まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「恋人たちのクリスマス(All I Want For Christmas Is You)」マライア・キャリー(1994)

 おはようございます。

 今日はクリスマス・ソングの大人気曲をあえてピックアップ。


Mariah Carey - All I Want For Christmas Is You (Official Music Video)

 

I don't want a lot for Christmas
There is just one thing I need
I don't care about the presents
Underneath the Christmas tree
I just want you for my own
More than you could ever know
Make my wish come true
All I want for Christmas is you,


I don't want a lot for Christmas
There is just one thing I need 
Don't care about the presents
Underneath the Christmas tree
I don't need to hang my stocking
There upon the fireplace 
Santa Claus won't make me happy
With a toy on Christmas Day


I just want you for my own 
More than you could ever know 
Make my wish come true
All I want for Christmas is you
You, baby


Oh, I won't ask for much this Christmas
I won't even wish for snow 
I'm just gonna keep on waiting
Underneath the mistletoe
I won't make a list and send it
To the North Pole for Saint Nick 
I won't even stay awake to
Hear those magic reindeer click


'Cause I just want you here tonight 
Holding on to me so tight 
What more can I do?
Oh baby, all I want for Christmas is you
You, baby


Oh, all the lights are shining
So brightly everywhere 
And the sound of children's
Laughter fills the air 
And everyone is singing 
I hear those sleigh bells ringing 
Santa, won't you bring me the one I really need? 
Won't you please bring my baby to me?

 

Oh, I don't want a lot for Christmas
This is all I'm asking for 
I just wanna see my baby
Standing right outside my door


Oh, I just want you for my own 
More than you could ever know 
Make my wish come true
Oh baby, all I want for Christmas is you


You, baby
All I want for Christmas is you, baby 、、、

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クリスマスに欲しいものはそんなにないの
私に必要なものはたったひとつ
プレゼントなんてどうでもいい
クリスマスツリーの下
ただあなたと一緒にいたいの
あなたが考えるよりずっと
私の願いを叶えて
クリスマスに欲しいのはあなただけ


クリスマスに欲しいものはそんなにないの
私に必要なものはたったひとつ
クリスマスツリーの下のプレゼントなんてどうでもいい
暖炉の上に靴下をかける必要もないわ
サンタクロースがクリスマスのおもちゃをくれても
私を幸せになれない

 

ただあなたを私のものにしたいの
あなたが考えてるよりずっと
私の願いを叶えて
クリスマスに欲しいのは
あなたなの、 ベイビー

 

ああ、今年のクリスマスは多くを望まないわ
雪さえ願ったりしない
ただ待ち続けるの
ヤドリギの下で
リストを作ってセイント・ニックのいる
北極へに送ったりもしない
魔法のトナカイの足音を聞くために
ずっと起きてたりしない

 

だって今夜あなたにここにいて欲しいから
抱きしめて 強く
これ以上私に何ができるの?
ああベイビー、クリスマスに欲しいのは あなただけ
あなたなの、 ベイビー

 

あらゆる光が輝いている
とても明るく 至る所で
子供たちの笑い声が空気を満たし
みんなが歌っている 
そりの鈴の音が聞こえる 
サンタさん、本当に私に必要なものは持ってきてくれないの?
私のベイビーを連れてきてはくれないの?

 

ああ、クリスマスに欲しいものはたくさんはない。
これだけでいいの
私のベイビーに会いたいだけなの
ドアの外に立っているわ

 

ただあなたを私のものにしたいの
あなたが考えてるよりずっと
私の願いを叶えて
クリスマスに欲しいのはあなたなの

 

あなたなの、ベイビー

クリスマスに欲しいのはあなたなの       (拙訳)

 

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マライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」ぷりんと楽譜

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  この曲が発売されたとき、ちょうど僕は発売元のレコード会社の洋楽部の宣伝マンとして関わっていました。

 ほんとに、飛ぶように売れるというのはこういうことか、と思うくらいCDが売れました。宣伝マンとしても一切苦労した記憶はなかったです(苦笑。

 

   テレビドラマ「29歳のクリスマス」の主題歌になったということが大きかったですね。あと、1994年の日本はバブルが終わったとはいえ、今では考えられないくらいクリスマスは大盛り上がりしていました。クリスマスに予定がないなどと言うと”罪人”を見るかのような目で見られた、そんな時代です(なんか、辛かった、、)。

 

 そのムードとこの曲がまたドンピシャだったんですね。この曲が入ったアルバム「メリークリスマス」は当時の日本の洋楽アルバムの売上記録を作ったはずです。

 

 今では本国アメリカでもクリスマスの定番になっていますが、当時はそれほどではありませんでした。だいたい、この曲はシングルカットすらされませんでしたし。世界で一番最初にこの曲が大ブレイクしたのは日本だったはずです。 

 

  さて、このブログはポップスの裏方に言及することが多いのですが、今回もこの曲をマライアと共作したウォルター・アファナシエフと言う人にスポットを当てたいと思います。彼なくして、マライアの成功はなかったと思えるほどの貢献者です。

 

  彼はマライア以外も数多くのアーティストを手掛け、プロデューサーとして、セリーヌ・ディオンが歌った映画「タイタニック」の主題歌「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」でグラミー賞を受賞している、1990年代を代表する大ヒットプロデューサーです。

 

