まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ホールド・オン・ホールド・アウト(Hold On Hold Out)」ジャクソン・ブラウン(1980)

 おはようございます。

 今日はジャクソン・ブラウンの大作「ホールド・オン・ホールド・アウト」です。


Hold on Hold Out

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Hold on hold out, keep a hold on strong
The money's in and the bets are down
You won't hold out long
They say you'll fall in no time at all
But you know they're wrong
They've known it all along

Yea- Hold on hold out, keep a hold on still
If you don't see what your love is worth
No one ever will
You've done your time on the bottom line
And it ain't no thrill
There's got to be something more
Keep a hold on still
You know what it is you're waiting for
Now you just hold on
Hold on hold out, hold on

 

Give up your heart and you lose your way
Trusting another to feel that way
Give up your heart and you find yourself
Living for something in somebody else
Sometimes you wonder what happens to love
Sometimes the touch of a friend is enough

Hold a place for the human race
Keep it open wide
Give it time to fall or climb
But let the time decide
Sometimes you wonder what's in this for you
But you wait, and you see
'Cause it's all you can do
Just to hold on
Hold on hold out, hold on

 

For the countless souls beaten by their goals
Keep a hold on now
And the ones betrayed by the deals they made
Keep a hold on
If you hold your ground it'll turn around
Keep a hold somehow

Hold on hold out, keep a hold on tight
Tonight's the night
Wake up and turn on the light
You fight, and you're right--
It's gonna take all your might...

You're a hold out
Well I'm a hold out too
But it took me all this time to figure out
Something you already knew
Will love be true? Can it pull you through?
How long? How strong?
Some things depend on you
See-- I always figured I was gonna to meet somebody here
And I don't know why
Why should love suddenly come down and just sweep me away
I want to fly
But there are so many things in my way

 

Anyway...
I guess you wouldn't know unless I told you
I.. I love you
And just look at yourself--
I mean what else would I do?

Hold on--

 

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 ”がんばって 持ちこたえるんだ 強くつかまって

  金が集められ 賭けが始まる

  君は長くはもたないだろう   すぐに負ける      とヤツらは言う

  でも君はヤツらが間違っていることを 最初から知っている

 

  がんばって 踏みとどまるんだ しっかりつかまって

  もし君が自分の愛の価値をわからなかったら

  誰がわかると言うんだ

  君は今まで最低ラインでやってきて 感動することなどなかった

  もっと違う何かがあるはずなんだ だからしっかり持ちこたえて

  君が待ち望んでいたものは何なのか 君は知っている

  さあ、粘り強く持ちこたえるんだ がんばって 

 

  あきらめて自分の心を投げ出してしまったら

  同じような他人を信じて道に迷ってしまう

  あきらめて自分の心を投げ出してしまったら

  他の誰かが持っているものをあてにして生きている自分に気づくだろう

  時々 愛はどうしてしまったのかと 君は思う

  時々 友達とのふれあいだけで十分に思える

 

     人類のための場所を確保して 広く開け放っておくんだ

  落ちるにしても這い上がるにしても 慌てることはない

  でも、すべてを決めるのは時だ

  時々 君はそれで何のメリットがあるのかと思うだろう

  でも君は待ち そして理解する

  だってそれが君にできるすべてのことだから

  ただしっかり持ちこたえて がんばるんだ

 

  目的地にたどりつけなかった数え切れない魂のために

  今は 耐えるんだ

  そして ヤツらが作った取引(政策)に裏切られた者たちのために

   踏ん張り続けよう

      君が一歩も引かなかったら 状況は変わるんだ

   なんとかして踏みとどまろう

 

  がんばって 粘り強く耐えて しっかりつかまるんだ

  今夜がその時 目を覚まして 灯りをつけて

  君は戦う 君は正しいのだから

  君の持っているすべての力で、、、

 

  君は持ちこたえられる人だよ 僕もそうだ

  でも、君がとっくに知っていたことを理解するのに

     こんなに時間がかかってしまった

   愛は通用するのだろうか?

        愛は君を困難から抜け出させてくれるだろうか?

  どれだけの間? どれくらい強いの?

  君次第で変わるものもある

  ねえ、僕はここで誰かに巡り会えるといつも思っていた

 

  でもわからないんだ なぜ愛は突然現れて 僕を運び去ってしまうのか

  飛んでいけたらいいけど 

  この先やらなければいけないことがたくさんあるんだ

 

  ともかく 僕が口に出さなかったら君はわからなかっただろう

  僕が君を愛しているって、、

  そして君はただ自分自身を見つめるんだ

  だって、他に何が僕にできるっていうんだい?

