まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ビー・マイ・ベイビー(Be My Baby)」ザ・ロネッツ(1963)

 おはようございます。

 今日はロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」。最初は「あたしのベビー」なんてタイトルだったようです、、。

 


The Ronettes - Be My Baby (Audio)

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The night we met I knew I needed you so
And if I had the chance I'd never let you go
So won't you say you love me?
I'll make you so proud of me
We'll make 'em turn their heads every place we go

So won't you, please
(Be my, be my baby)
Be my little baby?
(My one and only baby)
Say you'll be my darlin'
(Be my, be my baby)
Be my baby now
(My one and only baby)
Wha-oh-oh-oh


I'll make you happy, baby, just wait and see
For every kiss you give me, I'll give you three
Oh, since the day I saw you
I have been waiting for you
You know I will adore you 'til eternity


So won't you, please
(Be my, be my baby)
Be my little baby?
(My one and only baby)
Say you'll be my darlin'
(Be my, be my baby)
Be my baby now
(My one and only baby)
Wha-oh-oh-oh


So c'mon and be
(Be my, be my baby)
Be my little baby?
(My one and only baby)
Say you'll be my darlin'
(Be my, be my baby)
Be my baby now
(My one and only baby)
Wha-oh-oh-oh


(Be my, be my baby)
Be my little baby?
(My one and only baby)
Oh-oh-oooooh
(Be my, be my baby)
Ooooooooooh
(My one and only baby)
Wha-oh-oh-oh-oh
(Be my, be my baby)
Oh-oh-oooooh
(My one and only baby)
Ooooooooooh
(Be my, be my baby)
Be my baby now
(My one and only baby)
Wha-oh-oh-oh

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私たちが出会ったその夜に、
私はあなたを求めているってわかったの
もしチャンスがあれば、絶対あなたを離さない
だから愛していると言ってくれない?
自慢の彼女だって思えるようにするから
どこへ行ってもみんなを振り向かせるわ


だから、ねえ
(私の、私のベイビーになって)
私のかわいいベイビーになって?
(私のたったひとりのベイビー)
私のダーリンになると言って
(私の、私のベイビーになって)
今すぐ私のベイビーになって
(たったひとりのベイビーに)

 

あなたを幸せにしてあげるから、見ていてね
あなたにキスされるごとに、三倍返しするわ
なあ、あなたを見た日から
私はあなたを待ち続けた
永遠にあなたを愛し続けるのよ

だから、ねえ
(私の、私のベイビーになって)
私のかわいいベイビーになって?
(私のたったひとりのベイビー)
私のダーリンになると言って
(私の、私のベイビーになって)
今すぐ私のベイビーになって
(たったひとりのベイビーに)


だから、さあ
(私の、私のベイビーになって)
私のかわいいベイビーになって?
(私のたったひとりのベイビー)
私のダーリンになると言って
(私の、私のベイビーになって)
今すぐ私のベイビーになって
(たったひとりのベイビーに)

・・・・

              (拙訳)

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 僕が”ポップス”と聞いて、真っ先に思い浮かぶのがこの曲です。ただリアルタイムでは聴いてなくて、発売されてから15年くらいたった頃だと思いますが、聴いたことのないサウンドにひと目で、いやひと耳で、ぐっと気持ちをつかまれました。 

 

 ロック、ポップスの偉大な才能たちも、はじめて「ビー・マイ・ベイビー」を聴いたときの衝撃を語っています。

 

「初めて<ビー・マイ・ベイビー>を聞いたときの気持ちは、他の曲じゃ再現できそうもない」

「僕が覚えているのは<ビー・マイ・ベイビー>をカー・ラジオで聞いて、とても元気が出たということだけ。そして、あの曲が僕の頭脳におよぼしたことと、あそこで鳴っていた音のせいで、ぼくは生まれ変わったようになった。そして、その先へと大きく飛び出していったんだ」

                      (「ブライアン・ウィルソン自伝」)

 

ロネッツの<ビー・マイ・ベイビー>。私はそのサウンドを、いつまでも愛し続けるだろう。魂に宿っているのだ。ロニーの歌はとにかく最高だ。グルーブ、美しく鳴り響くバックグラウンド・ヴォーカル、オケーそのすべてが一体化している。フィル・スペクターは天才だ。ジャック・ニッチェは天才だ」

