まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ダ・ドゥ・ロン・ロン(Da Doo Ron Ron)」クリスタルズ(1963)

 おはようございます。

 今日はクリスタルズの「ダ・ドゥ・ロン・ロン」です。


The Crystals - Da Doo Ron Ron (HQ)

I met him on a Monday and my heart stood still
Da doo ron ron ron
Da doo ron ron
Somebody told me that his name was Bill
Da doo ron ron ron
Da doo ron ron

Yes, my heart stood still
Yes, his name was Bill
And when he walked me home
Da doo ron ron ron
Da doo ron ron


Knew what he was doing when he caught my eye
Da doo ron ron ron
Da doo ron ron
He looked so quiet but my oh my
Da doo ron ron ron
Da doo ron ron

Yes, he caught my eye
Yes, my oh my
And when he walked me home
Da doo ron ron ron
Da doo ron ron

Picked me up at seven and he looked so fine
Da doo ron ron ron
Da doo ron ron
Someday soon I'm gonna make him mine
Da doo ron ron ron
Da doo ron ron

Yes, he looked so fine
Yes, I'll make him mine
And when he walked me home
Da doo ron ron ron
Da doo ron ron

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月曜日に彼に出会って、私の心臓止まったの
ダ・ドゥ・ロンロンロン
ダ・ドゥ・ロンロン
誰かが、彼の名前はビルだとおしえてくれた 
ダ・ドゥ・ロンロンロン
ダ・ドゥ・ロンロン

そう、私の心臓止まったの
そう、彼の名前はビルだった
そして、彼が私を家まで送ってくれたとき
ダ・ドゥ・ロンロンロン
ダ・ドゥ・ロンロン


彼が私の目をとらえたときに、何をしているのかわかったわ
ダ・ドゥ・ロンロンロン
ダ・ドゥ・ロンロン
物静かそうに見える彼なのに、ああ、なんてこと
ダ・ドゥ・ロンロンロン
ダ・ドゥ・ロンロン

そう、彼は私の目を引いた
そう、あら大変
そして、彼が私を家まで送ってくれたとき
ダ・ドゥ・ロンロンロン
ダ・ドゥ・ロンロン

7時に迎えに来てくれた彼はとてもイカしてた
ダ・ドゥ・ロンロンロン
ダ・ドゥ・ロンロン
いつかもうすぐ、彼を私のものにするつもり
ダ・ドゥ・ロンロンロン
ダ・ドゥ・ロンロン

そう、彼はすごくイカしてたの
そう、彼を私のものにするの
そして、彼が私を家まで送ってくれたとき
ダ・ドゥ・ロンロンロン
ダ・ドゥ・ロンロン             (拙訳)

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 タイトルの”ダ・ドゥ・ロン・ロン”とは何のことでしょう?(ちなみに日本で最初に発売された時は「ハイ、ロン・ロン」という邦題がついていました)

 実はこの曲を作った人が、まだ歌詞を決めきれない場所に仮にハメておいた”スキャット”のようなものだったそうです。

 それを聴いたプロデューサーがそれをいたく気に入って、いいじゃん、このままで行こうってことなったというわけです。ティーンエイジャー向けの歌だから、歌詞でごちゃごちゃ言うのはよくない、わかりやすく行こう、という考えもあったようです。

 

 そのプロデューサーとはフィル・スペクター。後にビートルズや、メンバーのソロ作品もプロデュースする、ポップ、ロック史に残る奇才です。

 スタジオにたくさんのミュージシャンを集めて”せーの”で録る、分厚い音の壁、いわゆる”ウォール・オブ・サウンド”を考え出した人で、この「ダ・ドゥ・ロン・ロン」はその最初期の作品でもあります。

 日本のミュージシャンにも影響を与えた曲で、例えばサウンドでは大瀧詠一の「君は天然色」、曲調では浜田省吾の「バックシート・ラブ」はこの曲を下地にしていると思われます。

  

 ザ・クリスタルズ (The Crystals)は、ニューヨークで結成された女性ボーカル・グループ。バーバラ・アルストン、メアリー・トーマス、ドロレス・"ディー・ディー"・ケニーブリュー、マーナ・ジラード、およびパトリシア・"パッツィ"・ライトの5人で結成され、間もなく、フィル・スペクターのレーベル、フィレス・レコードと契約し、レーベル第一弾アーティストになっています。

