おはようございます。
今日はアンディ・ウィリアムスの「イッツ・ザ・モスト・ワンダフル・タイム・オブ・ザ・イヤー(It's the most wonderful time of the year )」です。
It's the most wonderful time of the year
With the kids jingle belling
And everyone telling you "Be of good cheer!"
It's the most wonderful time of the year
It's the hap-happiest season of all
With those holiday greetings
And gay happy meetings when friends come to call
It's the hap-happiest season of all
There'll be parties for hosting
Marshmallows for toasting
And caroling out in the snow
There'll be scary ghost stories
And tales of the glories
Of Christmases long, long ago
It's the most wonderful time of the year
There'll be much mistletoeing
And hearts will be glowing when loved ones are near
It's the most wonderful time of the year
There'll be parties for hosting
Marshmallows for toasting
And caroling out in the snow
There'll be scary ghost stories
And tales of the glories
Of Christmases long, long ago
It's the most wonderful time of the year
There'll be much mistletoeing
And hearts will be glowing when loved ones are near
It's the most wonderful time
It's the most wonderful time
Oh, the most wonderful time of the year
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一年で最も素晴らしい時期さ
子どもたちがベルを鳴らして楽しみ
みんなが「元気でね!」と声をかける
一年で最も素晴らしい時期さ
最もハッピーな季節さ
ホリデーの挨拶を交わして
友達が訪ねてきて楽しくハッピーな集まりがある
最もハッピーな季節さ
パーティーを開いたり
マシュマロを焼いたり
雪の中でキャロルを歌ったり
怖い幽霊の話をしたり
はるか昔のクリスマスの偉大な物語を語ったり
一年で最も素晴らしい時期さ
たくさんのヤドリギが飾られて
愛する人がそばにいると心が温かくなる
一年で最も素晴らしい時期さ
パーティーを開いたり
マシュマロを焼いたり
雪の中でキャロルを歌ったり
怖い幽霊の話をしたり
はるか昔のクリスマスの偉大な物語を語ったり
一年で最も素晴らしい時期
たくさんのヤドリギが飾られて
大切な人がそばにいると心が温かくなる
一年で最も素晴らしい時期さ
一年で最も素晴らしい時期さ
ああ、一年で最も素晴らしい時期さ (拙訳)
「イッツ・ザ・モスト・ワンダフル・タイム・オブ・ザ・イヤー」ヤマハぷりんと楽譜はこちら
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この「イッツ・ザ・モスト・ワンダフル・タイム・オブ・ザ・イヤー」は、1963年にアンディ・ウィリアムスが「アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム」のためにレコーディングしたもので、シングル曲ではありませんでした。その当時、レコード会社は「ホワイト・クリスマス」のカバーをプロモーション・シングルに選んだんです。
彼は「ムーン・リバー」など有名曲のカバーを歌うことで人気でしたから、「ホワイト・クリスマス」は妥当な選曲ですし、以前にこのブログの記事(ダーレン・ラブの「クリスマス」)で書いたように、1963年のクリスマス・シーズンというのはケネディ暗殺の影響がアメリカ国内にずっと尾を引いていたので、「イッツ・ザ・モスト・ワンダフル・タイム・オブ・ザ・イヤー」なんて明るい曲をシングルにしても、世の中のムードには合わなかったでしょう。
