まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「スムース (Smooth featuring Rob Thomas) 」サンタナ(1999)

 おはようございます。

 今日はサンタナの最大のヒット曲「スムース」です。


Santana - Smooth ft. Rob Thomas (Official Video)

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Man, it's a hot one
Like seven inches from the midday sun
Well, I hear you whispering in the words, to melt everyone
But you stay so cool
My muñequita, my Spanish Harlem, Mona Lisa
You're my reason for reason
The step in my groove

And if you said this life ain't good enough
I would give my world to lift you up
I could change my life to better suit your mood
Because you're so smooth

And it's just like the ocean under the moon
Oh, it's the same as the emotion that I get from you
You got the kind of lovin' that can be so smooth, yeah
Give me your heart, make it real or else forget about it

But I'll tell you one thing
If you would leave it would be a crying shame
In every breath and every word
I hear your name calling me out
Out from the barrio
You hear my rhythm on your radio
You feel the turning of the world, so soft and slow
It's turning you round and round

And if you said this life ain't good enough
I would give my world to lift you up
I could change my life to better suit your mood
Because you're so smooth

And it's just like the ocean under the moon
Oh, it's the same as the emotion that I get from you
You got the kind of lovin' that can be so smooth, yeah
Give me your heart, make it real or else forget about it


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やあ、すげえホットだ

真昼間の太陽からたった7インチくらいの熱さだ

ああ、オマエの囁きが聞こえる 誰でもとろけちまうぜ

なのに、オマエはいつだってすげえクール

オレのお人形さん オレのスパニッシュ・ハーレム、モナリザ

オマエはオレの理由そのもの

オレのグルーヴに乗ったステップなのさ

 

もしオマエがこの人生に満足できないっていうなら

気分をアゲるためにこの人生を捧げるよ

オマエのムードにぴったりなようにオレの人生を変えてもいい

だってオマエはすごくスームスだから

 

まるで月に照らされた海みたいだ

ああ、オマエがくれる感情と同じさ

オマエはすごくスムースになれる愛し方をするんだ

君のハートがほしい、現実に、じゃなければ忘れてくれ

 

だけどひとつだけ言っておくよ

君が行ってしまったら 恥ずかしくて惨めさ

息をするたびに、どんな言葉も

オマエの名前が呼んでいるようにしか聞こえないのさ

バリオ(ヒスパニックのエリア)から

ラジオでオレのリズムが聴こえてくるだろ

世界がソフトにスロウにまわり出すのを感じるだろ

それはおまえをぐるぐると回すんだ

 

もしオマエがこの人生に満足できないっていうなら

気分をアゲるためにこの人生を捧げるよ

オマエのムードにぴったりなようにオレの人生を変えてもいい

だってオマエはすごくスームスだから

 

まるで月に照らされた海みたいだ

ああ、オマエがくれる感情と同じさ

オマエはすごくスムースになれる愛し方をするんだ

君のハートがほしい、現実に、じゃなければ忘れてくれ  (拙訳)

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 サンタナは1966年にギタリストのカルロス・サンタナを中心に”サンタナ・ブルース・バンド”という名前でサンフランシスコで結成されたバンドで、レコードデビューは1969年、そのときにバンド名を”サンタナ”に変えています。

 

 カルロス・サンタナはメキシコで生まれ育ちましたが、その後家族ともアメリカに移住し、サンフランシスコで音楽活動を始めています。

 

 サンフランシスコではデビュー前から圧倒的なパフォーマンスが大人気で、デビューアルバムは即完売、その後人気がLAまで広まり、一気に全米に名前が知られるようになっていきます。

    1970年に発売された『天の守護神(Abraxas)』が全米1位の大ヒットとなり、彼らの代表作になりました。

 アルバムからこの2曲がヒットしました。

「ブラック・マジック・ウーマン」(全米4位)。オリジナルはフリートウッド・マック


Santana - Black Magic Woman (Official Audio)

「僕のリズムを聞いとくれ (Oye Como Va)」(全米13位)


Santana - Oye Como Va (Audio)

 聴いてわかる通り、ラテンの要素が強いですね。こういう音楽は当時”ラテン・ロック”と呼ばれ、その代表バンドがサンタナ、その代表作が「天の守護神」でした。

 

   などと言いつつも僕は当時は小学校の低学年でしたから、リアルタイムでは知りません。たぶん、最初にサンタナを知ったのはこの「哀愁のヨーロッパ(Europa (Earth's Cry Heaven's Smile) )」(1976)でした。


Santana - Europa (Earth's Cry Heaven's Smile)

 上田正樹の「悲しい色やね」が大ヒットした時、曲の出だしのメロが似てると言われましたが、まさに日本人好みですよね。調べて見ると英米ではチャートには入っていないんですね。スイスで6位なんて記録が残っていますが。

