的なニュアンスを加えているのは間違いなくグレッグでしょう。

 

 ちなみに、グレッグとマーヴァ・キングのソロ・アルバムは同じ”Planet"というレーベルからリリースされていて、彼は彼女のアルバムに参加もしています。

 

 (”Planet"は、ニルソンの「ニルソン・シュミルソン」、カーリー・サイモンの「ノー・シークレッツ」、リンゴ・スターの「リンゴ」などを手がけたプロデューサー、リチャード・ペリーが作ったレーベルです。主力はポインター・シスターズで、ペリーはこの頃はR&Bに力を傾けていたようです。)

 

 グレッグ、マーヴァの洗練された持ち味、それがこの曲隠し味になっていたんですね。「愛に抱かれて」は1986年に全米9位のヒットになっています。

 

 最後はこの曲が収録されているアルバム「セイ・ユー、セイ・ミー(Dancing On The Ceiling)」で、「愛の抱かれて」と共に僕が個人的に好きな「バレリーナ・ガール」を。ちなみに、ニール・ラーセンがキーボードで参加しています。

 

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セイ・ユー、セイ・ミー

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