まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ニューヨークは淋しい町(New York's a Lonely Town)」ザ・トレイド・ウィンズ(1965)

 おはようございます。

   今日はザ・トレイド・ウィンズの「ニューヨークは寂しい町」。カリフォルニアからニューヨークに家族で引っ越してきた男の子の歌です。

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My folks moved to New York from California
I should have listened when my buddy said "I warn ya" (warn ya)
"There'll be no surfin' there and no one even cares"

(My woody's outside) covered with snow
(Nowhere to go now) New York's a lonely town
When you're the only surfer boy around

 

From Central Park to Pasadena's such a long way
I feel so out of it walkin' down Broadway (Broadway)
I feel so bad each time I look out there and find


(My woody's outside) covered with snow
(Nowhere to go now) New York's a lonely town
When you're the only surfer boy around


I feel so bad each time I look out there and find

(My woody's outside) covered with snow
(Nowhere to go now) New York's a lonely town
When you're the only surfer boy around

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うちの家族は、カリフォルニアからニューヨークに引っ越してきた
仲間が言ったことを聞いておけばよかったよ
"警告しておくよ、あそこじゃサーフィンもできないし、そんなこと誰も気にもとめやしないよ”

 

(外のサーフボードは)雪をかぶっている
(今は行くところもない)ニューヨークは孤独な町さ
まわりでサーファーが自分一人だったらね

 

セントラルパークからパサディナはなんて遠いんだ
ブロードウェイを歩いていると、すごく場違いに思えるよ
外を見るたびにうんざりした気持ちになって、見てしまうのは

 

(外のサーフボード)雪をかぶっている
(今は行くところもない)ニューヨークは孤独な町さ
まわりでサーファーが自分一人だったらね

 

外を見るたびにうんざりした気持ちになって、見てしまうのは

 

(外のサーフボード)雪をかぶっている
(今は行くところもない)ニューヨークは孤独な町さ
まわりでサーファーが自分一人だったらね

                           (拙訳)

 

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 この曲を歌っているザ・トレイド・ウィンズは、曲を書いたピーター・アンダースとヴィニ・ポンシアによる覆面バンドです。

 アンダース&ポンシアはフィル・スペクターの元でヒット曲を出していたソング・ライター・チームです。

 彼らはこんな曲を書いています。

 

ザ・ロネッツの「ブレイキン・アップ( (The Best Part Of) Breakin'Up)」

(1964年全米39位)


The Ronettes - (The Best Part Of) Breakin' Up (Official Audio)

 

ザ・ロネッツの「恋しているかしら(Do I Love You)」1964年 全米34位)


The Ronettes - Do I Love You? (Official Audio)

   また同じ1964年に彼らはトレジャーズという名義で、フィル・スペクターのプロデュースでビートルズのカバーもやっています。

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  ちなみに、この曲の出だしは大瀧詠一の「白い港」の元ネタになっていますね。

 

 さて、フィル・スペクターのもとで活動していた彼らですので、この「ニューヨークは淋しい町」もフィルの元でリリースしてもらおうと書いた曲でした。しかし、却下されてしまうんですね。

 理由はわかりませんが(天才フィル・スペクターの頭の中などわかるわけもないですし)、僕が勝手に考察するに、曲が良くなかったというより、タイミングが悪かったんじゃないかと思うんですよね。1965年あたりからフィル・スペクターは制作のペースが大幅にダウンしているからです。全精力を注ぎ込んだクリスマス・アルバムがコケたり、アーティストとの人間関係の問題もいろいろ出てきていた時期です。明るいノリのいい曲はもう彼の耳をとらえなくなっていたのかもしれません。

 

 しかし、「スタンド・バイ・ミー」や「ハウンド・ドッグ」など数々の名曲を作ったジェリー・リーバー&マイク・ストーラーというプロデューサー/ソングライター・コンビが、彼らに注目してその曲を自分たちのレーベル(レッド・バード)から出さないか?と持ち掛けます。

 (ちなみに、フィル・スペクターは彼らの舎弟として曲作りやレコーディングを経験させてもらい、それをきっかけにして業界で”成り上がって”いったという経緯があります)

 アンダース&ポンシアはトレイド・ウィンズという名義にしてこの曲を発売し、全米32位まであがるスマッシュ・ヒットになります。

 アレンジも彼らでやっていますが、フィル・スペクター風になっていますね。フィルのレコーディングに立ち会って学んでいったのでしょう。

  

  その後、彼らはこの歌と逆の設定になっている、続編的作品「The Girl From Greenwich Villege」、そして「Summer Time Girl」というビーチ・ボーイズ調のシングルを出しますが、セールス的にはコケてしまったようです。なかなかいいんですけどね。

 


TRADE WINDS - THE GIRL FROM GREENWICH VILLAGE

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 そのあと、彼らはラヴィン・スプーンフルをヒットさせたレーベル、カーマ・スートラに移籍し「心の旅路(MIND EXCURSION)」をスマッシュ・ヒットさせます(1966年 全米51位)

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 そして、その後すぐに彼らはレーベルの社長のアーティ・リップと3人組の”イノセンス”というグループを組んで「すてきな言葉(There's Got Be A Word)」を全米34位に送り込んでいます。

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 しかし、1970年代には彼らはコンビを解消しますが、それぞれが主にソングライターとして(アンダースはシンガーとしてもアルバムを出しています)活動し、特に、ポンシアはレオ・セイヤーの全米NO.1ヒット「恋の魔法使い(You Make Me Feel Like Dancing)」を本人と共作しています。

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 さて、「ニューヨークは寂しい町」に話を戻して、僕がこの曲を初めて聴いたのは、山下達郎のラジオ番組でした。

 それから、10年くらいたって達郎氏本人が1991年のアルバム「ARTISAN」でこの曲をカバーしました。しかも、舞台はニューヨークから東京に変えて「TOKYO'S A LONLEY TOWN」というタイトルになっています。セントラル・パークは外苑パークに、サーフ・ボードを覆うのは雪じゃなく、スモッグに、、。これはもう、カバーとして完璧な出来じゃないかと僕は思います。

 残念ながらこの曲の動画はありませんでしたので、イギリスの”ポップ・マエストロ”デイヴ・エドモンズが1976年に「London's a Lonely Town」というタイトルでカバーしたものを最後に。

 

  こちらはブルース・ジョンストンとテリー・メルチャーのレーベル <Equinox >でレコーディングされボツになったものらしく(1979年にコンピに収録)、ブルース、テリーのほかカート・ベッチャーにブライアン・ウィルソンも参加していると言われています。

 そして、デイヴ・エドモンズはボツになったことを悔やんだのか、この直後、イギリスで「New York's a Lonely Town」という正規カバーをリリースしています。

 個人的には、Londonの方が数段いいように思えますが、最後にこの2つのヴァージョンをどうぞ。

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The Essential: Phil Spector

 

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