まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「想い出のサマー(Summer Of ’69)」ブライアン・アダムス(1984)

 おはようございます。

 今日はブライアン・アダムスの「想い出のサマー」です。

www.youtube.com

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I got my first real six-string
Bought it at the "Five and Dime"
Played it 'til my fingers bled
It was the summer of '69

Me and some guys from school
Had a band and we tried real hard
Jimmy quit and Jody got married
I shoulda known we'd never get far

Oh when I look back now
That summer seemed to last forever
And if I had the choice
I'd always wanna be there
Those were the best days of my life

Ain't no use in complainin'
When you got a job to do
Spent my evenin's down at the drive-in
And that's when I met you

Standin' on your mama's porch
You told me that you'd wait forever
Oh and when you held my hand
I knew that it was now or never
Those were the best days of my life

Back in the summer of '69

Man we were killin' time
We were young and restless
We needed to unwind
I guess nothin' can last forever - forever

And now the times are changin'
Look at everything that's come and gone
Sometimes when I play that old six-string
I think about ya wonder what went wrong

Standin' on your mama's porch
You told me it would last forever
Oh the way you held my hand
I knew that it was now or never
Those were the best days of my life

Back in the summer of '69

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初めて本物の6弦ギターを手にしたのは
”Five and Dime”で買ったんだ
指が血だらけになるまで弾いた
それは69年の夏だった

 

オレと学校の仲間たちは
バンドを組んで、本気でがんばった
ジミーは辞めてジョディは結婚してしまった
バンドでやっていけるわけがないと知っておくべきだった

 

今、振り返ってみると
あの夏は永遠に続くかのようだった
もしオレに選ぶことができたら
いつもそこにいたいよ
人生で最高の日々だった

 

仕事をやるときは
文句を言ってもしょうがないのさ
夕方はドライブインで過ごし
その時、君に出会ったんだ

 

キミの家のポーチに立って
永遠に待つと言ってくれたのに
キミがオレの手を握ったとき
今しかないとわかっていた
それが人生で最高の日々だった

 

69年の夏のことさ

 

オレたちは時間を無駄にしていた
若くて落ち着きがなかった
緊張をほぐす必要があった
永遠に続くものなんてないと思っていたけど

 

そして今、時代は変わり続けている
過ぎ去ったことを振り返って
時々、古い6弦のギターを弾くと
キミのことを思い どこで間違ったのかを考えるんだ

 

キミの家のポーチに立って
永遠に続くって言ってくれたのに
キミがオレの手を握った時
今しかないとわかっていた
それが人生で最高の日々だった

 

69年の夏のことさ

 (拙訳)

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 この曲はブライン・アダムスの最大のヒット・アルバム「レックレス」からシングル・カットされ全米5位のヒットになりました。彼にはこれ以上ヒットしたものはまだまだありますが、今日見てみると、Apple MusicでもSpotifyでも彼の人気曲のトップがこの曲でした。時間が経ってどんどん人気が高くなったのかもしれませんし、ちょうど今は夏なので、一時的に世界中でガンガン聴かれているだけなのかもしれませんが、どうなのでしょう。

 

 ブライアン・アダムスのたくさんのヒット曲をブライアン本人と共作したジム・バランスが自身のHPで楽曲解説していて、この曲についての説明も見つかりました。

 

ブライアン・アダムスと私は、1984年1月に私の地下スタジオで「Summer Of '69」を書きました。それから1、2ヶ月の間に、この曲は音楽的にも歌詞的にも何度も変更されましたが、ブライアンのアルバム『Reckless』に収録するほどの強い曲だとはまだ確信していませんでした。

 この曲は、私とブライアンの完全な50対50のコラボレーションでしたが、「Summer Of '69」を作ったときのことを一行ずつ、ここに思い出したことを書きます。

 

I got my first real six string, bought it at the "Five and Dime"

 

 僕が育った1950年代や60年代には、"Five and Dime "と呼ばれる店がありました。"Five and Dime "では、5セントや10セントで何でも買えると思われていましたが、必ずしもそうではありませんでした。今では「Doller Stores」と呼ばれています。 この歌詞のように、ブライアンも僕も "Five and Dime "でギターを買ったことはありません。私は13歳だった1965年のクリスマスに両親から初めてギターをもらいました。ブライアンは1972年、12歳のときに質屋で最初のギターを買いました」

 

 こんな風に一行一行彼の説明がついていきます。

(興味のある方はhttp://www.jimvallance.com/   をぜひチェックしてください)

”Five and Dime"はいわゆる”百均”のようなお店なんでしょうね。

 

