まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ナッシング・フロム・ナッシング(Nothing From Nothing)」ビリー・プレストン(1974)

おはようございます。

今日はビリー・プレストン。1974年の全米1位の大ヒット曲です。

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Nothing from nothing leaves nothing
You gotta have something if you wanna be with me
Nothing from nothing leaves nothing
You gotta have something if you wanna be with me


I'm not trying to be your hero
Cause that zero is too cold for me
I'm not trying to be your highness
'Cause that minus is too low to see, yeah
Nothing from nothing leaves nothing
And I'm not stuffing, believe you me
Don't you remember I told ya
I'm a soldier in the war on poverty
Yeah, yes, I am


Nothing from nothing leaves nothing
You gotta have something if you wanna be with me
Nothing from nothing leaves nothing
You gotta have something if you wanna be with me
That's right, ha, yeah


Gotta have something if you wanna be with me
You gotta bring me something, girl, if you wanna be with me

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 ""ゼロ”から”ゼロ”を引いたってゼロになるだけさ

 もし君が僕と一緒にいたいなら 何か持っていなくちゃだめさ

 "無”から生まれた”無”は何も残しはしない

 もし君が僕と一緒にいたいなら 何か持っていなくちゃだめさ 

 

 僕は君のヒーローになろうってわけじゃない

 だって、ゼロ(零度)は僕には冷たすぎる

 僕は君にとっての殿下になろうってわけじゃない

 だってマイナスは低すぎてわからないのさ

 

 "無”から生まれた”無”は何も残しはしない

  苦しめるつもりはないんだ 信じてほしい

  君に話したことをおぼえてないのかい?

  僕は貧困撲滅運動の戦士なんだ   そうさ、僕は

 

  "ゼロ”から”ゼロ”を引いたってゼロになるだけさ

 もし君が僕と一緒にいたいなら 何か持っていなくちゃだめさ

 "無”から生まれた”無”は何も残しはしない

 もし君が僕と一緒にいたいなら 何か持っていなくちゃだめさ 

 

    何かを手にしようよ 僕と一緒にいたいなら

 何かを僕に持ってくるんだ ガール、君がもし僕と一緒にいたいなら” 

                                                         (拙訳)

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 ”Nothing From Nothing Leaves Nothing”なんて”禅問答”みたいな歌詞だなと思ったのですが、”僕は貧困撲滅運動の戦士だ”と歌っているところからすると、貧困からは貧困しか生まれない、何かを得るためにアクションを起こすんだ、と同胞に呼びかけている歌のようにも思えます。

 

 ビリー・プレストンといえば、日本の音楽ファンからは、ビートルズのレコーディング・メンバーであり、伝説的な”ルーフ・トップ・コンサート”(屋上ライヴ)で一緒に演奏したことで広く知られています。

 

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  彼にはまたローリング・ストーンズからもラブコールがあり、ツアーに参加したり、名盤「スティッキー・フィンガーズ」のレコーディングにも参加しています。

 *彼のオルガン・ソロが聴けます。

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 この曲の鍵盤も彼です。スライ&ザ・ファミリーストーンファミリー・アフェア

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     彼は1946年にテキサス州ヒューストンで生まれ、幼少期にロサンゼルスに移住しました。彼の音楽は完全に独学だったそうで、音楽のレッスンを受けたことはありませんでした。しかし、10歳の時には、マヘリア・ジャクソンなどのゴスペル歌手のバックでオルガンを演奏していたといいますから驚きです。

 そして、11歳でナット・キング・コールのTV番組でコールと共演を果たしています。

まさに”神童”だったんですね。

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 そして、1962年にリトル・リチャードのバンドにオルガン奏者として参加し、ハンブルクでのツアー中にビートルズと出会います。リトル・リチャードは当時ゴスペルを演奏していたそうですが、ワイルドなビートルズに対する観客の反応を目の当たりにし、これはヤバイと思ったといいます。

 

”「僕たちは演奏のテンポを上げたんだ」とプレストンは笑いながら振り返った。「僕はただリーダーについていって、本能のままにやったんだ。僕がロックンロールを演奏したのはそれが初めてだったんだ」”

(Los Angels Times   OCT. 6, 1989 )

 

 以前からジョンやポールはリトル・リチャードの影響を口にしていましたが、当のリチャードも彼らから影響を受けていたようですね。 

 

 そして、ちょうどこの頃だと思いますが、彼はまだ16歳で最初のアルバムをリリースしています。 


Greazee

   そして20代前半で、ビートルズのアップル・レコードと契約、二枚目のアルバムではジョージ・ハリスンのプロデュースでジョージの「マイ・スウィート・ロード」をカバーしています。彼のルーツであるゴスペル色がしっかりと表れています。


Billy Preston - My Sweet Lord

 

 彼のソロ・アーティストとしてのブレイクは1970年代前半、ハーブ・アルパートが率いるA&Mレコードに移籍してからおとずれます。

 

  1972年に全米2位の大ヒットとなった「アウタ・スペース(Outa Space)」。本人はヒットを確信していたそうですが、クラビネットのインスト・ナンバーでしたので、レコード会社はヒットするとは思わず当初シングルのB面にしていたそうですが、ラジオでどんどんオンエアされブレイクしたそうです。

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 そして、1973年に「ラウンド・イン・サークルズ(Will It Go Round in Circles)」が全米1位になります。

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 そして、彼にとって2枚目の全米1位になったのがこの「ナッシング・フロム・ナッシング」でした。

 この曲はアトランタのナイト・クラブで演奏したある晩、楽屋のピアノをなにげなく弾いているときに、”Nothing From Nothing"ということわざを思い出して、作ったものだそうです。

 

 

 ちなみに、この曲が収録されていたアルバム「キッズ・アンド・ミー」になるわけですが、このアルバムには彼自身が書いたなかで最も有名な「ユー・アー・ソー・ビューティフル」が収録されていました。

 彼の歌ったものはシングルになりませんでしたが、ジョー・コッカーがカバーして全米5位、そしてスタンダード・ナンバーになりました。

 

 こちらがビリーのオリジナル。


Billy Preston You Are So Beautiful 1974 YouTube

 そしてジョー・コッカーのヴァージョン。これまたストーンズビートルズに愛された鍵盤奏者であるニッキー・ホプキンスのピアノが素晴らしいです。


Joe Cocker - You Are So Beautiful

 

   ビリー・プレストンというのは本当に素晴らしい才能の持ち主であり、全米1位の大ヒットを2曲もあって実績も十分なのですが、ソロ・アーティストとしてはそこまで評価されていないような気もしますが、どうでしょう?

 (彼のA&M時代のソロ作品くらいはもうちょっと再評価されてもいいのに、と思いますが、、)

 

 最後は、彼の最後のシングルヒット。スティーヴィー・ワンダーの最初の奥さんだったことでも知られるシリータ・ライトとのデュエット曲「ウィズ・ユー・アイム・ボーン・アゲイン」(1979年全米4位)。作曲は「ガープの世界」など数々の映画を手がけているデヴィッド・シャイア、作詞はフィル・スペクターテディ・ベアーズを組んでいたキャロル・コナーズ。バスケット・ボールを扱ったコメディ映画「ザ・ドロッパーズ (FAST BREAK)」の主題歌でした。

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