まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「オルトゥゲザー・アローン(Altogether Alone)」ハース・マルティネス(1975)

 おはようございます。

 今日はアメリカでは全く無名の存在でありながら、90年代に日本で再評価され、ついにはキムタクのTVドラマ「ギフト」でも使われたこの曲。ハース・マルティネスの「オルトゥゲザー・アローン」です。 


Hirth Martinez -Altogether Alone

 

It came
It came like a thief in the night
I happened to be looking
Out through the window
I swear it was brighter than hell
Man, I saw a light through the window
It was hovering above
The house next door


I froze
I froze like a stone
All alone
I swear my hair stood up
And I said a prayer to end all prayers
I reached for the phone
But the phone was dead
Next the glowing ball turned red
And a voice inside my head


Said, "Boss, go on back to bed
From now on
You are gonna be able to see
From now on you are gonna be
All at once with peace and harmony
In rhyme and reason altogether alone"


It came
It came like a song
In the day, the way I play
When I get off on a feeling
Of wheeling and soaring through space
Like the word what flows
Like the lover as it explodes
Kicking off the start of time

 

I froze
I froze like a stone
All alone
I swear my hair stood up
And I said a prayer to end all prayers
I reached for the phone
But the phone was dead
Next the glowing ball turned red
And a voice inside my head


Said, "Fred, go on back to bed
From now on
You are gonna be able to see
From now on you are gonna be
All at once with peace and harmony
In rhyme and reason altogether alone
Rhyme and reason altogether alone
Rhyme and reason altogether alone"

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   "そいつはやってきた  泥棒みたいにその夜こっそりとね

 たまたま窓の外を見たら、この世のものとは思えないほど輝いてたんだよ

 窓から光が見えた

 そいつは隣の家の上にじっと浮かんでたんだ

 

 それで僕は固まっちゃった まるで石みたいにね 一人っきりで

 髪の毛は逆立ったよ

 そして思い出せる限りお祈りをつぶやいて

 電話に手を伸ばしたんだけど 通じなくなっていた

   それから、その輝く球体が赤に変わると

 頭の中で何やら声が聴こえたんだ

 

 ”ボス、ベッドに戻るんだ これからは、わかるようになるさ

 そして、これからは、

 君は同時に平和と調和と

    完全にひとつになれるだろう”

 

 そいつはやってきた 歌みたいな調子で その日 

 遊ぶみたいに 

 宇宙の中を旋回したり急上昇してるような

 僕がすごくいい気分になっているとき

 流れる言葉のように

 感情が爆発した恋人たちのように

 時の始まりの口火を切った

 

 

 それで僕は固まっちゃった まるで石みたいにね 一人っきりで

 髪の毛は逆立ったよ

 そして思い出せる限りお祈りをつぶやいて

 電話に手を伸ばしたんだけど 通じなくなっていた

   それから、その輝く球体が赤に変わると

 頭の中で何やら声が聴こえたんだ

 

 ”フレッド、ベッドに戻るんだ これからは、わかるようになるさ

 そして、これからは、

 君は同時に平和とハーモニーと

    完全にひとつになれるだろう

 完全にひとつになるだろう”  ”

                          (拙訳)

 

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 この曲を再発見した日本人のセンスは誇れるものだと僕は思います。でも、アメリカではウケずに日本人が好きになったのもわかる気がします。

   というのも、こんなに優しい情感のある曲調からは想像つかないのですが、歌の内容が”未確認飛行物体との遭遇”を歌っているからです。

 英語圏の人たちは、なんか変わった歌だと思ったんじゃないでしょうか。日本人の多くは、歌詞が聴き取れないので、自分の好きなムードで曲を自由に楽しめるんですよね。

 

  歌詞がラブ・ソングだったら、アメリカのヒットチャートにも載ったんじゃないの?とか思わなくもないですが、こういうひょうひょうとして不思議な感じが彼の持ち味でもあるわけですから、きっとこれでいいんでしょうね。

 

   この曲の入ったアルバムのタイトルも「ハース・フロム・アース(Hirth From Earth)」と、韻を踏みながら”地球から来たハース”とSF風になっています。

 

  さて、ハース・マルティネスのプロフィールを少し。

 1945年生まれで、この曲が入ったアルバムが1975年ですから、30歳でデビューという遅咲きの人でした。ただし、十代からすでにプロのミュージシャンとして活動し、自分のレーベルも持ち、曲もかなりの数を書きためていたようです。

 

 そして、彼が出入りしていたヴィンテージ・ギター・ショップのオーナー、ノーマン・ハリスを通してデモがボブ・ディランの手に渡ります。そして興味を持ったディランが彼をザ・バンドのロビー・ロバートソンに引きあわせ、ロビーのプロデュースでアルバムを制作することになるのです。

 

 ポップでメロウな曲は「オルトゥゲザー・アローン」くらいですが、他の曲も彼の音楽性の幅広さ、豊かさを示すもので、それを素晴らしいミュージシャンたちが最高の演奏を聴かせてくれます。古いアメリカンミュージックに傾倒していた同じ時代の細野晴臣大瀧詠一に通じるものを僕は感じました。

 

 しかし、残念ながらアルバムは売れず、77年にはジョン・サイモンのプロデュースでもう一枚アルバム「Big Bright Street」を作りますが、それも売れず、彼は一線から退いてしまいます。

 「Big Bright Street」

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 それから年月が流れ、1990年代に入ると日本で彼は再評価され始めます。そして、ついに、1998年に約20年ぶりのアルバム「ミスター・ドリームズヴィル ~夢の旅人」を日本でリリースすることになります。

 このアルバムの原題は「I'm Not Like I Was Before」、以前のオレとは違うぜ、ということで、確かに以前より歌唱スタイルも演奏もぐっと耳触りの良いスタイルになり、より日本人好みな仕上がりでした。でも本質的には全然彼らしいものだったと思います。

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 2000年には日本でのコンサートの模様をおさめたライヴ盤も作られています。そして、2010年にも来日公演を行いましたが、2015年に残念ながら彼は亡くなってしまいました。

    

 最後に、彼のプロフィールを見ていて目に留まったことがひとつありました。

 彼が初めて書いた曲は「Little Stranger」という、宇宙から来た小さな男の歌だったそうです。

 元々、SFが好きだったんですね。やはり、「オルトゥゲザー・アローン」の歌詞は彼らしさが一番出ていたものだったのでしょう。

 

   最後に、日本のライブ盤に収録されている「オールトゥゲザー・アローン」もどうぞ。


Hirth Martinez - Altogether Alone (Live)