まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ビフォー・ユー・ウォーク・アウト・オブ・マイ・ライフ(Before You Walk Out Of My Life)」 モニカ(1995)

おはようございます。

今日はモニカの「ビフォー・ユー・ウォーク・アウト・オブ・マイ・ライフ」です。

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Here we are, face to face
With the memories that can't be erased
Although we need each other
Things have changed, it's not the same
Sometimes it makes me wonder
Where would I be if you hadn't discovered? (Where would I be?)
Which I did, inside of me
I know there was something that we could compare
Oh, well, I


Never meant to cause you no pain
I just wanna go back to being the same
Well, I only wanna make things right
Before you walk out of my life
Uh, uh, yeah


Remembering the good times
From a portrait hung up high (Hangs so high)
It's filled with so much color
And the laughter we left behind
I made the choice and you couldn't decide
I made the choice, I was wrong, you were right
Deep down inside, I apologize


Never meant to cause you no pain
I just wanna go back to being the same
Well, I only wanna make things right
Before you walk out of my life
Well, I never meant to cause you no pain (Oh-oh, yeah)
I just wanna go back to being the same
Well, I only wanna make things right
Before you walk out of my life, hey


So I made plans with you
To always have time for you
Before you walk out of my life
I guess it's true
Cannot live without you
Don't ever go away
Ooh, oh, yeah


Never meant to cause you no pain (Baby, yeah)
I just wanna go back to being the same
Well, I only wanna make things right, baby
Before you walk out of my life, oh, yeah
Never meant to cause you no pain
I just wanna go back to being the same
(I wanna go back, I wanna go back, baby)
Well, I only wanna make things right (Yeah, yeah)
Before you walk out of my life (Out of my life, baby)
Never meant to cause you no pain (Baby, believe me)
I just wanna go back to being the same (Being, baby, yeah)
Well, I only wanna make things right
Before you walk out of my life
Before you walk out of my life

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ここで二人、向かい合っている
消すことのできない思い出と一緒に
おたがいを必要としているのに
何かが変わってしまったの、同じじゃない
ときどき、不思議に思うの
あなたが見つけてくれなかったら
今頃私はどうなっていたかって
私がしたこと、胸の中で
私たちは比べられる何かがあったんだわ
ああ、ねえ、私は


あなたを傷つけるつもりじゃなかったの
ただ前の二人に戻りたいの
ねえ、ちゃんとしたいだけなの
あなたが私の人生からいなくなる前に

 

楽しかった日々を思い出すの
高く飾られた写真を見ると
たくさんの色と私たちが残した笑い声
でいっぱい
私は選択したのにあなたは決められなかった
私が選んで、間違っていて、あなたが正しかった
心の奥底では、謝っているの


あなたを傷つけるつもりじゃなかったの
ただ前の二人に戻りたいの
ねえ、ちゃんとしたいだけなの
あなたが私の人生からいなくなる前に
あなたを傷つけるつもりじゃなかったの
ただ前の二人に戻りたいの
ねえ、ちゃんとしたいだけなの
あなたが私の人生からいなくなる前に

 

だからあなたと一緒に計画を立てたの
いつもあなたのための時間を作るために
あなたが私の人生から出て行く前に
本当よ
あなたなしじゃ生きられない
決して行かないで


あなたを傷つけるつもりじゃなかったの
ただ前の二人に戻りたいの
ねえ、ちゃんとしたいだけなの
あなたが私の人生からいなくなる前に
あなたを傷つけるつもりじゃなかったの
ただ前の二人に戻りたいの
ねえ、ちゃんとしたいだけなの
あなたが私の人生からいなくなる前に

             (拙訳)

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 ある時期の十代の女の子にしか醸し出せないような、甘くて儚くて切ない何かが、とてもナチュラルに表現されているいい曲だと思います。

 

  1990年代前半〜中ごろのR&Bシーンの大きな潮流として、TLCを筆頭とする若い女性シンガーの活躍がありました。その中でも、このモニカ、そしてブランディ、アリーヤの3人はほとんど同じくらいの年齢で、みな10代半ばという若さで鮮烈なデビューを果たしています。

 日本でも<美空ひばり江利チエミ雪村いづみ>や<森昌子桜田淳子山口百恵>といった時代を象徴する3人娘がいましたが、同じ時代に才能が拮抗する3人が次々とデビューするという現象はときおり起こるんですね。

 

