まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ハッピー・ハート(Happy Heart)」アンディ・ウィリアムス(1969)

 おはようございます。

 新年の”Happy"シリーズ第2弾はアンディ・ウィリアムスの「ハッピー・ハート」。1969年に全米22位まであがった曲です。 


Andy Williams-Happy Heart

 ”あのサウンドが、僕のまわりでいつもついてくるのさ

  僕のそばに近づけば、君にも聞こえるだろう

  これ以外にないってほどの愛を見つけた時に

 

 それは恋人たちのためのサウンド

 ここで気づくはずさ 間違いなく彼らの愛のためにあることを

  君が聞いているのは 僕の幸せなハート

  大きな声で、はっきりと、歌っている

  それは君がそばにいるせいなんだ、愛する人

 

  僕の幸せなハートを奪って

  夜も昼も君を愛させておくれ

     君の腕の中にずっといたい、ああ愛する人

 

 もっともっと感じている

 今まで感じたことがないみたいに

 君は僕の人生を変えてしまった

 そう完全なまでに

 

 今音楽が僕の魂に満ちて

 僕はもう抑えがきかないのさ

 僕は半分じゃなくて、今は完全なんだ

 君の愛のおかげで

 

 それは恋人たちのためのサウンド

 ここで気づくはずさ 間違いなく彼らの愛のためにあることを

  君が聞いているのは 僕の幸せなハート

  大きな声で、はっきりと、歌っている

  それは君がそばにいるせいなんだ、愛する人

                    (拙訳)

 

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There's a certain sound
Always follows me around
When you're close to me
You will hear it

It's the sound of lovers
Here when they discover
There could be no other for their love

It's my happy heart you hear
Singing loud and singing clear
And it's all because you're near
Me my love
Take my happy heart away
Let me love you night and day
In your arms I want to stay, oh my love


Feeling more and more
Like I've never felt before
You have changed my life
So completely

Music fills my soul now
I've lost all control now
I'm not half, I'm whole now
With your love

It's my happy heart you hear
Singing loud and singing clear
And it's all because you near
Me my love
Take my happy heart away
Let me love you night and day
In your arms I want to stay, oh my love

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 実はこの曲は競作で、同じタイミングでペトゥラ・クラークが録音しています。

彼女は「恋のダウンタウン」という大ヒット曲で有名ですね。シュガー・ベイブの「ダウンタウン」を伊藤銀次書く時に最初にイメージした曲だと言われています。 


downtown ~ petula clark

 

popups.hatenablog.com

 ペトゥラのTVの特別番組「ポートレイト・オブ・ペトゥラ」にアンディがゲスト出演した際にこの「ハッピー・ハート」を歌ったのですが、ペトゥラ本人も歌ってリリースしようということになって、当時彼女が住んでいたパリからLAに飛んで、急いでレコーディングをし、すぐさま発売したというのが、競作になった経緯のようです。

 ペトゥラ側はこの曲はいける!と確信したのでしょう。


Petula Clark - Happy Heart

 アンディとペトゥラのヴァージョンはほぼ一緒の発売になり、全米チャートには同時にチャートインしました。結果、アンディが最高22位、ペトゥラが62位、イージー・リスニング・チャートではアンディが最高1位、ペトゥラが12位という結果でした。

 この曲を作曲したのはドイツ出身のジェームズ・ラスト。彼は自分の楽団を持ち、イージー・リスニングの作品を多数残した人です。

 日本で有名なのは、プロ野球ファンにおなじみのこの曲でしょう。


JAMES LAST BAND - VIBRATIONS - 1980

 

  歌詞を書いたのはジャッキー・レイ。主にテレビ番組の司会者として活躍した人のようで、作詞家としては「ハッピー・ハート」以外では、アメリカのカントリー歌手エディ・アーノルドに書いた「Please Don't Go」という曲が1968年に全英3位のヒットになっています。

 

  さて、競作となったこの曲には、全く同じ時期にもう一人別のアーティストが、インスト版をレコーディングしています。しかも、二人よりも一足早く全米イージー・リスニングチャートに入っているのです。

 この曲は男性ヴォーカル、女性ヴォーカル、インストの3種類がほぼ同時期に発売されてチャートを上っていったんですね。

 

 

 インスト版を手がけたのが、ニック・デカロ。昨日、このブログに登場しましたね。A&Mやワーナーなどで活躍し、日本の熱心なポップス・ファンからも人気の高い、名アレンジャー、プロデューサーです。

 彼が「ニック・デカロ&オーケストラ」(1969年)の名義でこの曲のインストをリリースしました。実は、僕はこの曲は彼のヴァージョンで初めて知りました。もちろん、リアルタイムじゃなく。渋谷系が人気だった頃、このアルバムも再評価され人気だったんです。

 

 実はニック・デカロはこの時期にアンディ・ウィリアムスのアルバムのプロデューサー/アレンジャーとして3作続けて担当していました。しかし、アンディのこの「ハッピー・ハート」が入った「ハッピー・ハート」というアルバムからプロデュースを離れているんですよね。

 その経緯は全くわかりませんが、アンディのリリースに合わせて同じ曲のインストをリリース、しかもアンディと同じくアルバムの表題曲にしてぶつけてきたというのは、何かあまり友好的ではない訳がありそうな、、などと勘ぐりたくもなってきます。

 しかし、ニックのアルバムには、当時アンディの奥さんだったクロディーヌ・ロンジェからの推薦コメントがクレジットされていますので、友好な関係から生まれた競作、ひょっとしたらアンディへの”援護砲”だったのだと推理したほうがよさそうな気がします。

 

 ともかく、ニック・デカロのインスト版「ハッピー・ハート」、僕はすごく好きです。アルバムもいいですよね。彼の盟友、トミー・リピューマが共同プロデュース、A&Mサウンドを堪能できます。

 

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  作曲者のジェームズ・ラストも自身の楽団の演奏で、アンディたちから5ヶ月ほど遅れてこの曲をリリースしています。

 

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