まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「アム・アイ・ザ・セイム・ガール(Am I The Same Girl ?)」バーバラ・アクリン(1969)

 おはようございます。

 今日はバーバラ・アスキンの「アム・アイ・ザ・セイム・ガール」。”シカゴ・ソウル”と呼ばれる、1960年代から70年代にかけて人気のあった軽快で洗練されたR&Bの中でも特にポップな1曲です。


Barbara Acklin - Am I The Same Girl

Why don't you stop (stop)
And look me over
(Look me over)
Am I the same girl
You used to know

Why don't you stop (stop)
And think it over
(Think it over)
Am I the same girl
Whom you hurt so

I'm the one you want
And I'm the one you need
I'm the one you love
The one you used to meet

Around the corner every day
We would meet and slip away
But we were much too young
To love each other this way

Am I the same girl
Yes, I am, yes, I am
Am I the same girl
Yes, I am, yes, I am


Why don't you stop (stop)
And look me over
(Look me over)
Am I the same girl
You used to know

Why don't you stop (stop)
And think it over
(Think it over)
Am I the same girl
Whom you hurt so

I'm the one you hurt
And I'm the one you need
I'm the one who cried
I'm the one you used to meet

But you are pretending
You don't care
And the fire is still there
But we were no longer too young
To love each other this way

Am I the same girl
Yes, I am, yes, I am
Am I the same girl
Yes, I am, yes, I am

 

************************************************************

どうして立ち止まって
私を見てくれないの
(私を見て)
私はあなたの知っている
同じ女の子かな?

 

なぜ立ち止まって
考えてみないの?
(よく考えて)
あなたが傷つけたのと
おんなじ女の子なのよ

 

私はあなたが求める人
私はあなたが必要とする人
私はあなたが愛する人
あなたがよく会っていた人

 

毎日この辺りで
私たちは出会って別れたわ
でも私たちは若すぎたの
こんなふうに愛し合うには

 

私は同じ女の子?
ええ、そう、そうなの
私は同じ女の子?
ええ、そう、そうなの

 

でも、あなたは気にしないふりをしてる
火はまだそこにある
でも私たちはもうそんなに若すぎることはない
こんなふうに愛し合うには

 

私は同じ女の子?
ええ、そう、そうなの
私は同じ女の子?
ええ、そう、そうなの

                     (拙訳)

************************************************************

 バーバラ・アクリンは1966年にブラウンズウィック・レコードのシカゴ支社の受付嬢として働き始めたそうです。彼女はもともとバック・シンガーの仕事をやっていてインディーズからシングルも出していました。


Barbara Acklin - I'm Not Mad Anymore

 ブラウンズウィックでのデビューを夢見ていた彼女は、当時レーベル再建を託されてやってきたプロデューサー、カール・デイヴィスに自身のデモを渡します。 

 そのデモに入っていた「Whisper(Gettin'Louder)」という曲を気に入ったカールは、当時のブラウンズウィックの看板シンガーだったジャッキー・ウィルソンに歌わせ、これが全米最高11位の大ヒットになりました。


Whispers (Gettin' Louder)- Jackie Wilson

 このヒットはカールにとってブラウンズウィックでの初手柄になります。当然カールは気を良くしたでしょうし、被災微差のヒットになったジャッキーの後押しもあったでしょう、彼女は見事レコード契約を勝ち取ります。当初は結果が出ませんでしたが、そして四枚目のシングル「Love Makes a Woman」が見事全米15位のヒットになります。


Barbara Acklin - Love makes a Woman

 そして彼女の7枚目のシングルがこの「Am I The Same Girl」です。

 

 プロデュースはカール・デイヴィスでアレンジはソニー・サンダース。ソニー

ヒット作りのためにカールがブラウンズウィックに連れて来た人でした。シカゴ・ソウルの中心人物としてカール・デイヴィスは知られていますが、実際にその多くのサウンドを手がけたのがソニーだったということは忘れてはいけません。フィル・スペクターにとってのジャック・ニッチェのような存在だったのではないかと僕は推測します。

