まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ギヴ・ユー・アップ(Never Gonna Give You Up」リック・アストリー(1987)

 おはようございます。

 今日はリック・アストリーの「ギヴ・ユー・アップ」を。

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We're no strangers to love
You know the rules and so do I
A full commitment's what I'm thinking of
You wouldn't get this from any other guy

I just wanna tell you how I'm feeling
Gotta make you understand

Never gonna give you up
Never gonna let you down
Never gonna run around and desert you
Never gonna make you cry
Never gonna say goodbye
Never gonna tell a lie and hurt you

We've known each other for so long
Your heart's been aching, but you're too shy to say it
Inside, we both know what's been going on
We know the game, and we're gonna play it

And if you ask me how I'm feeling
Don't tell me you're too blind to see

Never gonna give you up
Never gonna let you down
Never gonna run around and desert you
Never gonna make you cry
Never gonna say goodbye
Never gonna tell a lie and hurt you
Never gonna give you up
Never gonna let you down
Never gonna run around and desert you
Never gonna make you cry
Never gonna say goodbye
Never gonna tell a lie and hurt you

Ooh (Give you up)
Ooh-ooh (Give you up) Ooh-ooh
Never gonna give, never gonna give (Give you up)
Never gonna give, never gonna give (Give you up)

We've known each other for so long
Your heart's been aching, but you're too shy to say it
Inside, we both know what's been going on
We know the game, and we're gonna play it

I just wanna tell you how I'm feeling
Gotta make you understand

Never gonna give you up
Never gonna let you down
Never gonna run around and desert you
Never gonna make you cry
Never gonna say goodbye
Never gonna tell a lie and hurt you
Never gonna give you up
Never gonna let you down
Never gonna run around and desert you
Never gonna make you cry
Never gonna say goodbye
Never gonna tell a lie and hurt you
Never gonna give you up
Never gonna let you down
Never gonna run around and desert you
Never gonna make you cry
Never gonna say goodbye
Never gonna tell a lie and hurt you

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僕らは愛を知らないわけじゃない
君はルールを知っているし、僕だってそうさ
僕の考えていることは、全面的なコミットメントさ
他のヤツからは得られないものなんだ

僕がどう感じているか伝えたいんだ
君に理解してもらわなければ

決して君をあきらめない
決して君を失望させない
あなたを浮気して見捨てたりしない
あなたを泣かせたりしない
サヨナラなんて言わない
あなたを嘘をついて傷つけはしない

僕たちはお互い知り合って長くなるね
君の心が痛んでいるけど
君はあまりにシャイでそれが言えない
心の中では、二人とも何が起こっているのかわかってる
僕たちはこのゲームを知っていて
プレイするつもりさ

そして、もし君が僕がどんな気持ちかってたずねたら
何もわからないなんて言わないで

決して君をあきらめない
決して君を失望させない
あなたを浮気して見捨てたりしない
あなたを泣かせたりしない
サヨナラなんて言わない
あなたを嘘をついて傷つけはしない
決して君をあきらめない
決して君を失望させない
あなたを浮気して見捨てたりしない
あなたを泣かせたりしない
サヨナラなんて言わない
あなたを嘘をついて傷つけはしない

僕たちはお互い知り合って長くなるね
君の心が痛んでいるけど
君はあまりにシャイでそれが言えない
心の中では、二人とも何が起こっているのかわかってる
僕たちはこのゲームを知っていて
プレイするつもりさ

僕がどう感じているか伝えたいんだ
君に理解してもらわなければ

決して君をあきらめない
決して君を失望させない
あなたを浮気して見捨てたりしない
あなたを泣かせたりしない
サヨナラなんて言わない
あなたを嘘をついて傷つけはしない
決して君をあきらめない
決して君を失望させない
あなたを浮気して見捨てたりしない
あなたを泣かせたりしない
サヨナラなんて言わない
あなたを嘘をついて傷つけはしない、、、

       (拙訳)

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  昔の大ヒット曲でも、今もなお人気があるものとあまり聞かなくなったものは、結構はっきり分かれていますが、このリック・アストリーの「ギヴ・ユー・アップ」、”当時はすごい流行ったけどあのユーロビートサウンドは今聴くとちょっと恥ずかしいよな〜なんて思いながらチェックしてみたらビックリ、ミュージックビデオは2009年にYouTubeにアップされてから10億回を突破し、Spotifyでは約4億6000万回再生されています。

 例えば、マイケル・ジャクソンで言えばYouTubeで一番再生されているMVが「ビリー・ジーン」でやはり約10億回ですから、この「ギヴ・ユー・アップ」の人気ぶりがよくわかります。

 80年代のヒットでは、1位がa-ha「テイク・オン・ミー」で13億回、2位がガンズの「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」で12億回、3位がそして、「ビリー・ジーン」でその次が「ギヴ・ユー・アップ」でした。

 

 しかし、よくよく調べてみると、2006年に画像掲示板”4chan"に、リンクをクリックすると勝手にこの曲の動画に飛ぶといういたずら、いわゆるミームがきっかけで、世界的に再生されたようで(この現象を”Rickrolling”と呼ぶそうです)、しかも、そのサウンドのある意味”ダサさ”がかえって面白がられたという側面があったようで、それが彼がアーティストとして復活するきっかけにもなったそうですから、世の中何が起こるか本当にわからないものですね、、、。