 彼とブライアンは話し合いながら歌詞を書いていったようですが、彼によると、この曲は最初「Best Days of My Life」というタイトルがつけられていて、"Summer of '69”という言葉は一度しか出てこなかったらしく、タイトルの変更とともに歌詞から”Best Days of My Life”が出てくる回数を7回から3回に減らし、"Summer of '69”を1回から5回に増やしたそうです。

 

 さて、ジムによるとブライアンは1972年に12歳でギターを買ったそうですから、1969年はまだ9歳、歌詞とつじつまがあいませんね。

 ところが当の本人は"Summer of '69”の意味についてこう語っています。

 

「たくさんの人が年のことだと思っているけど、本当は夏に愛し合うという意味が大きいんだ。セクシャルなリファレンスとして'69を使っているのさ」

 (CBS NEWS  SEPTEMBER 8, 2008)

 

”セクシャルなリファレンス”とは、ズバリ体位のことのようです、、、。"Summer of '42"(邦題:おもいでの夏)なんて有名な映画もありましたが、その"Summer of <年>”という言い回しを使って、そこにセクシャルな数字をちょっと暗号っぽく入れようと彼は考えたのかもしれません。もともと、一度しか出てこないフレーズだったわけですから。

 それが、曲のタイトルにまでなって、その言葉が歌に出てくる回数も増えて、しかも大ヒット曲になってしまったわけですね。

 1969年は自分にとって歌詞のように想い出深い年だと言えば嘘になるし、かといって体位だなんて胸を張って言えないわけですし、、。ジレンマはずっとあったんでしょうね。彼もジムも一時はアルバムから外そうと考えたほどこの曲の評価は高くなく、まさかこんなにヒットするとは思わなかったらしいです。

 

  ところが共作者のジム・ヴァランスは1969年には17歳で、まさに”どんぴしゃ”なんです。

「1969年は素晴らしい年で、素晴らしい夏だった......特に音楽がね!

想像してみてごらんよ...ビートルズボブ・ディランローリング・ストーンズ、シカゴ、クリーム、クリーデンス・クリアウォーター、ザ・バンドサンタナザ・フージョー・コッカーレッド・ツェッペリンなどの新作が発売されてたんだ」

 

 彼にとってはこの曲の歌詞の半分くらいは自分を重ねているんじゃないでしょうか。ですから、ブライアンがいくら1969年は違う意味だと語っても、それにはまったく反応せず”1969年という年の夏”の歌だという立場をとり続けているようです。

タイトルで意図しているものが、共作者それぞれ異なっているという事態になってしまっているんですね。

 

 ある程度の年齢以上の洋楽ファンの方なら、1969年の夏にはウッドストックがあり、ロックが世の中を動かそうとした特別な年、特別な夏であったことをご存知だと思います。ですから、まだ当時9歳だったブライアンが1969年のことを歌うことに対して”ツッコミ”が多くあったのでしょう。他の年ならば、そこまで言われなかったように思います。逆に言えば、他の年がタイトルになっていたらインパクトは弱くなっていたでしょう。

 

 あるインタビューでブライアンは曲を作り始めた時に”It was the summer of '69”という言葉を投げたらピタッとはまったと語っているので、僕の推測では最初は深い意図のなかった言葉ではなかった数字なのだと思います。

 それが、思わぬ大ヒットになり反響も大きかったので、後づけ的にいろいろ説明するようになったんじゃないかと。そしてジョークを含めて退位だとか言うと、これまたおかしな反響が起き上がって、でも後には引けなくなって、と自体が錯綜していったんじゃないでしょうか。

 

 ですから、69というのは、作者の意図は置いておいて、その人にとって特別な年、夏を象徴している数字なのだと考えて、聴き手は自分の思い出の夏を思い浮かべればいいんでしょうね。

(ということで、僕の和訳は1969年ではなく69年という表記をとりました)

 

この曲は発売当時よりも、21世紀に入ってからの方が人気があるのではないかという現象が起きています。

 

 例えば、彼と名前がそっくりなライアン・アダムスもライヴでカバーしています。

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フー・ファイターズもカバーしています

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 他にもテイラー・スイフトのライヴでブライアンがこの曲を共演している動画も見つかり、この曲がこの十数年くらいですごく盛り上がっていたことがわかりました。

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 2009年にブラジルの”サガチーバ”というお酒の会社がとったアンケートで、この曲はイギリス人が好きなサマー・ソング1位になったそうです。僅差で2位になったのは一昨日、このブログで紹介したマンゴ・ジェリーの「イン・ザ・サマータイム」でした。

 この曲は、サマー・クラシックの座にしっかりと君臨しているようですね。

 

 

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