 

 曲を書いたのはソニーユージン・レコードユージン・レコードは日本のソウル・ファンにはおなじみ、シカゴを代表するコーラス・グループ”シャイ・ライツ”の中心メンバーです。

 ちなみに「Oh Girl」と並ぶシャイ・ライツの大ヒット曲「Have You Seen Her」(1971年全米3位)はユージンとバーバラの共作です。ちなみにかつてユージンとバーバラは結婚していたという噂が信じられていたようですが、それはデマだったようです。


The Chi-lites "Have you seen her"

  さて、話を戻してます。「アム・アイ・ザ・セイム・ガール」を録音した後、カールは、完パケ音源からボーカルを抜き代わりにピアノを入れたものを作り、バーバラより先に発売します。

 グループはヤング・ホルト・アンリミテッド、タイトルは「ソウルフル・ストラット」でした。


Soulful Strut/Young-Holt Unlimited

 エルディー・ヤング(ベース)とアイザック・ホルト(ドラムス)の苗字からグループ名がつけられていて、ピアニストが加わって”ヤング・ホルト・トリオ”としてデビューしますが、ピアニストが交代したのをきっかけに”ヤング・ホルト・アンリミテッド”という名前に変えた第一弾が「ソウルフル・ストラット」でした。

 しかし、このオケはバーバラように作ったものですから、彼らは演奏していないと言われています。

    なぜ急遽インスト・ヴァージョンを先にリリースしたのでしょう?

 これは僕の推測ですが、しかし、かなり確信を持った推測として言えば、この曲のレコーディングした1968年、まさにこの曲が大ヒットしていたからだと思います。


Archie Bell & The Drells - Tighten up (1968)

 「このオケ”Tighten Up”っぽく、ないっすか?」

 「そうだな、インストにしたら売れるかもな」

 などという会話があったかどうかはわかりませんが、

 カールの狙い通り(以上?)、このヴァージョンは全米3位の大ヒットになります。

ヒットを受けて急いでアルバムを出す必要があったのでしょう。彼らのアルバムには

 バーバラの持ち歌のバックトラックが前述の「Love Makes Woman」などもう3曲使われているそうです。

 ともかく、しわ寄せをモロに受けたのが、バーバラです。「アム・アイ・ザ・セイム・ガール」は全米最高79位という小ヒットで終わってしまったのです。

 

 しかし、半年後にダスティ・スプリングフィールドがこの曲をカバーし、イギリスで

最高43位まであがっています。


Dusty Springfield - Am I The Same Girl 1969

 この年の初めに彼女は、現在では名盤の誉れの高い「ダスティ・イン・メンフィス」というアルバムをリリースしていますが、当時はイギリスでチャートに入らないという散々たる状況でしたので、43位でも喜ぶべきことでした。

 

 というわけで、この曲はずっと「ソウルフル・ストラット」のほうで人々に記憶されていたわけです。

 その”忘れ去られていた”「アム・アイ・ザ・セイム・ガール」に再びスポットが当たったのは、1992年にスウィングアウト・シスターがカバーしたのがきっかけでした。

イギリスで21位アメリカで45位、その他多くの国でヒットしました。


Swing Out Sister - Am I The Same Girl

 ボーカルのコリーンはダスティ・スプリングフィールドの影響を公言していますし、

この当時のイギリスのクラブシーンで、バーバラなどの洗練された”シカゴ・ソウル”もよくプレイされていたことがカバーにつながったのかもしれないと推測します。

 ともかく、彼女たちのオリジナル曲かと錯覚してしまうほど、カバーの域を超えたヴァージョンだと僕は思います。

 

 

セヴン・デイズ・オブ・ナイト

セヴン・デイズ・オブ・ナイト

 
ソウルフル・ストラット

ソウルフル・ストラット

 
Am I Same Girl

Am I Same Girl