まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「太陽の暖かさ(The Warmth Of The Sun)」ザ・ビーチ・ボーイズ(1964)

 おはようございます。

 今日はビーチ・ボーイズの"The Warmth Of The Sun"。最初は「太陽あびて」という邦題がついてましたが、その後「太陽の暖かさ」という邦題がつきました。直訳なんですけど、僕はこの「太陽の暖かさ」という日本語のタイトルが昔からすごく好きなんです。

 

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What good is the dawn
That grows into day
The sunset at night
Or living this way


For I have the warmth of the sun (warmth of the sun)
Within me at night (within me at night)


The love of my life
She left me one day
I cried when she said
"I don't feel the same way"


Still I have the warmth of the sun (warmth of the sun)
Within me tonight (within me tonight)


I'll dream of her arms
And though they're not real
Just like she's still there
The way that I feel


My love's like the warmth of the sun (warmth of the sun)
It won't ever die (it won't ever die)

 

 ”朝に移ってゆく夜明けって なんていいんだろう

   日が沈んでも その感覚は生きている

 

  だって、夜になっても

  僕の中に太陽の暖かさがあるから

 

     僕の人生で最愛の人

  彼女はある日僕を残して去っていった

 ”あなたと同じようには感じないの”と言われた時

   僕は泣いた

     だけどまだ僕の中には太陽の暖かさが残っている

  今夜も
    

     彼女の腕に包まれることを夢に見るだろう

  たとえそれが現実じゃなくても
  まるで彼女がまだそこにいるように感じられるように

 僕の愛は太陽の暖かさのようだ

 決して死ぬことはないだろう         ”

 

                                                                          (拙訳)

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 愛する人への気持ちや感覚は、その人がいなくなったあとも、太陽の暖かさのように

自分の体に残っている、という歌です。

 

 この曲を作るきっかけになったのはジョン・F・ケネディの暗殺だったと言われています。

    この曲を作曲したブライアン・ウィルソンケネディのニュースを見たあと、ビーチ・ボーイズのメンバーで共作者のマイク・ラヴに電話をして、何か曲を作ろうと話をしたと言っていて、マイク・ラヴのほうはケネディの事件が起こる数時間前から曲を書き始めたと証言していますが、この事件が、この曲に大きな影響を与えたことは間違いないようです。

 

 ブライアンが作ったメロディが悲しいトーンのものだったので、マイクはそこに希望を残したかったと語っています。

 

 僕は、鬱々した気持ちになっているときに、この曲を思い出して聴くことが多いのですが、もともとそうした状況の中で作られた歌だったんですね。

 

 もうなんか全部やんなっちゃったなあ〜みたいな気持ちになってしまった時、ふと外に出て陽の光を浴びてその温度を感じた時、決して気持ちが一気に前向きになるとまではいかないですが、自分だって草花となんら変わらない存在で、ただこうやって太陽の暖かさに生かされてるんだなあ、なんて僕は思ってしまうわけです。

 

 そういうフィジカルな意味でも 、この歌のような”大切な人の記憶”の比喩としても、

人にとって”太陽の暖かさ”ってかなり究極の<なくてはならないもの>なのかもしれません。

 

  「太陽の暖かさ」は1964年リリースのアルバム『Shut Down Volume 2』に収録され、シングル「Dance, Dance, Dance」のB面にもなっています。

 そして時間をかけてじわじわとこの曲の評価は高まっていくのです。

 

   1995年にブライアン・ウィルソン本人がアルバム「I Just Wasn't Made for These Times」でセルフ・カバーしています。

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 2002年にはこの曲が大好きだと公言するエリック・クラプトンがコンサートでブライアン本人と共演します。

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 そして2006年にはマシュー・スウィートと元バングルスのスザンナ・ホフス、2010年にはイギリスの女性シンガー、Rumorなど、カバー・ヴァージョンが作られ、2007年リリースのビーチボーイズベスト・アルバムには「The Warmth of The Sun」というタイトルが付けられるなど、この曲はビーチ・ボーイズの”定番曲”の座をしっかりつかむことになったのです。

 

 ブライアン・ウィルソンの心に深いダメージを残すほどの確執があったことが知られる、彼の父、マリー・ウィルソンはイージー・リスニングのアルバム「The Many Moods of Murry Wilson 」を1967年にリリースしていますが、その中に唯一収録されたブライアンの曲が「太陽の暖かさ」でした。

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 最後は2021年リリースのブライアン・ウィルソンが自身の代表作をピアノのインスト・ヴァージョンとして収録した「At My Piano」に収録されたものを。

 アルバム全体としては、個人的には聴いていてちょっと寂しい気持ちになってしまうのですが、「太陽の暖かさ」は、この曲の美しさをあらためて気づかせてくれたように感じました。

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WARMTH OF THE SUN

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I Just Wasn't Made for These Times

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