  

  耐え抜くんだ、、、           ”(拙訳)

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    この曲はジャクソン・ブラウンの1980年リリースのアルバム「ホールド・アウト」に収録されていて、シングル・カットもされています。

 Hold On・・・持続する つかまる がんばる

 Hold Out・・・抵抗し続ける 最後まで耐える

 なんとかつかまって耐え抜くんだ、と愛する人を励まそうとする歌です。

 

   この時の彼は数年前に最初の奥さんを自殺で亡くして、新しい恋人ができたタイミングでした。このアルバムは彼女に捧げられていますから、この曲にも彼女との関係は投影されているのでしょう。

 

 また、アーティストとしてブレイクしたタイミングでもありました。大きな会場でライヴをやるようになり、ロック・パフォーマーとしての意識が高まっていたわけです。

 大きな会場でライヴをやるようになると、それに見合ったレパートリーを求めて作風に変化が起こる、それはどんなロック・アーティストにも共通することです。

 彼と親交の深かったブルース・スプリングスティーンも然りです。

 彼の場合は結果的に、サウンドはポップで力強くなり、歌詞はストレートになりました。またそれは1980年という新しいディケイドそのものが持つ傾向でもありました。

 ただ、そういった彼の変化は、内省的で詩的なそれまでの彼の楽曲を好んできた熱心なファンや音楽評論家たちからは支持されなかったようです。

   「ホールド・アウト」は彼の唯一の全米NO.1アルバムにも関わらず、今なお昔からのファンからの評価が低く、当のジャクソン本人もよく思っていないのでしょう、このアルバムについて語っているインタビューはすごく少ないです。

 

 そういう意味では、この「ホールド・オン・ホールド・アウト」も、かつての彼のように詞曲の完成度だけをストイックに追求した作品ではなく、ライヴのハイライトになるということをまず念頭に置いた曲のようにも僕には思えます。

 8分もの長さのこの曲で言っているのは、愛する人に向けてひたすら、がんばるんだ、なんとか最後まで耐え抜くんだ、ということだけなんですから。

 そして、曲のクライマックスで、しかもナレーションで”I Love you"とつぶやくわけですが、それまで"I Love You"なんて直球を歌詞で使ったことのない彼が、、、と当時ファンを当惑させました。

 ただ、僕は彼が”I Love You"という言葉を歌で使ったということよりも、"I Love You"にメロディをつけなかった、ナレーションにしたということのほうが重要だったと思います。

 メロディにのせた"I Love You"では切実に伝わらない、彼はそう思ったんじゃないでしょうか。

 

 僕がこの曲のことをずっと記憶しているのは、彼の作品としては完成度は決して高くないかもしれないけれど、彼らしくなく”勢い”でいっているその生々しさに、かえって彼自身の”もがき”が現れているようなきがするからです。歌の言葉に頼り切るのではなく、サウンドの力を信じて押し切ってくるようなパワーを感じるのです。

 

 ポジティヴでもネガティヴでもない”中途半端な”自分の人生を、なんとかエンジンを回転させて走り抜けなくてはいけない、そんな気持ちにさせてくれるのです。

 

 サウンド面で「ホールド・オン・ホールド・アウト」やアルバム「ホールド・アウト」に大きく貢献したのはキーボーディストのクレイグ・ダーギーで、この曲だけは二人の共作です。

 クレイグはジャクソンの他にジェイムス・テイラーやクロスビー、スティルス&ナッシュなどのサポートをつとめた、アメリカ西海岸を代表するキーボーディストです。

ジェームス・テイラーのバック・バンドだったダニー・コーチマー、リーランド・スクラー、ラス・カンケルと”セクション”というバンドは日本の洋楽ファン方も人気でした。

 1973年にはソロ・アルバムもリリースしていて,その中の「イエロー・ビーチ・アンブレラ」という曲が僕は大好きなのですが、スリー・ドッグ・ナイトやベッド・ミドラーなどにカバーされています。

 

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 それから、浜田省吾に「僕と彼女と週末に」という大作の曲があって、「ホールド・オン・ホールド・アウト」がヒントになっていると言われています。僕もそう思います。ただ、それは長尺の曲で後半でナレーションを使ってクライマックスに向かうという”枠組み”やざっくりしたイメージだけで、もちろん曲の内容は似ていません(かえって浜省の方が歌詞できちんと物語っているようにも思えます、、)。

 

 結局、僕が何が言いたいかというと、浜省に大作を書かせたように、この曲には聴くものを駆り立てるような魅力があるということなんです。

 

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