まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「カリビアン・クイーン ( Caribbean Queen (No More Love on the Run) )」ビリー・オーシャン(1984)

 おはようございます。

 今日はビリー・オーシャンの「カリビアン・クイーン」を。

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(She's simply awesome

She dashed by me in painted on jeans
And all heads turned 'cause she was the dream
In the blink of an eye I knew her number and her name, yeah
She said I was the tiger she wanted to tame

Caribbean Queen
Now we're sharing the same dream
And our hearts they beat as one
No more love on the run

I lose my cool when she steps in the room
And I get so excited just from her perfume
Electric eyes that you can't ignore
And passion burns you like never before

I was in search of a good time
Just running my game
Love was the furthest
Furthest from my mind

Caribbean Queen
Now we're sharing the same dream
And our hearts they beat as one
No more love on the run

Caribbean Queen
Now we're sharing the same dream
And our hearts they beat as one
No more love on the run

Caribbean Queen
Now we're sharing the same dream
And our hearts they beat as one
No more love on the run

Caribbean Queen
Now we're sharing the same dream
And our hearts they beat as one
No more love on the run

 

 

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(彼女はただ、ただ、素晴らしいんだ)

 

 彼女はペイントされたジーンズ姿で駆け寄ってきた

 するとみんな振り返った だって彼女は夢のような女だったから

 瞬く間に彼女の電話番号と名前がわかった

 僕は虎で、彼女は手なずけたいのと言った

 

 カリブの女王 いま僕たちは同じ夢を分かち合う

 二人の鼓動は一つに重なる

 もう愛を逃したりしない

 彼女が部屋に入ってきたとき、僕は冷静さを失った

 彼女の香水の香りだけで興奮してしまった

    強烈な瞳から目を離せない

 情熱が君を焼き尽くす 今まで経験したことがないほど
 

 楽しく過ごしたかっただけさ

 ただ自分のゲームをやることでね

 愛なんて一番遠いものだった

 僕の心からかけ離れたものだった

 
 カリブの女王 いま僕たちは同じ夢を分かち合う

 二人の鼓動は一つに重なる

 もう愛を逃したりしない、、、   (拙訳)

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  ビリー・オーシャンはイギリス出身で最も成功した黒人シンガーです。

 本名はレスリー・セバスチャン・チャールズ(Leslie Sebastian Charles)といって、トリニダード・トバゴで生まれ、10歳のときにイギリスに移住しました。十代の頃からロンドンで歌手活動を始め、それと並行して紳士服で有名な”サヴィル・ロウ”でパターン・カッターをやっていたそうです。

 

   1972年には本名の略称であるレス・チャールズというアーティスト名でインディーズからシングルをリリースしています。

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  彼はソングライターのデモシンガーの仕事をやっていて、プロデューサーのベン・フィンドンと知り合いになります。ベン・フィンドンはのちにノーランズの「ダンシング・シスター」を手がける人です。

 彼はベンのスタジオでまずコック兼皿洗い、雑用係として雇われ、夜は車のフォード・ダゲハムの工場で働くというハードな日々を過ごしたといいます。

 そして、彼はベンと作品を作るようになり、まずベンの作詞/作曲/プロデュースによる「On The Run」というシングルを「Scorched Earth」という名義でリリースしています。  

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 その後彼は、何年か前に初めて自分で書いた「Love Really Hurts Without You」という曲をベンに聴かせます。彼が大好きだったモータウンの影響(フォー・トップス「アイ・キャント・ヘルプ・マイ・セルフ」)が色濃く現れた楽曲でした。するとベンも気に入りシングルとしてリリースすることになります。

 

 その際に、ベンが考えた芸名が”ビリー・オーシャン”でした。当時彼が住んでいた”オーシャン・エステイト”からとった説と、彼の故郷トリニダードに”オーシャンズ11”というサッカーチームがあるったからなど諸説あるようですが、ベンに”押し付けられた”芸名であったのは間違いないようです。

 

しかし、そのおかげもあったのか、「Love Really Hurts Without You」は全英2位、全米22位(1976年)の大ヒットになりました。

 

  実はこの曲、21世紀に入ってから映画やドラマで使われ、Spotifyではビリー・オーシャンの曲で最も再生されています。そんなこともあってか、先月(2021年4月)、あらためてアニメのPVが作られています。

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 翌1977年には「Red Light Spells Danger」という曲が全英2位になっています。

 1980年代に入ると彼のレーベルはメジャーのCBSに買収され、彼はCBS傘下のEPICの契約アーティストになります。

 そして、1981年にリリースされたシングルが「Nights (Feel Like Getting Down)」でした。全米R&Bチャート7位。当時僕はたぶん山下達郎の「サウンド・ストリート」でこの曲を初めて聴いたように記憶していますが、すぐに気に入りました。今も、僕が一番好きなビリー・オーシャンの曲はこれです。

 

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  しかし、彼はメジャーレーベルの風土と肌が合わず、もう音楽を辞めようとさえ思ったそうです。

 その頃、彼が出会ったのが新興レーベル” JIVE”を1981年に立ち上げていた(レーベルの母体は1971年に設立したZOMBA)クライヴ・カルダーで、彼はJIVEを新天地として選択し再出発することにします。

 

 ちなみにJIVEは1990年代にバックストリート・ボーイズ、イン・シンクブリトニー・スピアーズなどで大成功をおさめます。そのJIVEを最初に発展させたのがビリー・オーシャンだったのですね。

 

 クライヴ・カルダーは優れたプロデューサーを何人かビリーに紹介し、一緒に仕事をさせました。

 その一人がキース・ダイアモンド。ドナ・サマー、マイケル・ボルトン、ジェイムズ・イングラムなど1980年代に都会的でポップなR&Bを生み出した人です。彼もまたトリニダード出身でした。

 

 そして二人で作ったのが「カリビアン・クイーン」だったわけですが、実はこの曲最初は「ヨーロピアン・クイーン」というタイトルと歌詞で発売されていました。

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 しかし、全くヒットしなかったため、ビリーの当時のマネージャーはこの曲の12インチ・ヴァージョンを「カリビアン・クイーン」にしてはどうかと提案します。すると、この曲はじわじわとヒットし始め、ついに全米1位になった、というわけです。

 

 それから、この曲が大ヒットした理由のひとつは、この超有名な曲のテイストをうまく取り入れているからですよね。

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 ビリー・オーシャンという人は有名な曲のスタイルを使って、より明快に庶民的に翻訳するように曲を作る才があったようですね。そういうのは、日本では”ビーイング”に象徴されるように、ポップ・ミュージックが裾野を広げてゆくためには必要な才能なんだろうな、と僕は思います。

 

 さて、「カリビアン・クイーン」が大ヒットしたあと、調子に乗って(?)アフリカ向けのヴァージョンも作られていたそうです。タイトルは案の定「アフリカン・クイーン」。それなら「エイジアン・クイーン」も作ってくれればよかったのに、、。

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