まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ビリーヴ(Believe)」シェール(1998)

 おはようございます。

 今日はシェールの「ビリーヴ」です。

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No matter how hard I try
You keep pushing me aside
And I can't break through
There's no talking to you
It's so sad that you're leaving
It takes time to believe it
But after all is said and done
You're gonna be the lonely one, oh


Do you believe in life after love?
I can feel something inside me say
I really don't think you're strong enough, no
Do you believe in life after love?
I can feel something inside me say
I really don't think you're strong enough, no


What am I supposed to do?
Sit around and wait for you?
Well, I can't do that
And there's no turning back
I need time to move on
I need love to feel strong
'Cause I've had time to think it through
And maybe I'm too good for you, oh


Do you believe in life after love?
I can feel something inside me say
I really don't think you're strong enough, no
Do you believe in life after love?
I can feel something inside me say
I really don't think you're strong enough, no


Well, I know that I'll get through this
'Cause I know that I am strong
I don't need you anymore
Oh, I don't need you anymore
I don't need you anymore
No, I don't need you anymore


Do you believe in life after love? 
I can feel something inside me say
I really don't think you're strong enough,no
Do you believe in life after love?
I can feel something inside me say
I really don't think you're strong enough,no
Do you believe in life after love? 
I can feel something inside me say
I really don't think you're strong enough,no
Do you believe in life after love? 
I can feel something inside me say
I really don't think you're strong enough,no

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どんなに頑張ってみても
あなたは私を脇に追いやるの
だから私は突破できないの
あなたと話すことはできない
あなたが去ってしまうのはとても悲しい
それを信じるのには時間がかかるわ
でも、全部話して、やり尽くしたから
あなたは孤独になるでしょう


あなたは愛が終わった後の人生を信じるの?
私の中の何かが言っている
あなたがそれに耐えられるほど強いなんて思えないわ
あなたは愛が終わった後の人生を信じるの?
私の中の何かが言っている
あなたがそれに耐えられるほど強いなんてとても思えないわ

 

私は何をすればいいの?
じっとあなたを待つの?
それはできないわ
もう後戻りはできない
前に進むためには時間が必要
強く感じるためには愛が必要なの
よく考えるだけの時間があるから
あなたには私はもったいないかもしれないわ


あなたは愛が終わった後の人生を信じるの?
私の中の何かが言っている
あなたがそれに耐えられるほど強いなんて思えないわ
あなたは愛が終わった後の人生を信じるの?
私の中の何かが言っている
あなたがそれに耐えられるほど強いなんてとても思えないわ


でも、私はこれを乗り越えるわ
私は自分が強いことを知っているから
もうあなたを必要とはしていないわ
ああ、もうあなたなんていらない
もうあなたを必要としていないわ
そう、あなたなんていらないの


あなたは愛が終わった後の人生を信じるの?
私の中の何かが言っている
あなたがそれに耐えられるほど強いなんて思えないわ
あなたは愛が終わった後の人生を信じるの?
私の中の何かが言っている
あなたがそれに耐えられるほど強いなんてとても思えないわ

              (拙訳)

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 シェールは1960年代から今まで約60年もの間アメリカのエンターテイメント・シーンで活躍し続け、75歳になる今もTwitter400万、インスタ200万のフォロワーを持つ人気ぶりで、ビルボードミュージック・アワードのHPでは”ポップの女神(Goddess of Pop)”とまで称されていますが、日本人にはなかなか全体像がつかめない人でもあります。

 ですので、今日は”超駆け足”で、彼女の足跡を追ってみたいと思います。

 

 彼女の本名はシェリリン・サーキシアン(Cherilyn Sarkisian)といい、父親はアルメニア系、母親はアイルランド、イギリス、ドイツ、そしてチェロキーインディアンの血を引いていたそうです。シェールはシェリリンの呼称かもしれないですね。

 

 幼い頃からスターを夢見て野心を持っていた彼女は、16歳で家を出てロサンゼルスに引っ越し、知り合ったのがソニー・ボノ。当時彼はフィル・スペクターのアシスタントをやっていて、彼女は家政婦をやると言って彼の家に転がり込みます。 

 そして、つきあうようになったソニーはシンガーを夢見る彼女をフィル・スペクターのレコーディングのコーラス要員に押し込むことに成功します。

 彼はこう語っています。

「彼女はちゃんと歌えたし、通常のギャラより少ない15ドルで文句を言わなかったから、フィルも喜んでいた」

 (「フィル・スペクター 甦る伝説」)

  シェール本人いわく、彼女はロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」からライチャス・ブラザース「ふられた気持ち」や高名な「クリスマス・ギフト・フォー・ユー」までバックで歌ったそうです。

 

 しかし、ソニーはフィルに彼女をソロシンガーとしてプロデュースしてほしいと思っていて、それも1964年に実現しますが、ソニーとシェールにとってはきっと不本意なものでした。

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 その年に全米を席巻したビートルズのパロディ作品だったんですね。なにせ、タイトルが「リンゴ、アイ・ラヴ・ユー」ですから。”アネット”というフィル・スペクターのお遊び的サブ・レーベルからのリリースで、彼女は”ボニー・ジョー・メイソン”と言う芸名をつけられました。

