まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ハッピー(Happy)」ファレル・ウィリアムス(2013)

 おはようございます。

 今日は多分2010年代世界最大のヒット曲。日本でもTVCMで使われてすっかりおなじみの曲ですが、あえてピックアップしてみます。ファレル・ウィリアムスの「ハッピー」です。


Pharrell Williams - Happy (Official Music Video)

It might seem crazy what I'm 'bout to say
Sunshine she's here, you can take a break
I'm a hot air balloon that could go to space
With the air, like I don't care, baby, by the way


(Because I'm happy)
Clap along if you feel like a room without a roof
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like happiness is the truth
(Because I'm happy)
Clap along if you know what happiness is to you
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like that's what you wanna do

Here come bad news, talking this and that (Yeah!)
Well, give me all you got, don't hold it back (Yeah!)
Well, I should probably warn ya, I'll be just fine (Yeah!)
No offense to you, don’t waste your time, here's why


(Because I'm happy)
Clap along if you feel like a room without a roof
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like happiness is the truth
(Because I'm happy)
Clap along if you know what happiness is to you
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like that's what you wanna do


Bring me down
Can't nothing bring me down
My level's too high to bring me down
Can't nothing bring me down, I said
Bring me down
Can't nothing bring me down
My level's too high to bring me down
Can't nothing bring me down, I said


(Because I'm happy)
Clap along if you feel like a room without a roof
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like happiness is the truth
(Because I'm happy)
Clap along if you know what happiness is to you
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like that's what you wanna do
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like a room without a roof
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like happiness is the truth
(Because I'm happy)
Clap along if you know what happiness is to you
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like that's what you wanna do


Bring me down
Can't nothing bring me down
My level's too high to bring me down
Can't nothing bring me down, I said...


(Because I'm happy)
Clap along if you feel like a room without a roof
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like happiness is the truth
(Because I'm happy)
Clap along if you know what happiness is to you
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like that's what you wanna do
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like a room without a roof
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like happiness is the truth
(Because I'm happy)
Clap along if you know what happiness is to you
(Because I'm happy)
Clap along if you feel like that's what you wanna do (Come on)

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僕が言おうとしていること、クレイジーかもしれない
サンシャイン、、彼女がいれば、あなたは休めるんだ
僕は宇宙にだって行ける熱気球さ
空気と一緒に、僕が気にしないように、ベイビー、ところで実はさ


(だって僕はハッピーだから)
屋根のない部屋のみたいな気分なら、一緒に手拍子を
(だって僕はハッピーだから)
幸せが本物だって感じたら、一緒に手を鳴らそう
(だって僕はハッピーだから)
あなたにとって幸せが何であるかを知っているのなら、一緒に手拍子を
(だって僕はハッピーだから)
もし、あなたがそうしたいと思っていたなら、一緒に手を鳴らそう

 

悪いニュースが届いた、ああだこうだ言っている
キミの思うこと全部伝えて、遠慮しないで
まあ、言っておくけど、僕は全然平気さ
気を悪くしないでほしい、時間を無駄にしないで、これが理由さ

 

(だって僕はハッピーだから)
屋根のない部屋のみたいな気分なら、一緒に手拍子を
(だって僕はハッピーだから)
幸せが本物だって感じたら、一緒に手を鳴らそう
(だって僕はハッピーだから)
あなたにとって幸せが何であるかを知っているのなら、一緒に手拍子を
(だって僕はハッピーだから)
もし、あなたがそうしたいと思っていたなら、一緒に手を鳴らそう

 

僕を落ち込ませてみろよ
どんなものも僕を落ちこませることはできない
僕のレベルは高すぎて、落ち込ませることなんてはできないんだ
どんなものも僕を落ちこませることはできない

 

(だって僕はハッピーだから)
屋根のない部屋のみたいな気分なら、一緒に手拍子を
(だって僕はハッピーだから)
幸せが本物だって感じたら、一緒に手を鳴らそう
(だって僕はハッピーだから)
あなたにとって幸せが何であるかを知っているのなら、一緒に手拍子を
(だって僕はハッピーだから)
もし、あなたがそうしたいと思っていたなら、一緒に手を鳴らそう、、、

                          

僕を落ち込ませてみろよ
どんなものも僕を落ちこませることはできない
僕のレベルは高すぎて、落ち込ませることなんてはできないんだ
どんなものも僕を落ちこませることはできない

 

(だって僕はハッピーだから)
屋根のない部屋のみたいな気分なら、一緒に手拍子を
(だって僕はハッピーだから)
幸せが本物だって感じたら、一緒に手を鳴らそう
(だって僕はハッピーだから)
あなたにとって幸せが何であるかを知っているのなら、一緒に手拍子を
(だって僕はハッピーだから)
もし、あなたがそうしたいと思っていたなら、一緒に手を鳴らそう、、、

                               (拙訳)

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「ハッピー」の楽譜はこちら

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 この曲がリリースされた2013年は、まさに”ファレルの年”でした。

