おはようございます。
今日は「イッツ・ビギニング・トゥ・ルック・ア・ロット・ライク・クリスマス(It's Beginning To Look a Lot Like Christmas)」です。
It's beginning to look a lot like Christmas
Everywhere you go
Take a look at the five and ten
It's glistening once again
With candy canes and silver lanes aglow
It's beginning to look a lot like Christmas
Toys in every store
But the prettiest sight to see is the holly that will be
On your own front door
A pair of hop-a-long boots and a pistol that shoots
Is the wish of Barney and Ben
Dolls that will talk and will go for a walk
Is the hope of Janice and Jen
And Mom and Dad can hardly wait for school to start again
It's beginning to look a lot like Christmas
Everywhere you go
There's a tree in the Grand Hotel, one in the park as well
It's the sturdy kind that doesn't mind the snow
It's beginning to look a lot like Christmas
Soon, the bells will start
And the thing that will make them ring is the carol that you sing
Right within your heart
It's beginning to look a lot like Christmas
Toys in every store
But the prettiest sight to see is the holly that will be
On your own front door
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ずいぶんクリスマスらしくなってきたね
どこを見ても感じるよ
雑貨屋をちょっとのぞいてごらん
また輝いているよ
キャンディケインや銀色の通りが光っているからね
ずいぶんクリスマスらしくなってきたね
どの店にもおもちゃが飾られている
でも一番素敵な景色は君の玄関のドアに飾られる
ヒイラギさ
カウボーイ・ブーツとピストルは
バーニーとベンの願ったもの
一緒におしゃべりしたり散歩できる人形は
ジャニスとジェンが望んだもの
そしてお父さんお母さんはまた学校が始まるのが
待ちきれないのさ
ずいぶんクリスマスらしくなってきたね
どこに行っても感じるよ
グランドホテルにも、公園にも木があるよ
雪もへっちゃらな頑丈な木が
ずいぶんクリスマスらしくなってきたね
もうすぐ鐘が鳴り始める
その鐘を鳴らすのは、君の心の中から
歌うキャロルだ
ずいぶんクリスマスらしくなってきたね
どの店にもおもちゃが飾られている
でも一番素敵な景色は君の玄関のドアに飾られる
ヒイラギさ (拙訳)
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歌詞の中の”the five and ten”は5セント、10セント均一の雑貨屋、日本で言う”100均"でしょうか。"hop-a-long boots"は1940年代から50年代にかけて映画やテレビで子供達から人気だったカウボーイ「ホパロング・キャシディ(Hopalong Cassidy)」のブーツを模した衣装用ブーツのことなんだそうです。
さて、アメリカにASCAP(米国作曲家作詞家出版者協会)と言う団体があって、毎年アメリカのホリデー・ソング(クリスマス・シーズンの歌)で、サブスクの再生回数、ラジオのオンエア回数、コンサートの演奏回数などを集計した人気ランキングを発表していますが、2023年の結果は以下の通りでした。
1位 “It's Beginning to Look a Lot Like Christmas” (1951)
2位 “A Holly Jolly Christmas” (1962)
3位 “Sleigh Ride”(そりすべり) (1948)
4位 “Jingle Bell Rock” (1958)
5位 “Let It Snow, Let It Snow, Let It Snow” (1945)
6位 “Rudolph the Red-Nosed Reindeer” (赤鼻のトナカイ) (1949)
7位 “Rockin’ Around the Christmas Tree” (1958)