 

 しかし、サンタナはラテン・ロックから少しプログレっぽい方向にシフトし、音楽業界全体がポップになっていった1970年代後半から1980年代にかけては、彼らはそういう方向に合わせていきましたが、それがかえって彼ららしさを見失うことになったのかもしれません。1980年代後半から、彼らの人気は一気に低迷します。

 

 1987年のアルバム「フリーダム」は全米95位、「スピリッツ・ダンシング・イン・ザ・フレッシュ」は85位、1992年の「ミラグロ」は102位と、全盛期を知る人にとっては信じられない結果で、彼らはレコード契約を失い、ブランクを余儀なくされます。

 

 その窮地にいたサンタナを救ったのがクライヴ・デイヴィスです。

 サンタナと契約したCBSレコードの当時の社長が彼で、サンフランシスコで彼らのライヴを見てそのすごさに圧倒されて契約を決めたそうです。

 1995年にクライヴのドキュメンタリーに参加する話がサンタナの元に来て、そのとき、彼の奥さんがレコード契約の話を持ちかけるよう彼の尻を叩いたといいます。

 

 そして、サンタナはクライヴにシンプルな曲をやりたいと告げたそうです。マイルス・デイヴィスが晩年に「ヒューマン・ネイチャー」や「タイム・アフター・タイム」をいつも演奏していたように。

 そしてサンタナはクライヴが率いるアリスタと契約し、レーベル側はいろんなアーティストとのコラボを提案しました。

 

 そして、”ヴィンテージ・サンタナ”に"サンタナが強く感じている今の時代の影響”をミックスする、という方向性でアルバムが作られます。

 

 そして、そのアルバムの起爆剤になったのがこの「スムース」です。

 元となる曲を書いたのがイタール・シュール。メロウR&Bの鬼才、マックスウェルと共作の実績がある人です。


Maxwell - Ascension (Don't Ever Wonder)

 サンタナが曲を探しているとマネージャーから聞いた彼は、今まで集まった曲を聞かせてもらい、そこに「ブラック・マジック・ウーマン」や「俺のリズムを聞いとくれ」のような典型的なサンタナっぽい曲がないと思い、そういうものを書こうと決めます。

 

 そして「Room One Seven」という曲を作り、プレゼンするとレーベルは気に入ります

が、歌詞がサンタナに合わないということで、ロブ・トーマスと共作することを提案されます。

 ロブ・トーマスはこの頃大ブレイクしていた”マッチボックス・トゥエンティ”のボーカルでした。彼もまたサンタナに曲を書くというチャンスに飛びついたひとりでした。


Matchbox Twenty - 3AM (Official Video)

 

 曲は出来上がりましたが、ロブは当初自分で歌うつもりはなく、ジョージ・マイケルを希望したそうです。しかし、最終的に自分で歌うことになりますが、”メロディとリズムを聞けばいろんなところで彼(ジョージ・マイケル)を倣おうとしていることがわかるよ”と彼は語っています。

 

 クライヴ・デイヴィスは1973年の彼の自伝でサンタナについてこう語っています。

「ラテンの影響もまだ感じられたものの、サンタナの名をあげたあの陶酔的でメロディアスなリズムからなる、素晴らしいラテン・ビートは消え去ってしまった」

   (クライヴ・デイヴィス「レコードビジネスの内側」)

 そして20何年かぶりに彼と仕事をすることになったときに、サンタナが長く失っていた”ヴィンテージ・サンタナ”=本来のサンタナらしさ、を核にして、そこに現代的なエッセンスを加えるという方針をとったわけです。

 

 ”ヴィンテージ・サンタナ”を意識的に狙い、そこに旬のロブ・トーマスを加えた「スムース」は全米12週連続NO.1で、ビルボード史上歴代2位というとてつもないモンスター・ヒットになりました。

 

 彼のように一度成功したあと低迷し、再起を図るときには、全てを刷新するわけでもなく、かといって古いスタイルにだけ固執するのでもなく、自分の知られている個性を中心に打ち出しながら、そこに新たな要素を加えてゆくという方法が効果的だったんですね。

 

 ともかく、クライヴ本人ですら想定していなかったという、サンタナの大復活の理由は、いまだに僕はよくわかりませんが、ラテン・ビートの曲が突然ブレイクしてものすごいヒットになるというのはありますよね。「マカレナ」とかものすごいヒットでしたし、今もYouTubeでぶっちぎりで史上最も再生回数の多いミュージック・ビデオがルイス・フォンシとダディー・ヤンキーの『Despacito(デスパシート)』だったりしますしね。

 

www.youtube.com

 

 

 

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