 彼が参加したダフト・パンク「ゲット・ラッキー」、ロビン・シック「ブラード・ラインズ」もリリースされています。イギリスは3曲全てが100万枚を超えたそうで、これはビートルズ以来のことなんだそうです。

 

 彼は21世紀の音楽シーンを代表する音楽家ですが、彼の最大の特徴は”コラボレイター(共同制作者)”である、ということです。彼はこう語っています。

 ”僕の代表的な曲は全部、他の人と一緒に書いたか、他の人のために書いたものなんだ”

 レノンーマッカートニーに次ぐ数の全米NO.1ヒットを持つマックス・マーティンも

その多くの作品が他者との共作で作られています。

 21世紀の音楽シーンでは優れた”コラボレイター”であることは必須条件です。例えば、一人で創作も録音も全て完結できる天才アーティストがいても、10年20年という長いタームでは活躍できない、それが21世紀なんでだと思います。他者との交わりで絶えず学習し、自分をアップデートすることが、クリエイターにとっての”生命線”でもあるわけです。

 彼はこうも語っています。

 ”コラボレーションというのは大抵の場合、特訓のようなものだ。何か新しいことを学ぶんだ。いろんなアイテム、物事からアーティストとしての鍛錬まで学べる訓練なんだ"

  "コラボレーションはいつも僕のDNAの一部にもなっているんだ。はっきり正直に言えば、自分の力だけで仕上げた曲は全部、他のアーティストのために書いたものなんだ”

 この「Happy」も、もともとシーロ・グリーンのために書いた曲だったそうです。

 

シーロ・グリーンと言えば僕はこの曲が好きです「Forget You」


Cee Lo Green - Forget You

 

  「Happy」があれほどの超大ヒットになった今も、彼はシーロが歌った方がもっと良いものになったはずだと語っています。

 曲つくりのプロセスのついては、こう語っています。

 ”あるひとつのフィーリングをいつも追っているんだ。何かただ気持ちよくなるものを。そしてそこから、音楽は言葉のためのテンプレートをセットしてくれる。そのフィーリングが全てのクリエイティヴィティの指示を出す。ビートが最初にある。僕の仕事はただビートが語ることに耳を傾けることだ。情感としてそこに何を満たしていくか、ドラムはどうすべきか、メロディーはどう進むべきか、それは全部感性なんだ。”

 

 ちなみに、この「Happy」には元ネタがあると言われています。ヴェルヴェット・ハンマーの「Happy」という曲です。1977年に発売されたインディーズ・バンドのしかもシングルのB面ですから、かなりレアなものです。


Velvet Hammer - Happy

 曲そのものは似ていないですよね。ただ、彼はまずビートから作ると語ってます。このヴェルヴェット・ハンマーも曲全体の”ノリ”をこんな感じにしようという時にヒントにしたのだと思います。それは「ブラード・ラインズ」が「黒い夜」みたいなノリで行こう!と最初にイメージにしたのと一緒ですよね。

 元々がドラマーであるファレルは創作にあたって、まず既存の曲のグルーヴをざっくりとイメージする、ということがあるのかもしれないですね。

 それから、彼の「気持ちよくなるフィーリングを追いかける」ということも彼の個性になっています。「Happy」「Get Lucky」「ブラード・ラインズ」という超大ヒットには、気持ちよくなる、ポジティヴなノリという共通点があります。

 他者との”コラボ”を前提としているという、彼の当初から風通しのいい創作だからこそ生み出し得るものです。

 自分のために自分だけで作る音楽は、自分の内面、というものに囚われてしまいがちです。そこから、大衆とシンクロするような領域にまで踏み込んで表現できるのならいいですが、そういうクリエイターはほんのごくわずかです。

 ”ポップス”とはまず大衆と共振する音楽でなければいけない、それが大前提のはずです。

 「Happy」は、重く閉塞的な時代のムードを反映したような音楽、ダークにループするばかりの曲がたくさん流れる世の中では、圧倒的なレアでした。でも、大衆が内心求めているものを持っていました。多くの人たちは世の中の重苦しいムードにうんざりしていたんですね、きっと。音楽は時代を映すものではある、だからといっていつだって暗い歌に共感し続けたいわけじゃない、だからこそ、世界中の人々がこの曲に飛びついて、踊る映像をアップしたわけです。そして、この曲は見事に大衆と共振して、閉塞的な空気感に気持ちのいい”風穴”をあけた、僕はそう感じました。

 ついでに言うと、同時期に日本で同じような”風穴”として機能したのが、星野源の「恋」だと僕は捉えています。

 

 ポップスは今の時代の音楽の主流ではなくなってしまっていますが、今後も、時代の風穴、大衆の”ガスを抜くもの”としての大切な役割があると思っています。

 大衆の気分を少しだけでも上向きにさせるものとして。

 そして、それがないと、世の中はどんどん殺伐としていってしまうような気がします。

 

 

 

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