8位 “All I Want for Christmas Is You”(恋人たちのクリスマス) (1994)
9位 “Santa Claus Is Comin’ to Town”(サンタが街にやってくる) (1934)
10位 “It’s the Most Wonderful Time of the Year” (1963)
全部”軽快な”曲なんです。「ホワイト・クリスマス」や「クリスマス・ソング」といった落ち着いた曲よりも明るく軽快な曲が求められているわけで、やっぱり今はメロディよりもリズムが主役の時代ですし、暗いご時世だからクリスマスくらいは楽しい気分でいきたい、ということもあるんでしょうか。
そして、この「イッツ・ビギニング・トゥ・ルック・ア・ロット・ライク・クリスマス」が1位なんです。ちなみに2022年も1位でした。この曲は近年”アメリカ人が最も耳にするクリスマス・ソング”というわけです。
この歌が発表されたのが1951年ですから、73年も前のことになります。作者はメレディス・ウィルソン。ミュージカル「ザ・ミュージック・マン」を手掛けた作曲家です。「ザ・ミュージック・マン」ではビートルズのカバーで有名なこの曲も使われていました。
さて、「イッツ・ビギニング・トゥ・ルック・ア・ロット・ライク・クリスマス」を初めてレコード化したのが”ペリー・コモ・アンド・フォンテイン・シスターズ・ウィズ・ミッチェル・エアーズ&ヒズ・オーケストラ”。ずいぶん長い名義ですが、当時フランク・シナトラと並ぶ人気エンターテイナーだった、ペリー・コモと三人組女性ボーカル・トリオのフォンテイン・シスターズが歌い、その演奏をミッチェル・エアーズさん率いるオーケストラが務めた、ということですね。
このオリジナル・ヴァージョンは2004年に映画「ポーラー・エクスプレス」で使われたほか、今も大人気で3年前に新たなPVが作られ、Spotifyでは4億回以上再生されいます。
ペリー・コモにわずか一月遅れて(1951年11月)この曲をカバーしてリリースしたのが「ホワイト・クリスマス」のビング・クロスビーでした。「キラーニーのクリスマス(Christmas in Killarney)」という曲のB面に収録されていました。
1955年には「ホワイト・クリスマス」の収録された有名な彼のクリスマス・アルバムにも収録され、今に至っています。ちなみに日本盤のほうは「クリスマスらしくなってきた」という直訳ですが、なんか憎めない(笑)邦題がついていました。
そして、昨日このブログで取り上げた「イッツ・ザ・モスト・ワンダフル・タイム・オブ・ザ・イヤー」をカバーしたジョニー・マティスが、1986年に同じクリスマス・アルバムでこの曲をカバーしていて、彼のヴァージョンは映画「ホーム・アローン2」で使われています。
そして、”国民的シンガー”たちに歌われて浸透していったこの曲を、若い層に向けてもアピールするようなカバーが生まれました。
歌ったのはカナダ出身のシンガー、マイケル・ブーブレです。
ブーブレは、フランク・シナトラやトニー・ベネットたちに影響を受けたクラシックなスウィングやジャズスタイルを現代風にアレンジすることで人気を得ました。彼が現れた2000年代初頭はクラシックやジャズなど、懐かしいスタイルの音楽をやる若いアーティストが注目されましたよね。ジャズ系ではジェイミー・カラム、クラシック系ではジョシュ・グローバンやイル・ディーヴォなどが大スターになりました。ブーブレはその流れの中でも最大級の成功を収めました。
シナトラも、ベネットもナット・キング・コールなどクラシックなジャズのスタイルの国民的シンガーたちは、みなクリスマス・アルバムも大人気なのですが、彼もそれに倣ったのか、2011年に「クリスマス」というアルバムをリリースすると、まさに彼の代名詞になるような特大ヒットになったんですね。
アメリカ、イギリスを含む15ヵ国以上でチャートの1位になり、イギリスでは史上最も売れたクリスマス・アルバムになり、世界的には21世紀で一番売れたクリスマス・アルバムなのだそうです。
本人の予想以上にクリスマス・アルバムが大成功したため、今では毎年クリスマス・シーズンになると『マイケル・ブーブレが冬眠から目覚める』というクリスマス・ミームがネットで拡散するまでになっているそうです。
彼は知り合いからそのミームを見せられると彼は怒ってみせたそうですが、Today.comのインタビューでは「正直に言って、新しいクリスマスカードのような存在になったなんてなんてクールなことなんだと思うよ」と語っていたそうです。
12月7日のアメリカ、ビルボードのアルバム・チャートを見ると彼の「クリスマス」は12位に入り、今年も冬眠から目覚めたようです。クリスマス・アルバムとしては、ビング・クロスビー、マライア・キャリー、ナット・キング・コールなどを抑えて一番のポジション。現在世界で最も人気のあるクリスマス・アルバムと言っていいのかもしれません。
最後にこのアルバムからもう1曲。これもなぜか今になって大人気になった古いクリスマス・ソング「A Holly Jolly Christmas」を。これは歌手で俳優のバール・アイヴス(Burl Ives)が1965年にリリースしたもので、リリースから54年もたった2019年に米ビルボード・チャートで3位になっています。