それよりも、第二次大戦時に多くの兵士や国民を癒したという「ホワイト・クリスマス」の方が、心情的にしっくりしたのだろうと思います。
しかし、この曲は2010年代から2020年代にかけて世界中のシングルチャートに頻繁にランクインするようになりました。2020年にアメリカで最高5位を記録し、2021年にはイギリスで9位にランクインされています。昨年はカナダやフランス、オランダ、ニュージーランドでもトップ10入りしています。そして、クリスマス・ソングがチャートインし始めた今年(2024年)11月30日のアメリカ、ビルボード・チャートでは47位で再登場。これはマライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」、ブレンダ・リー「ロッキン・アラウンド・ザ・クリスマス・ツリー」、ワム「ラスト・クリスマス」に次ぐ人気なんです。
サブスクで音楽を聴く時代になって、かつてスーパー・スターたちの代表曲が”書き換え”られていますが、(Spotifyで世界で一番聴かれているビートルズの曲はぶっちぎりで「ヒア・カムズ・ザ・サン」なんですから)、今ではアンディの代表曲も「ムーン・リバー」じゃなくてこの「イッツ・ザ・モスト・ワンダフル・タイム・オブ・ザ・イヤー」でSpotifyではなんと9億回も再生されています。しかも人気ベスト5は全部クリスマス・ソング(うち4曲は「アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム」)。
アンディ・ウィリアムス=クリスマスの歌を歌う人
なんて言い切っちゃってもいいほどの状況になっています。
さて、アンディ・ウィリアムスを世界的な人気者にした大きな要因の一つに「アンディ・ウィリアムス・ショー」という自身がホストのテレビ番組を1962年から1971年にかけてやっていたことがあげられます。
この番組でアンディの歌につけるコーラス、ゲストとのデュエットなどのアレンジをすべて手掛けていたジョージ・ワイルが彼の音楽的パートナー、エディ・ポーラと一緒に番組のために書き下ろしたのがこの曲でした。それを毎年クリスマスに演奏するようになり、どんどん定着していったわけです。
ちなみに、アレンジしたロバート・マージーは「ムーン・リバー」をはじめアンディの代表作の多くを手掛けたほか、ボビー・ヴィントンの「ミスター・ロンリー」など数々の実績を持つ人です。
1986年にジョニー・マティスが取り上げたあたりから、いろんなシンガーにカバーされ始めましたが、21世紀、特に2010年代に入ってから飛躍的に伸びています。
この”遅れてきた”人気には、何か決定的な要因があったというより、長年じわじわと積み重なってきたものがあるときに一気にブレイクポイントを超えた、そんな感じのように思えます。
しかし、思い返してみると僕が洋楽を聴き始めた1970年代から1980年代にかけてとか、彼やジョニー・マティスみたいな、保守的で毒のないシンガーは特にロック・ファンから忌み嫌われていましたよね。ロック好きが一番敵対視する”大人”を代表する音楽とでも言ったらいいでしょうか。僕も”洋楽に詳しくない中高年が聴く洋楽(変な表現ですが、、)"だと言う偏見があって聴かなかったですし(苦笑。
しかし、これだけの年月が経つとそういうバイアスが外れたというか、状況はずいぶん変わったんでしょうね。
毒が蔓延しているような今の世界の中では、アンディ・ウィリアムスやジョニー・マティスが象徴するような”健全な”世界観は圧倒的にレアに思えます。というか、彼らの音楽が象徴していた”安定した中流階級”なんて消滅してしまい、もはや”郷愁”の中にしかないのかもしれないと思ってしまいます。
歌詞を読んでも分かる通り、この曲はクリスマスの本来のポピュラーな過ごし方を歌っています。ほころびがひとつもない”古き良き時代のクリスマス”です。きっとそういうものに郷愁を感じながらこの曲を聴く人は少なくないように思います。
もし、僕が若い頃にこの曲を耳にしたら、嘘っぽいというか”きれいごと”だと感じて斜に構えてちゃんと聴かなかったんじゃないかって思います。
でも、今の時代はまわりを見渡してもネガティヴなことばかりが目につく、そんなご時世ですから、せめてクリスマスくらいはリラックスして明るい気分で過ごしたい、それがたとえ”きれいごと”だっていいじゃないか、そんなふうに僕は今感じています。
この曲が今、世界的に人気なのも、当たり前のクリスマスのありがたみが感じられるような時代になって、気分だけでもクリスマスらしく過ごしたい、という願いもあるんじゃないかと思います。
最後は「アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム」から「イッツ・ザ・モスト・ワンダフル・タイム・オブ・ザ・イヤー」に次ぐ人気曲で、近年クリスマス・シーズンになるとヒットチャートに”帰ってくる”「Happy Holiday~The Holiday Season」を。