  彼は名前からわかる通りロシア人ですが、ブラジル生まれというポップ・ミュージックの世界では珍しいプロフィールの持ち主です。

 

  1980年頃サンフランシスコに渡りキーボーディストとして活動を始め、ジャズ・バイオリニスト、ジャン・リュック・ポンティのバンド・メンバーになったことからチャンスがひらけ、その後、80年代を代表するプロデューサー、ナラダ・マイケル・ウォルデンのキーボーディストとして採用され、数々のレコーディングを経験し、共同プロデュースもするようになります。

 

  ナラダは元々は超絶的な技巧を持つスーパー・ドラマーとして有名でしたが、80年代には打ち込みのダンス・ポップで数々の大ヒットを飛ばしました。

    ウォルターはそこでドラムのプログラミングを始めとする打ち込みをマスターしたようです。

    腕の立つキーボーディストでありながら、ドラム・プログラミングにも長けているというのは、大変珍しいことで、彼が重宝された大きな理由でもあったのだと僕は思います。

 

  そして、ナラダがマライアのデビュー・アルバムの何曲かをプロデュースしたときに、現場でのウォルターの素晴らしい仕事ぶりを見たレコード会社(ソニー)のトップが、マライアのアルバムの中の1曲のプロデュースを彼に任せることにします。

  それが、マライアのセカンドシングル「Love Takes Time」です。


Mariah Carey - Love Takes Time

 

   マライアはアマチュア時代から現在まで一貫してオリジナル曲は誰かと共作するスタイルをとっています。

 このことが、彼女が息長く活躍できた隠れた要因になったと僕は思っています。

 

 1990年代以降、R&Bシンガーはヒップホップのトラックに合わせて歌う手法が現れ、現在はそれが完全に主流です。ビヨンセなんかが代表ですね。

 マライアはセカンド・アルバムから、トラックメイカーとの共作をやっていましたから、そういう時代になってもすぐに対応できたわけです。そして、その都度、旬のクリエイターと共作することで、自分自身も自然にアップデートできたのです。

 

 これが、例えばホイットニー・ヒューストンのような、用意された楽曲をいかに自分らしく歌いこなすかが魅力である”ザ・シンガー”の場合、柔軟に自身をアップデートすることはやはり難しかったんだと思います。

 

 ここにマライアがホイットニーより長きにわたって活躍できた要因があるはずだと僕は考えています。

 それから、マライアと同様に、新しい才能とどんどん共作することによって自身をアップデートし、キャリアのピークを延ばし続けている最高の成功例はマドンナでしょう。

 

 脱線してしまいました。。。話を戻します。

 

 セカンド・アルバムからウォルターとも共作を始め、息も合い結果も伴ったということで、彼女曲作りのメイン・パートナー、そして共同プロデューサーになりました。 

   

    ウォルターがピアノを弾くそばに彼女が座って、時には彼がイメージするコードに合わせて彼女がフレーズを口ずさみ、時には彼女の思いついたメロディをきっかけにして彼が発展させるという風に、まさにキャッチ・ボールをしながら曲を作っていったようです。

 かつて、大ヒット作曲家や、大ヒット・プロデューサーというのは独創的な自分の”音世界”を持ち、その世界にシンガーを取り込むようにして作品を作っていたわけですが、1990年代ごろから、そのアーティストの個性をより強めてくれるために”チームワークができる”作曲家、プロデューサーが求められるようになっていきました

 

 現代最高のヒットメイカー、マックス・マーティンはその最たる人ですが、ウォルター・アファナシエフはその先駆けだったと言えます。

 ”アーティストとの共作で力を発揮できる”というのは現代のヒット・プロデューサーの必須条件でもあるのです。

 

 

 さて、二人の作品で最も売れた曲が「ヒーロー」と「ワン・スイート・デイ」ですから、そのちょうど間の時期にあたる「恋人たちのクリスマス」は彼らの全盛期に作られたものだと言っていいでしょう。

 

  ウォルターのリズミカルなピアノに合わせて、マライアがフレーズを口ずさんでゆく、そうして出来上がったそうです。シンプルな曲なので、彼らの他の曲に比べてそんなに手間はかからなかったようです。そのシンプルさがかえって世界中で人気になった要因だろうとウォルター本人は分析しています。

 

  彼いわく、ロックンロールっぽい、フィル・スペクターっぽいイメージだったそうです。確かにピアノの左手のリフはクリスタルズの「ダドゥ・ロン・ロン」でお馴染みのパターンですね。

www.youtube.com

 

  それから、マライアが書いた歌詞についてウォルターは、アップ・テンポのクリスマス・ソングでポジティブなラブ・ソングというのは今までになかったから、それもよかったんじゃないかと言っています。そう言われると確かに、そうですね。

 

 追記:この記事の翌日(12/17)、この曲が発売から25年目にしてついに全米NO.1になったというニュースが流れました。今はストリーミングが中心ですから、何か話題があれば過去の曲も新曲同様にヒットチャートの上位に入るのが普通になっているんですね。

 

 こちらは2011年にマライアとジャスティン・ビーバーの共演で再録されたものです。


Justin Bieber, Mariah Carey - All I Want For Christmas Is You (SuperFestive!) (Shazam Version)

 

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アルバム「メリー・クリスマス」にはフィル・スペクターの「クリスマス」もカバーも収録されています。

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