 

 そしてデビュー曲「There's No Other Like My Baby」が全米20位のヒットを記録、以降ヒットを連発します。

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「恋のアップタウン(UPTOWN)」1962年全米13位。曲を書いたのはバリー・マン&シンシア・ワイル。

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「ヒーズ・ア・レベル(He's A Rebel)」1962年全米1位。ジーン・ピットニー作。この曲のデモを聴いて気に入ったフィル・スペクターは、ダーレン・ラヴをメインとするブロッサムズでこの曲を録音しますが、なんとクリスタルズの名義で発表したという、”いわく付き”の楽曲です。

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次のシングル「愛しているんだもの(He's Sure the Boy I Love")」もダーレン・ラヴが歌っています。1962年全米11位。

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 そして、1963年、「恋のアップタウン」のあとにマーナ・ジラードの代わりにグループに加入したララ・ブルックスがメインヴォーカルをとり、ブロッサムズがバックをつとめたのがこの「ダ・ドゥ・ロン・ロン」でした。

 当初はやはりダーレン・ラヴの歌で録音したのですが、フィル・スペクターは気に入らず、クリスタルズのメイン・ヴォーカルでもなかったララ・ブルックスの声が曲にあっていると判断したようです。

 

 

 「ダ・ドゥ・ロン・ロン」のような、まったく意味はないけど、語呂やリズムがいい言葉がハマって大衆に受ける、ということはポップスでは時折あります。この曲の5年後に出たビートルズの「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」もそうでしょう。スキャットマンなんて人もいましたね。そして、そういう意味のないフレーズというのは、いろんな「意味」であふれそうになっている脳みそをリセットしてくれるような感じがします。

 さすがに、最近はそういう曲はあまいないですよね。強いて言えば「ペン・パイナッポー・アッポー・ペン」(ちゃんと意味はありますが、、)がそんな感じでしょうか?

 

 さて、この「ダ・ドゥ・ロン・ロン」が大ヒットしたので、曲を書いたエリー・グリニッチとジェフ・バリーに、またこういう意味のないフレーズの曲を作ってくれという依頼が来たそうです。

しかし、「ダ・ドゥ・ロン・ロン」は狙って作ったわけじゃないので、狙って作るのは大変苦労したようです。それでも、彼らはなんとかして書き上げました。それが「ドゥ・ワ・ディディ・ディディ(Do Wah Diddy Diddy)」。最初はエキサイターズというガール・グループに書いたのですが、すぐさま英国のロック・バンド、マンフレッド・マンが歌ってイギリスで大ヒット。ビートルズの「ハード・デイズ・ナイト」を蹴落として1位にまでなりました。ちなみに、この曲は甲本ヒロトに一番影響を与えた曲でもあるそうです。

 

「Do Wah Diddy Diddy」マンフレッド・マン

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ついでにエキサイターズの「ドゥ・ワ・ディディ・ディディ」も。


The Exciters - Do Wah Diddy Diddy #HIGH QUALITY SOUND (1963)

 

 クリスタルズはヒット曲の主要なヒット曲を他の人が歌っていた、しかもリリースされるまで知らなかったという切ないエピソードの持ち主ですが、「ダ・ドゥ・ロン・ロン」の次のシングルでは久しぶりに、本来のメンバーで録音しヒットしています。

 

「キッスでダウン(Then He Kissed Me)」1963年全米6位。完成されたフィル・スペクターサウンドを堪能できます。

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 この頃からフィル・スペクターは新たに契約したグループ、ロネッツのほうに気持ちが入ってしまい、クリスタルズは冷遇され、やがてレーベルを移籍したり、メンバーの入れ替わりもあり、1967年に解散。1971年に再結成した以降は不定期ながら2018年までは活動していたようです。

 現在はララ・ブルックスは”クリスタルズ”の商標権を持っているイギリスとカナダではクリスタルズ名義で活動をしているようです。

 

 

 クリスタルズは2015年、この曲の再録音ヴァージョンをリリースしていますのでそれを最後に。まさに「君は天然色」が始まりそうな、、


Da Doo Ron Ron (Re-Recording)

 

 

 

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