                      (「ニール・ヤング自伝」)

 

 彼らを魅了したサウンドは”ウォール・オブ・サウンド音の壁)”と呼ばれています。

 

 ひとつのスタジオにギターやピアノなどのプレイヤーがそれぞれ複数集まって一斉に演奏するのですが、ただ楽器の数を増やして音の厚みを作ればいいわけではありません。このサウンドは、世界でたった一つ、ロサンゼルスのゴールド・スター・スタジオでしか作れなかった音でした。

 もともと飲食店だったのを改装したため天井が低い特殊な作りで、それだと平たい音になってしまうため、エコー・チェンバーという反響室を二つ作ったそうです。そのため、ここでしか生まれない独特の残響が生まれることになり、そこにフィル・スペクターはこだわったようです。しかも、モノラルでしたので、いろんな音と残響が分離せず一体となったわけです。いかにちょうどいい残響が生まれるか、そしてそれが楽器の音といかに混ざり合うか、という数字や目盛りでは決して測れない、フィル本人にしかジャッジができないものだったのです。

 

 このサウンドの楽曲を彼はたくさん作りましたが、その中でもとりわけ時間をかけたのがこの「ビー・マイ・ベイビー」です。

 彼はロネッツと契約したのち録音を始めるまでに1年も間が空いたそうです。他の曲もトライしたようですが納得できず、作家が「ビー・マイ・ベイビー」を書いた時にやっと”これだ!”と思ったのでしょう。

 そして、歌のリハーサルに数週間かけ、ボーカル・レコーディングに丸3日かけたそうです。オケのレコーディングも、録音を始めるまで”通し演奏”を42回もやったらしく、凄腕のミュージシャンたちもヘロヘロになってしまったという証言もあります。

 そのおかげで、この曲は大ヒットし、ロネッツは世界中の注目の的になります。ビートルズストーンズのメンバーも彼女たちに夢中になったという話です。

   このとき、フィルはまだ23歳だったそうですから、まさに天才だったのでしょう。

 

 曲を書いたのは前にこのブログで取り上げた、クリスタルズの「ダ・ドゥ・ロン・ロン」と同じく、ジェフ・バリーとエリー・グリニッチ。ジェフが主に歌詞、エリーが作曲を担当し、二人はちょうどこの頃結婚していたそうです。 

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 この頃は、キャロル・キングニール・セダカバート・バカラックといった人たちが作詞家とチームを組んで、他のチームと競争しながらヒット曲をたくさん生み出していました。その中で、このジェフ・バリーは、曲のターゲットをティーン・エイジャーに絞ることで、他の作家と差別化するのに成功しました。アーチーズの「シュガー・シュガー」もまさにティーンを狙ったものでした。

 


 ロネッツは、リード・ボーカルのロニー・スペクター(ヴェロニカ・ベネット)と姉のエステル・ベネット、そして従妹のネドラ・タリーの三人組。ロニーは後にフィルと結婚、そして離婚します。

 

 ロニーは、フィル・スペクター作品の象徴的存在として、ミュージシャンたちにも敬愛され、エディ・マネーのヒット曲「Take Me Home Tonight」ではロニーがフィーチャーされ、曲には「ビー・マイ・ベイビー」の一節が組みこまれていました。

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 また、ビリー・ジョエルフィル・スペクターへのオマージュ曲「さよならハリウッド」をロニーがカバーし、演奏をブルース・スプリングスティーンのバンド”Eストリート・バンド”が演奏している、なんていうのもあります。

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「ビー・マイ・ベイビー」での ロニー・スペクターの”ベイビ〜”という節回しが、いかに”特別なもの”であったかが、「Take Me Home Tonght」や「さよならハリウッド」を聴くとよくわかります。

 

 

 最後に一つ、この曲でものすごく印象的なドラムをたたいているのがハル・ブレイン。このブログに登場した「素敵じゃないか」(ビーチ・ボーイズ)「愛ある限り」(キャプテン&テニール)「ビートでジャンプ」(フィフス・ディメンション)「ウィンディ」(アソシエイション)なども彼が演奏しています。

 

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