 

 アストリーは1966年にイギリスのランカシャー州で生まれています。

 1985年に彼は”FBI”というソウル・バンドのドラムを叩いていたそうですが、リード・シンガーがバンドを脱退したため、リード・ヴォーカルをやりたいと申し出たのだそうです。そして、プロデューサーのピート・ウォーターマンに注目され、ロンドンで彼のレコーディング・スタジオで"お茶汲み”から”テープ出し”などの仕事をしながらデビューを目指すことになりました。単なる雑用ではなく、飛び抜けてシャイな彼にスタジオに慣れてもらうという意図もあったそうです。

 

 ピート・ウォーターマン1984年に、マイク・ストックとマット・エイトキンから「Upstroke」という作品のプレゼンを受け、彼らとチームを組むことになります。

 (マイクとマットにとってピートは実は”第三志望”のプロデューサーだったそうです)

 それが、<ストック・エイトキン・ウォーターマン>ですね。モータウンの<ホランド=ドジャー=ホランド>を連想させるようなヒット請負3人組であり、90年代の小室哲哉を先取りするかのような、スタイルの明快なダンス・ミュージックで一世を風靡しました。

 基本音楽的にはストックとエイトキンが動き、それをウォーターマンが特別なビジネス感覚でまわしていたようです。

 彼らの最初の作品がその「Upstroke」(Agents Aren't Aeroplanes)でした。ストックとエイトキンは”女性版フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド”として構想したようです。

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 当時”Hi-NRGハイエナジー)”、ディスコをよりエレクトロ化しテンポもあげたいわば”変異種”ですね、それがアメリカから渡ってきてヨーロッパで人気になってきたので、彼らはいち早くそれを取り入れたわけです。

 そして、1985年には全英1位のヒットを飛ばします。

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 彼のレコード・デビューは1987年、リサ・カーターという女性とのデュエットでストック・エイトキン・ウォーターマンの作品ではなく、ベルギーとオランダでのみチャートインして終わっています。

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 そして、ソロ・シンガーとしてのデビューとなったのが、この「ギヴ・ユー・アップ」でした。

 プロデュースしたストック・エイトキン・ウォーターマンはこの頃はバナナラマカイリー・ミノーグなどを大ヒットさせていました。モータウンの大ファンだったウォーターマンは、ソウルフルな声を持つリックにモータウンのカバーをやらせたいと思ったそうですが、オリジナルで勝負するべきだと考えた他の2人から反対されたそうです。

 

 この曲のアイディアについて、マイク・ストックはこう回想しています。

「リック・アストリーの曲では、カイリーやバナナラマのようなサウンドにはしたくなかったので、コロネル・エイブラムスの『Trapped』という曲に注目して、あのシンコペーションの効いたベースラインを、僕たちの曲に合うように再現したんだ。それが、この曲を成功させるための特別な要素となった。だけど曲をちゃんと形にするのには何ヶ月かかかった。絶えずというわけじゃないけど、僕らはいつも後回しにしている曲がたくさんあって、その日のうちに違う曲をいくつも作業していたんだ」」

  (The Guardian 2017年3月)

   スタジオで働かされていたリックのデビューは、後回しにされていたんですね。

 ちなみにコロネル・エイブラムスの「Trapped」はこんな曲です。

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 「ギヴ・ユー・アップ」は、イギリスのシングルチャートで5週間トップになり、全米でも1位、合計25カ国で1位を獲得しました。

 しかし、MTV全盛の時代にもかかわらず、チャート1位になるまでミュージックビデオは作られなかったそうで、彼のことを声だけで黒人だと思っていた人も多かったそうです。

 そこから快進撃が続き「トゥゲザー・フォーエヴァー」も全英2位、全米1位になります。

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 しかし、4枚のアルバムを発表した1993年に彼は引退を決意します。まだ27歳でした。

  ツアーやプロモーションでひたすら移動を繰り返すうちに飛行機恐怖症になってしまったといいます。

 「ニューヨークに向かうためにヒースロー空港に向かう車の中で、マネージャーに涙ながらにこう言ったんだ。”車を止めてくれ。もうこれ以上は無理だよ。死んでしまいそうさ”って。子供の頃はポップスターになりたいと思っていたけど、それが嫌になるところまできてしまって、自分自身を嫌いになりそうだからこの仕事をやめなければいけなかった」

(Songfacts)

 彼は引退し、しばらくは子育てをメインにするおだやかな生活を過ごしていたそうです。

 復活を果たしたのは2001年、五枚目のアルバムをドイツだけでリリースをしました。

そして2005年には全世界でのリリースになるアルバム「ポートレイト」をリリース、そのあと例の”Rickrolling”の騒ぎで注目を集めます。

 しかし、次のリリースは11年後の2016年までブランクが空きますが(2012年にアルバムをリリースする予定でしたが頓挫してしまったようです)、発売したアルバム「50」はファースト・アルバム以来なんと29年ぶりの全英NO.1に輝くという、見事な復活劇を見せてくれました。

 

 最後は2019年のワイト島フェスティバルで彼がこの曲を歌っている映像を。

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