まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングのエピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”なものになってしまったのかもしれませんが、みなさんの毎日の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出なども絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「オール・サマー・ロング(All Summer Long)」ザ・ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)(1964)

 おはようございます。

 8月も今日で終わりですので、名残を惜しんでまたまたビーチ・ボーイズの曲にしました。


All Summer Long (Remastered)

 

Sitting in my car outside your house
Remember when you spilled coke all over you blouse
T-shirts, cut-offs, and a pair of thongs
We've been having fun all summer long


(All summer long you've been with me)
I can't see enough of you
(All summer long we've both been free)
We've been having fun all summer long
I can't see enough of you

Won't be long until summer time is through
(Summer time is through)
Not for us now

Miniature golf and Hondas in the hills
When we rode the horse we got some thrills
Every now and then we hear our song
We've been having fun all summer long

Won't be long until summer time is through
(Summer time is through)
Not for us now

Every now and then we hear our song
We've been having fun all summer long
We've been having fun all summer long、、、

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   ”キミの家の外に停めた車の中で座ってる

    キミはブラウスにコーラを全部こぼしたことがあったね

 

   Tシャツ、カット・オフ・ジーンズに1組のビーチ・サンダル

           ひと夏中ずっと 僕らは楽しんだ

   

   (夏の間ずっと キミは僕と一緒にいたね)

   キミがよく見えないよ

   (夏の間ずっと 僕らは自由だった)

   もうすぐ夏が終わってしまう(夏は終わる)

   今はまだ僕らの夏は終わっちゃいない

   

   ミニチュア・ゴルフと丘に停まっているホンダの車たち

   一緒に馬に乗った時は ワクワクしたね

            時々 僕たちの歌が聴こえてくる

           ひと夏中 僕らは楽しく過ごしてきたんだ

  

   もうすぐ夏が終わってしまう(夏が終わる)
   今はまだ僕らの夏は終わっちゃいない

   時々 僕たちの歌が聴こえてくる  

   ひと夏中 僕らは楽しく過ごしてきたんだ ”  (拙訳)

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 この曲の歌詞の多くを書きメイン・ヴォーカルをとったのはマイク・ラヴ

 ただし、歌詞の一番の、コーラをブラウスにこぼしたというくだりは、ブライアンと彼の最初の奥さんマリリンとの実話がベースになっているそうです。

 

「結婚は厳しいものだった。ぼくは若かったし、結婚にはあまり向いていなかった。ほかの女の子たちとすごした時間も多かったしね。マリリンへの償いとして、彼女のための曲をもっとたくさん書こうとした。<オール・サマー・ロング>では、ぼくらがはじめて出会ったパンドラズ・ボックスで、ぼくが彼女にホット・チョコレートをこぼしてしまったことをちょっとしたジョーク仕立てで曲にしている。出てくる物をちょっとだけ変えてね。ホット・チョコレートは、歌詞としてうまく収まるようにコーラに変えたし、彼女がこぼしたことにしたのも、そのほうがおかしさが増すように思えたからだった。」

                      (「ブライアン・ウィルソン自伝」)

 

 調べてみるとブライアン・ウィルソンは22歳、マリリンはまだ17歳というまだ”幼い”カップルだったようです。うまくいかない結婚生活というリアルな問題に対して、創作というファンタジーで対処しようとしている彼の無垢さが、痛々しくさえ感じますが、、、。

  ちなみに、パンドラズ・ボックスとは当時西ハリウッドのサンセット・ストリップにあったナイト・クラブで、ビーチ・ボーイズもよく演奏していたそうです。

 また、マリリンはこの頃ハニーズという女性3人組ボーカル・グループを結成していて、ブライアンのプロデュースで作品をリリースしていました。"ビーチ・ボーイズのガールズ版”というアイディアでした。

 スティーヴン・フォスターの「故郷の人々(スワニー河)」をサーフィン・ミュージック化したこんな曲もやっています。


The Honeys - Surfin' Down the Swanee River (1963)

 

  そして、古い映画ファン(!)には1973年の「アメリカン・グラフィティ」のエンド・クレジットに流れる曲として有名ですね(僕もこの映画で、初めてこの曲を聴いたように思います)


American Graffiti (1973) End Credits (Showcase 2020)

   卒業直前の高校生たちの”最後の夏”を描いたこの映画のエンディングには、これ以上ピッタリな曲はなかったはずです。ちなみに映画は1962年という時代設定でしたが、この曲は1964年のリリース、時代の整合性よりも、映画そのものの世界観との整合性のほうが勝ったということでしょう。

 (登場人物がその後どうなったかをテロップで示すこの映画の手法を真似した映画やTVドラマをその後たくさん見かけました)

 

 「オール・サマー・ロング」の魅力は、ドラマティックな演出などは一切なしで、

”ブラウスにコーラをこぼした”とか、誰にもありそうなエピソードと”Tシャツ、カット・オフ・ジーンズに1組のビーチ・サンダル”とか、”ホンダの車”とかこの時代の西海岸の若者をイメージさせるものを並べることで、そこから”あたりまえ”のものが”あたりまえ”だからこそ、かえって貴重なんだってことを教えてくれるところだと僕は思います。

  たとえ特別なことが起きなくても、10代の夏っていうのは特別なものなのだったかもしれないな、とずいぶん年をとってから思えてきたりします。

 特にその頃聴いた音楽を聴くと、そんな気持ちになることがありますよね。

 

オール・サマー・ロング +3

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アメリカン・グラフィティ (字幕版)

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  • 発売日: 2014/03/15
  • メディア: Prime Video
 

 

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