 フィルの下でやりたいことができなかったソニーは他のレーベルで仕事を始めますが、そのことがきかっけでフィルからクビにされてしまいましたが、かえって彼らにはそれが吉と出ました。

 ソニー&シェールというデュオを結成すると、1965年にリリースしたシングル「アイ・ガット・ユー・ベイブ」が全米、全英ともに1位になる大ヒットになりました。

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  ソニーサウンド的にはフィル・スペクターの”レコーディング・スタイルをかっぱらった”と語っています。

 また、彼らは若者たちが服装を真似る”ファンション・アイコン”としても注目されるようになったといいます。

 その後彼らはヒットを連発していきますが、シェールのソロの作品もコンスタントにリリースされました。

 1966年全米2位「Bang Bang」

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  1969年にはアレサ・フランクリンのレコーディング以降R&Bのメッカとなっていた、マッスル・ショールズ・スタジオで「3614 Jackson Highway」というアルバムを作っています。

 

 1971年には二人がホストのTVショーが始まりますが、二人の間には亀裂が入り始めていて、ソニーもヒット曲を作れなくなっていたために、新たにプロデューサーにスナッフ・ギャレットを迎い入れ、それが成功につながります。

 スナッフ・ギャレットはボビー・ヴィーなどのリバティ・レコードの作品、いわゆる”リバティ・サウンド”を作ったプロデューサー。フィル・スペクター同様、アメリカン・ポップスを生み出した最重要人物の一人です。

 この辺りにシェールという人の”引きの強さ”を感じますね。

「悲しきジプシー(Gypsys, Tramps & Thieves )」(1971年全米1位)

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 白人とチェロキー・インディアンの血を持つ彼女のことを“あて書き”した曲

「ハーフ・ブリード(Half-Breed)(1973年全米1位) 

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「悲しき恋占い(Dark Lady)(1974)

 女性占い師(Dark Lady)から彼が浮気していると告げられた主人公は、占い師の香りから浮気相手が彼女であることに気づき、最後は彼と占い師を撃ち殺すという、なんともショッキングな歌です。

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その後、勢いは衰えていきますが、1979年に、ドナ・サマーヴィレッジ・ピープルなど、ディスコで一時代を築いたカサブランカ・レコードからディスコ・ナンバーをリリースし復活します。

「誘惑の扉(Take Me Home)(1979年全米8位) 

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 ここまで追ってみると、その後マドンナなどがやった、セクシーなビジュアルと合わせてコンセプト色の強い楽曲をリリースしていくスタイルは彼女はすでにやっていたんですね。

 そして、フィル・スペクター、スナッフ・ギャレット、マッスル・ショールズ・スタジオ、カサブランカ・レコードと、その時代時代の重要な人物、場所で作品を作っていたんですね。これは、”ポップの女神”と呼ばれて当然でしょう。

 

 1980年代には、ミート・ローフトの共演をきっかけにロック路線を進み、ボン・ジョヴィ、マイケル・ボルトン、デズモンド・チャイルドなどの力を借りてヒットを飛ばします。

 

 この時代NO.1ヒット作家、ダイアン・ウォーレン作の「If I Could Turn You Back」(1989年全米3位)

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 そして1990年代に入るとなかなか大ヒットを出せなくなりましたが、1998年にダンス・ミュージックにシフトしたこの「Believe」は、ビルボード年間チャート1位、イギリスでも女性シンガーのシングルの売り上げ記録を樹立するという、彼女にとって最大のヒットになり、見事復活を果たしました。

 

 この曲は、当時市販化されて間もない「オート・チューン」という、歌の音程の補正ソフトを使った、最初のヒット曲として知られています。

 今の音程補正ソフトはものすごく性能がいいですが、この当時「オート・チューン」は、音程のずれが大きいと直してもロボットみたいな声になったんですよね。それを逆に利用して、エフェクターみたいな使い方をして、わざとロボットみたいな声に仕立て上げたんですね。

 「ビリーヴ」は1992年頃に作り始めらたもののうまく完成させられず、放置されていた曲だったようです。それを最終的にメトロ・プロダクションズという制作チームのマーク・テイラーとブライアン・ローリングの手に渡ります。デモはユーロビート調だったそうです。

 彼らのタスクはシェールの昔のファンと新しいファンの両方にアピールするというむずかしいものでした。最初に作ったものはあまりにコアなダンスものだったので、破棄し再度作り直します。そして、テイラーはオートチューンで遊んでいるときにこのロボット・ボイスを使うことを思いついたようです。

 

 シェールは、自分のファンに多いゲイの人たちにウケるダンス・チューンを作りたいという目的があり、面白いなら自分の声を加工することにも反対ではなく、かえって前向きだったようです。

 

 曲を作り始めた時はまだ「オートチューン」はなかったわけですから、まるでそれが開発されるのを待っていたかのような曲だったんですね。

 

 彼女は女優としても「月の輝く夜に」や「バーレスク」など数々の映画に出ていますが、2018年には「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」に出演したことをきっかけにアバのカバー・アルバム「ダンシング・クイーン」をリリースし全米3位のヒットになっています。

  最後はそのアルバムから「フェルナンド」を。

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