まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ひとりぼっちのクリスマス(All Alone on Christmas)」ダーレン・ラヴ(1992)

 おはようございます。

 今日はダーレン・ラヴの「All Alone on Christmas」。映画「ホーム・アローン2」の主題歌でした。


Darlene Love - All Alone On Christmas (Official Video)

 

The cold wind is blowin' and the streets are getting dark
I'm writin' you a letter and I don't know where to start
The bells will be ringin' Saint John the Divine
I get a little lonely every year around this time
The music plays all night in Little Italy
The lights will be going up on old Rockefeller tree
People window shopping on Fifth Avenue
All I want for Christmas is you

I've got to know (Nobody ought to be all alone on Christmas)
Where do the lonely hearts go
(Nobody ought to be all alone on Christmas)
Oh 'cause nobody ought to be all alone on Christmas


Things are different since you've been here last
Childhood dreaming is a thing of the past
Maybe you can bring us some hope this year
Visions of sugar plums have disappeared
Do you remember sleigh riding in the snow
And dancing all night to "Baby, Please Come Home"
Today's celebration is bittersweet
There's mothers and children in the street


I wanna know (Nobody ought to be all alone on Christmas)
Where do lonely hearts go
(Nobody ought to be all alone on Christmas)
'Cause nobody ought to be all alone on Christmas

I'm all grown up but I'm the same you'll see
I'm writing you this letter 'cause I still believe
Dear Santa I've been good this year
Can't you stay a little while with me right here

 

   I've got to know
(Tell me) I've got to know (Nobody ought to be alone on Christmas)
Where do lonely hearts go
because nobody ought to be all alone on Christmas

 nobody ought to be all alone on Christmas

 nobody ought to be

Oooh yeah on Christmas (Nobody ought to be alone on Christmas)

All alone on Christmas (Nobody ought to be alone on Christmas)

Tell me I've got to know (Nobody ought to be alone on Christmas)
Don't leave me alone (Nobody ought to be alone on Christmas)
All alone on Christmas (Nobody ought to be alone on Christmas)
Tell me I've got to know (Nobody ought to be alone on Christmas)
Where do they all go (Nobody ought to be alone on Christmas)
Where do lonely hearts go (Nobody ought to be alone on Christmas)
I've got to know (Nobody ought to be alone on Christmas)
Nobody on Christmas (Nobody ought to be alone on Christmas)

 

*************************************************************************

 

 

”冷たい風が吹いて 通りは暗くなってきた

あなたに手紙を書こうとしているけど どこから始めたらいいのかしら

もうすぐセント・ジョン・ザ・ディヴァイン大聖堂の鐘が鳴る

毎年この時期になると 少し寂しくなるの

リトル・イタリーでは夜通し音楽が流れ

ロックフェラー・センターのツリーがライトアップされる

五番街にはウィンドウ・ショッピングする人たち

私がクリスマスに欲しいのはあなただけなのに

 

知っておきたいの  寂しい心はどうなってしまうの

だって 誰だってひとりっきりでクリスマスでいるべきじゃないから

 

あなたが最後にいたころからしたら ここは変わったわ

子供の頃夢みたことはもう過去のものになってしまった

今年はたぶんあなたなら望みをもたらすことができるはず

思い浮かべたシュガープラムも消えてしまった

雪の中そり遊びをしたことおぼえてる?

「クリスマス」を聴きながら夜通し踊った

今年のお祝いはほろ苦いわ

通りには子供を連れた母親たちが

 

知りたいの  寂しい心はどうなってしまうの

だって 誰だってひとりっきりでクリスマスでいるべきじゃないから

 

私はすっかり大きくなったけど

何も変わっちゃいないでしょ

この手紙を書いているの だって今も私は信じているから

サンタさん 今年はずっといい子にしてたわ

だから少しでいいから私と一緒にいてくれないかな?

 

知っておきたいの 寂しい心はどうなってしまうのか

だって 誰だってひとりっきりでクリスマスでいるべきじゃないから

たったひとりでいるべきじゃないから

教えて欲しいの みんなどこに行くの 寂しい心はどうなってしまうの

知っておきたいの クリスマスに誰もいない    ”(拙訳)

********************************************************************************

 

 この歌の中で”All I want for Christmas is you”なんてフレーズが出てきますが、マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」が発売されるより2年も前の曲なんです。このフレーズはマライアが歌にする前から、普通に使われていたものだったんですね。

 

  ダーレン・ラヴはロサンゼルス生まれの黒人女性シンガー。圧倒的な力量を持ちヒット曲も出しながら不当な扱いを受け、一度業界から離れていますが、彼女のファンだったミュージシャンたちのバック・アップもあって後年になりリスペクトされる存在になりました。

 

 彼女はもともとブロッサムズという女性コーラス・グループのメイン・ボーカルとして活動していましたが、そこで、当時新進気鋭だったプロデューサー、フィル・スペクターのレコーディングに参加することになります。