  また、この当時のR&Bの大きな流れとして、アトランタが新たなR&Bの聖地になったことがあげられます。1960年代のデトロイトモータウン)1970年代のフィラデルフィアのように。すぐれたプロデューサーやレーベルが集結していました。

 

 モニカはそのアトランタで生まれ育ちましたから、まさにこの時代のR&Bを象徴するような存在だったのかもしれません。

 

  彼女は母親がシンガーだったこともあり、幼い頃から教会で歌い始め、その後も歌のトレーニングをしながら、コンテストに出場していました。

 そして彼女が11歳のときにホイットニー・ヒューストンGreatest Love of All」を歌っているのを聴いていたのがプロデューサーのダラス・オースティンでした。

 

   彼は1991年にBOYZ II MENの「Motownphilly」、アトランタで友人でもあったTLCの「Ain't 2 Proud 2 Beg」などを大ヒットさせ、自分のレーベル(Rowdy)も持っていたので、彼女を契約することにします。

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 ダラスがプロデュースした彼女のデビュー曲「ドント・テイク・イット・パーソナル」は、いきなり全米2位、R&B1位という大ヒットになります。

 そしてその次のシングルがこの「ビフォー・ユー・ウォーク・アウト・オブ・マイ・ライフ」で、全米7位、R&B1位と、彼女はまだ14歳で、R&Bチャート2曲連続1位の最年少記録を打ち立てました。

 

 この曲をプロデュースしたのはデンマーク出身のプロデュース・チームのソウルショック&カーリン(Soulshock & Karlin。曲を書いたのは彼らとアンドレア・マーティンの3人でした。アンドレアはこのヒットをきっかけにSWVやアンヴォーグ、レオナ・ルイスなどのヒット曲を書き、ソロ・アーティストとしてもデビューしています、

 

 ソウルショックはこう回想しています。

「私は Hip Hopに興味がなかったので、かなり大変でした。テディ・ライリーがR&BとHip Hopを組み合わせ始めてからだな。そこにカーリンが素晴らしいマジックを加えたんだ。僕がビートを作り、その上で彼が演奏する。そうやって自分たちのサウンドを作っていったんだ。モニカの「Before You Walk Out Of My Life」のビートはとてもダーティで、カーリンはそこにとてもポップなコードをのせるんだ。誰も当時そんなことはしていなかったけど、それは僕たちがデンマークで育ったせいかもしれない。僕たちはメロディーが好きだったので、それを追求したんだ。僕たちの曲はどれも素晴らしいメロディーがあったけど、その下にはたくさんヒップホップがあったんだ。安っぽくならないようにクロスオーバーしたい多くのアーティストが僕らの元に集まってきた。そして広まったんだ」

(youknowigotsoul.com  Aug 8, 2020 )

 

  メロディを強く意識したHipHopトラック。確かに、HIpHopをベースにしているトラックメイカーではなかったからこそ、この曲のポップさがより際立つ結果になったのかもしれません。

 

 また、ダラス・オースティンのROWDYというレーベルは、アリスタ・レコードの傘下だったので、やはりアリスタのトップであるクライヴ・デイヴィスに一番の権限があるらしく、この曲もクライヴが最終的にOKを出してリリースされることになったそうです。

 ソウルショックによると、クライヴに曲をプレゼンするたびに「私のキャリアの中で最もひどい歌だ」などと言われたらしく、そのあと、ジャム&ルイスやベイビーフェイスやテディ・ライリーの曲を聴かされたそうです。

 大抵の人は心が折れるようなことを、クライヴはわざとテストとしてやっていたのではないかなあと彼は推測しています。

 実力を認めているからこそ、もっと高いレベルのものを作るように仕向けたのだと。

 

 ともかく、音楽業界随一の耳を持つクライヴ・デイヴィスも一聴して気に入ったのがこの「ビフォー・ユー・ウォーク・アウト・オブ・マイ・ライフ」だったわけですね。

 

  最後にもう1曲。3人娘の二人、モニカとブランディが共演し、1998年の最大のセールスを記録した「ザ・ボーイ・イズ・マイン」をどうぞ。

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「ビフォー・ユー・ウォーク・アウト・オブ・マイ・ライフ」を含むアルバム。この時代のR&Bの特徴が見事に反映されたいいアルバムだと思います。

 

同じ年にリリースされた、ベイビーフェイスが手がけたガールズR&Bの大ヒット曲

popups.hatenablog.com

 

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