 フィルは自分が手がけて大ヒットしそうな曲を探している中でジーン・ピットニーが書いた「ヒーズ・ア・レベル」という曲を見つけました。

 そして、誰よりも早くレコーディングしてリリースしようと動き始めました(当時は良い曲は何人ものシンガーに録音されることが多かったのです)。

 しかし、彼がこの曲を歌わせようと思ったクリスタルズはツアーで不在だったため、急遽他のシンガーに歌わせて”クリスタルズ”の名義でリリースしようと決めます。

 


The Crystals - He's a Rebel (1962)

 その「ヒーズ・ア・レベル」でメイン・ボーカルをとったのが実は彼女でした。しかも、「ヒーズ・ア・レベル」は全米1位の大ヒットになりました。曲が巷でガンガン流れているのに誰も自分が歌っていることを知らない、そんな状況になったのです。

 悔しく思った彼女は、フィル・スペクターとの専属契約を申し出ます。そして、彼の作品のバックアップ・シンガーを数多くつとめた後、ようやく契約してもらえることになります。

 そしてレコーディングされたのが「愛しているんだもの(He's Sure the Boy I Love)」という曲でした。(曲を書いたのはライチャス・ブラザースの「ふられた気持ち」のバリー・マン&シンシア・ワイル)

 ところがフタを開けてみると、これまた”クリスタルズ”の名前でリリースされてしまうんです。


The Crystals - He's Sure The Boy I Love

 

 そして、その後ようやく”ダーレン・ラヴ”という名前でリリースできることになります。その中で一番有名なのがクリスマスの大定番「クリスマス(Christmas< Baby Please Come Home>」でしょう。これは、最初はフィルのお気に入りだったロネッツのロニーに歌わせるつもりだったそうですが、録音がうまくいかなかったため、ダーレンが歌うことになったとも言われています。


Darlene Love - Christmas (Baby Please Come Home) (Official Audio)

  ヒットは出たとはいえ、フィルとの仕事は彼女にとってはハッピーなものではありませんでした。それで、彼との契約が切れると彼女は”フィラデルフィア・ソウル”で大ヒットを飛ばしていたギャンブル&ハフと契約をし、心機一転を図ろうとしました。

 ところが、フィル・スペクターがその契約を”買い戻して”しまうんです。

 しかし、当時ビートルズの作品も手がけるほどの大物になった彼は、彼女を真剣に売ろうという気持ちはなかったようで、こうなるとただの嫌がらせにしか思えないのですが。。。

 そして、彼女は深く失望してしまい、音楽の世界をやめてしまいました。

 

 その後、何年もの間、彼女は家政婦をやって生計を立てていたそうです。

 

 そしてあるクリスマスの日、彼女が家政婦として浴室を掃除していると、ラジオから彼女が歌う「クリスマス」が聞こえてきたそうです。

 そこで彼女は、自分の仕事は歌うことなんだ、と気づき、音楽の世界に復帰するためにカリフォルニアからニューヨークに向かったといいます。

 彼女に最初に声をかけたのは、やはり一時フィル・スペクターの元にいたライチャス・ブラザーズのビル・メドレーでした。

 そして、彼女の大ファンだったアーティストにはブルース・スプリングスティーンやブルースの盟友スティーヴ・ヴァン・ザントもいて、彼女のカムバックに協力することを申し出ます。

 

 この「ひとりぼっちのクリスマス」はスティーヴの作詞作曲、プロデュースの作品なんです。

 演奏はスプリングスティーンのバンド”E.ストリート・バンド”と、ブルース、スティーヴと縁の深いホーン・セクション”マイアミ・ホーンズ”という強力な布陣で制作されました。

 

 歌詞を見ると ”dancing all night to "Baby, Please Come Home””

 彼女の持ち歌である「クリスマス」で朝まで踊ったなんてフレーズもあって、リスペクトが感じられます。

 ひとりぼっちで今年のクリスマスを迎えるという設定自体同じなので、意図的に「クリスマス」のオマージュ的作品にしたのでしょう。

 

   彼女は見事に復活し、本来得られるべきであった名声も、かなり遅くはなりましたが取り戻すことができました。

 2011年には彼女は”ロックの殿堂”入りも果たしています。

 

  今では彼女はアメリカでは”クリスマスの声”のような存在になっているようで、その後いろんなクリスマス・ソングを歌っています。

 ロックの殿堂のYouTubeサイトには彼女の歌う「クリスマス」を編集した動画がアップされていました。


Darlene Love Performs "Christmas (Baby Please Come Home)"

 <参考:映画「バックコーラスの歌姫たち」>

Home Alone Christmas

Home Alone Christmas

Amazon

 

popups.hatenablog.com

 

f:id:KatsumiHori:20201208095333j:plain